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「愛…愛…」
愛はゆっくり目を開けた。
「ここはどこ…」
「良かった…」
昌子が隣で手を繋ぎながら泣いていた。
愛は風呂で手首を切ったことを思い出した。そしてここが病院だということもすぐに分かった。
「ごめんね…私…」
「もう何も言わなくていいから…ほんと良かった」
病室の外でいた義雄と桜、向日葵も中に入ってきた。
桜も向日葵も目が真っ赤である。
「ママー」
向日葵が愛に駆け寄り大声で泣き出した。子供ながらに愛がどういう状況かわかっていたのだろう。
桜も何も言わなかったが、涙を流しながら愛を見ていた。
「桜もおいで…」
愛はそんな桜に笑顔で手を差し伸べてあげた。
桜はそれまで必死に我慢していたのだろう感情を一気にはきだし、ぐちゃぐちゃな顔になり大声で泣き出し、愛の胸へ飛びついてきたのだった。
「二人ともごめんね…」
愛は泣きじゃくっている二人をめいいっぱい抱きしめてあげた。
あのときは何も考えられなかった。自分がいなくなったら悲しむ人間がこんなにもいるということを。
「愛、もう一人で悩んだりするな。お前には桜と向日葵がいるんだ。この子達を悲しませることはするな。俺もお母さんもいるんだからな」
義雄が涙をこらえているんだろう…口元が震えている。
「うん…ほんとごめん…もうこんなことしないから…」
「母さん、しばらく三人にしてあげよう」
「そうだね。愛、外でいるから何あったら呼んでね」
「愛ちゃん…大丈夫?もう痛くない?桜ね…ほんと心配したんだよ」
桜は必死に涙を拭っている。
「もう大丈夫だからね…桜ごめんね、心配かけて」
「うん…桜ね…愛ちゃん…いなくなったら…どうしよう…って…」
「ママは桜と向日葵残してどこへも行かないから。ずっと一緒だからね」
ほんとにこの子達を残して死んじゃおうなんて思った自分が馬鹿だった。
「ママ、ヒマワリもいっぱいいっぱい心配したんだよ…ママ全然動かなかったから…」
「向日葵もありがとうね。よしよし」
桜も向日葵も愛の身体から離れようとしなかった。
『もう私にはこの子達しかいないんだ…がんばろ…』
あとから聞いた話だが、あの日の夜、桜が急に起きてきて愛を探していたらしい。そして昌子が愛を呼びにきたのだった。真っ赤に染まった湯槽を見た昌子は腰が抜けるほどビックリしたらしいが、桜には見られなくてよかった。
切り傷が浅かったことと、発見が早かったことで愛は助かったのだ。もし、桜が起きてこなければ愛は助かっていなかったかもしれない。




