4-10
拓斗は銀行の知り合いに頼んで、慰謝料の100万円を銀行から借りることができたのだった。
その日のうちに、銀行から大和の指定口座へ振り込んだ。
伝票を書き、印鑑を押すだけで、100万という大金が消えてしまった。
現金を見ていないため実感はわかないが、通帳にはきっちり・・・マイナス1,000,000円・・・と記帳されていた。
これからこの100万円を返済していかなけばならない。
その日の夜・・・・・。
慰謝料を振り込んだことを、大和に報告するため電話をかけた。
「はい」
大和はすぐに電話にでた。
「あの・・・西岡ですけど・・・慰謝料を振り込みましたので」
香奈と宇宙が出ていったままなので、家には拓斗一人だった。
静かな部屋で拓斗の小さな声だけが響いている。
「これで終わりだと思うなよ!こんなはした金払いやがって!!」
「・・・えっ・・・・・ !?」
これで終わりだと思っていた拓斗は、大和の言葉に唖然とした。
『この人はまだ何か請求してくるつもり・・・!?』
『はした金って・・・俺にとったら大金なのに・・・』
「また電話するからなっ!!」
電話は切れた。
「・・・・・・・・・・・・」
拓斗は方針状態だった。
『また電話するって・・・なんのために電話してくるんだ・・・こんなのってありかよ・・・俺が払った慰謝料はなんだったんだ・・・』
拓斗はその日の夜・・・
むなしさと腹立たしさ、いろんな思いが頭の中をぐるぐる回り、一睡もできなかった。
次の日、仕事をしていても昨日のことが頭から離れない。
営業先から出てきた拓斗は、ぼーっとしながら歩いていた。
道の向こう側に営業車を停めていた拓斗は、辺りを気にすることなく信号のない横断歩道を渡っていた。
・・・そのときだった。
横断歩道の手前に停車中のバスの横から、車が一台ふくらんできたのだった。
「・・・あっ・・・・・!!」
拓斗はその場に倒れこんだ。
車は激しいブレーキ音とともに停車した。
「危ないだろうが!!どこ見て歩いてるんだ!!気を付けろ!!」
運転席の窓から、30歳前後だろうか男が叫んできた。
「すいません・・・」
男はその後何も言わず、すごい勢いで走り去ってしまったのだ。
「きみ、大丈夫か!?」
一部始終を見ていたバスの運転手が、拓斗の方へ走ってきた。
「はい、なんとか・・・」
拓斗は立とうとしたが、足に激痛がはしり立つことができない。
「無理するな、車に当たってるんだぞ」
その車はそれほどスピードがでていなかったが間違いなく拓斗に衝突していた。
拓斗は衝撃で倒れこんでいたのだった。
「私の不注意なので・・・」
「きみもぼーっとしていたのかもしれないが、車のほうが悪いだろ。今救急車呼んでやるからな」
拓斗には何がおきたのかよくわからなかった。
気づいたときには、車の男が怒鳴っていた。
「いっ・・・」
拓斗は必死に動こうとしたが、痛みで動けない。
バスの運転手は救急車を呼んでいた。
「今呼んだからな、もう少し我慢しろよ」
「ありがとうございます。まったく動けないです。面目ない・・・」
運転手はバスの客を待たせているにもかかわらず、救急車がくるまで待っていてくれた。
10分ほどで救急車は到着した。
「早く元気になれよ。無事で何よりだ」
運転手は笑顔で拓斗を見送ってくれた。
「ありがとうございました」
拓斗は救急車のドアが閉まるまで、何度も何度も頭をさげたのだった。




