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一方拓斗はというと…
あの日、香奈に連行されるように車に乗り、そのまま香奈の実家に向かった。
やはり、香奈は一人で出ていったあと、実家まで歩いたのだった。
香奈の親には拓斗のしたことを全て話し、今に至っている。
「早く降りなよ。もうみんな知っているんだから」
香奈は宇宙を連れて先に家の中に入っていった。
ゆっくりと車から降りた拓斗は、新たな修羅場の入口へ足を踏み入れた。
中に入ると、香奈と母親の大谷初子の話し声が聞こえている。
拓斗は覚悟を決め、恐る恐る中に入っていった。
「拓斗君、これはどういうことなの!?香奈から話は聞いたけど、いったいどうなってるの!?」
初子はすごい剣幕である。
拓斗は初子を見るなり、その場に土下座した。
「すいませんでした!!」
「すいませんでしたじゃないでしょ!!ずっと香奈のこと裏切ってたんでしょ!!」
「はい…すいません」
「それで、ちゃんと終わらせてきたんでしょうね」
「はい…もう二度としませんので」
拓斗は土下座をしたまま下を向いているが、怖くて初子の目を見れなかった。
「当たり前でしょ。宇宙もいるんだから、そのぐらいちゃんと考えなよ。ほんと何を考えてるのか。またよりによって大和君の嫁だなんて…!なんてことしてくれたの!田舎なんだからこんな話はすぐに広まるんだからね。ほんとどうしてくれるの。恥ずかしくて外も歩けないじゃないの!」
初子も大和のことは子供のときからよく知っていた。
「もうすぐお父さんも帰ってくるからちゃんと謝ってよ」
香奈はすでに父親の康彦にも話をしてあった。今は出掛けているみたいだがそのうちに帰ってくるだろう。
「そうだお母さん。お兄ちゃんの友達に弁護士さんいなかったっけ?」
「雅弘くんのこと?弁護士じゃなくて司法書士さんだよ」
「弁護士じゃないのか。司法書士さんって法律に詳しいのかなー?」
「どうだろうね。一度雄介から聞いてもらうけど。慰謝料の話?」
雄介は香奈の兄である。
雄介はこの家に親と同居しているのである。
「うん?お願い。この状況でどのくらいの慰謝料がだとうなのか調べてほしくてね」
拓斗は床に正座をしたまま、二人の会話を聞いているだけだった。
宇宙は、一人で無邪気にテレビを見ていた。
しばらく二人の会話が続いた。
拓斗は、悪いことをして怒られた子供のように、正座をしたままじっとしていた。
「ただいま」
父親の康彦が帰ってきた。
「で、あれからどうなった?」
康彦は拓斗の顔をちらっと見たが、先に香奈ら話を聞くことにした。
「1000万だと!何を馬鹿なことを言ってるんだ!」
やはり一番驚くのは誰でも一緒のようだ。
全てを聞いた康彦は拓斗のほうへ振り返った。
「拓斗君、こっちへきなさい。二人で話をしようか」
康彦はいつも冷静沈着な人である。いまだかつて怒鳴っているところなんて見たことがない。
康彦は大和を連れ、応接間に入っていった。
「拓斗君、もう終わったことを俺は言うつもりはないよ。君がしたことは決して許されることじゃ
ない。でも同じ男としてわからないこともない」
怒鳴られると思っていた拓斗であったため、康彦の行動に少し驚いた。
「は、はい…」
「でもうちの香奈と結婚した以上、離婚してもらうのは困る。ましてや宇宙もいるんだ。夫婦なんだから色々問題はあるだろうけど、そこは我慢していかないとな」
「あ、…はい」
「だから約束してくれ。これ以上香奈と宇宙を悲しませないでくれ。香奈の親としてそれだけが望みだ。頼んだぞ拓斗君」
康彦はいい終えると、そっと立ち上がり応接間を後にしたのだった。
その後、家に帰った拓斗は、自分の親にも全てを話した。
当たり前であるが、父親も母親も頭を抱え込み、拓斗はこっぴどく怒られたのである。
しかしどれだけ怒られても、やはり自分の親であるため、心にはグサッとこなかったのである。
拓斗が一番恐れていたのは、香奈と二人きりになることであった。
その日の夜、初めてその時がやってきた。
地獄の始まりが…




