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愛は病院に運ばれてから二日後に退院した。
「おかえり、愛」
母の昌子が、帰ってきた愛に明るい笑顔で迎えてくれた。
「ただいま、お母さん。ほんと心配させてごめんね」
「いいの、いいの。気にしなくていいよ。さっ、今日は愛の好きなものばっかり作ったからね、いっぱい食べてね。さぁー桜も向日葵もおいで」
昌子は子供達を連れて先に家の中へ入っていった。
今日の夕御飯は、義雄も昌子もひときわ明るく振る舞ってくれた。
愛には二人の明るさが反対に辛かった。
若いときからやんちゃ娘だった愛は、親にかなりの迷惑をかけてきた。
自分に子供ができて初めて親のありがたみが分かったのだった。
それからは親孝行しようと決めていたが、なかなかしてやることもできないまま今に至っている。
それなのに…この歳になって、また親に迷惑をかけてしまった。
義雄も昌子もこんなバカ娘に、山ほど言いたいことがあるはずなのに、こんなに何も言わずに笑っていてくれている。
『もうお父さんにもお母さんにも迷惑はかけられない。ほんとごめんね…こんな娘で…もっと強くならないとだめだよね』
その日の夜…
一人でソファーに座りながら、物思いにふけていると…珍しく大和から電話がかかってきた。
「久しぶりだな。もう退院したのか?」
「はい。おかげさまで今日無事に退院しましたので。ご迷惑をおかけしました」
愛はわざと他人行儀で喋った。
「そうか…」
病院に顔も出さなかった大和であったが、今更何のつもりでかけてきたのか愛にはわからなかった。
「ところであいつの嫁から電話あったか?」
「ないけど、どうして?」
「お前から慰謝料取るとか言ってたから、そのうちかかってくると思うけど、絶対払うなよ。分かったか!」
どうしてこいつは上から目線なのだろう。
こいつのそういうところも愛が嫌いなひとつだった。大和は自分が一番偉いと思っているプライドの高い男である。
「そうなんだ。別に払う気なんてないし」
「あいつはしつこい奴だからな。気を付けろよ。あっ、それからお前の彼氏からは100万もらうことにしたからな」
大和は愛が喋る前に電話を切った。
「100万か…そんな大金払えるんだろうか…拓斗大丈夫かな…嫁に責められてるんだろうな」




