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拓斗は仕方なくドアを開けた。
「どういうことかちゃんと説明して!!」
「いや…あの…いや…今電話中なんだけど…」
拓斗は香奈の目を見ようとしたが、鬼のような恐ろしい顔にすぐ目をそらした。
「電話の相手は女の旦那か?」
「…は…はい」
香奈は拓斗が握りしめている携帯を奪い取った。
「もしもし!?おたく誰ですか!?」
「誰ですかってお前こそ誰なんだよ!!」
「拓斗の嫁ですけど」
「なんで嫁がでてくんだよ!!旦那だせよ」
「すいませんがまた後で電話しますので」
香奈はそう言って電話を切った。
「さぁ〜ちゃんと説明してもらうよ」
香奈は携帯を握りしめたまま、拓斗を睨んでいる。
「は…はい」
拓斗は完全に沈んでいる。
「ちょっと待ってて!!宇宙をお母さんに預けてくるから。逃げるなよ」
香奈はそう言い残し、宇宙を呼んで玄関からでていった。
拓斗の家は、拓斗の実家の敷地に建っている。田舎の家なので土地は広い。長男だった拓斗は家をでるわけにもいかない。しかし親との同居を拒んだ香奈だった。そんな訳で実家の隣に一軒家を建てたのである。
拓斗はリビングに戻り、ソファーでぐったりしていた。携帯は香奈が持ったままである。
そうしているうちに香奈が帰ってきた。
「さぁ〜ちゃんと説明してもらおうか!?」
香奈は立ったまま拓斗を睨んでいる。
「…」
拓斗は下を向いたまま黙っている。
「黙るな!!最近帰りが遅いからおかしいと思ったよ!!その愛とかいう女と不倫してたんでしょ!!」
「はい…」
「はいではわかないでしょ!!もうばれてるんだからちゃんと説明してよ!!」
「説明してって言われても…不倫してた…それだけじゃん」
「それだけって…じゃ〜認めるんだね!…はぁ〜…」
香奈は大きなため息をついた。
「で、どうするの?私は拓斗がしたこと絶対許さないから!!…もう別れてよ。宇宙と出ていくから」
「ちょっと待てって…宇宙とは離れたくないんだよ…」
「今さら何言ってるの?馬鹿じゃないの??宇宙と離れたくない?じゃ〜不倫なんかするなよ!!」
「すまない…」
拓斗は謝ることしかできなかった。
宇宙がいるから今まで嫌な家に帰ってこれた。
嫁はどうでもいいが、宇宙と離れるのは考えられない。
「謝って済む問題か!!で、その愛とかいう女は今どこにいるの!?今すぐここに連れてきて!今すぐに!!」
「そんなこと言われても…向こうも今すぐこいって言ってるし…」
「そりゃそういうだろうな…向こうの旦那も私と同じ気持ちなんだろうし…まぁ〜いいわ」
香奈は拓斗の携帯を勝手に触り、どこかに電話している。
『まさか…』
「もしもし、奥さんに代わってくれますか?」
やっぱり愛の携帯にかけていた。
「かけてきたと思ったら嫁に代われだと!!なんで代わらないといけないんだよ!ふざけるな!!」
「被害者どおしで話してても仕方ないでしょ!だから代わってって言ってるの!それぐらいわかるでしょ!」
「今は俺がお前の旦那と話してるんだろ!!それが終わってからだろ!!だから早く代われ!!」
香奈は向こうの迫力に負けたのか、携帯を拓斗に渡してきた。
拓斗は恐々携帯を耳にあてた。
電話の向こうでは「もしもし」を連発している。
「もしもし…代わりましたけど…」
「やっとでたか!!で、お前どう責任とるつもりだ!?」
「責任とれと言われても…どうしたら…」
「どうしたら??そんなこと自分で考えろよ!!」
「は…はい……」
責任をとれと言われてもほんとどうしたらいいのかわからない。
「はっきりしろよ!!お前自分のやったこと分かってるんだろ!!」
「はい…」
「もういいわ!!とりあえず家こい!!どうせ家知ってるんだろ!?それまでに考えろ!分かったか!?」
「あの…家わからないんですけど…」
「嘘言うなよ!!お前家の近くまで来てるだろ!?」
拓斗は家の近くまでは愛に会いに行っていたが、家はほんとに知らなかった。
大和は拓斗が家の近くで愛と会っていたことも調べていたのだろうか。
「まぁ〜いいわ。とにかくよく考えてすぐにこい!!分かったか!?」
「はい…」
拓斗は返事をするしかなかった。
「いつまでも待たせるなよ!!」
電話はすぐに切れた。
香奈が隣でずっと仁王立ちで拓斗を見ている。
「どうなったの!?」
香奈が電話が終わったのを見て、即座に聞いてきた。
「家にこいって…」
拓斗は小さな声で答えた。
「へぇ〜、それで行くの?」
「このままほっとけないだろ」
「それでどうするつもりなの?女をとるの?それとも宇宙をとるの?」
「それは…」
拓斗は今、愛がどうしているのか心配していた。電話の感じでは旦那は相当怒っていた。当然のことではあるが、責められているのだろう。
「まさか、どっちをとるか決められないとか言うんじゃないでしょうね」
「…」
今は何も考えられない拓斗だった。
「向こうに行ってなんて言うつもりなの!?行って決められなかったら話にならないでしょ」
「こんな状況でどうしろっていうの。もう終わりにするしかないじゃん」
旦那に''愛さんをください''なんて言えるわけがない。謝りたおして愛との関係を終わるしかない。
「そりゃそうだろうね。ばれてるのに不倫続ける馬鹿はいないよな」
「はい…すいません」
「謝って済むか!!早く行くよ!」
香奈は少し落ち着いていたが、腹がたったのかまた拓斗に向かって怒鳴った。
「えっ…行くってどこへ?」
「はぁー、向こうの家に行くんでしょ?」
「行くけど…もしかして一緒に行くとか言うんじゃないだろうね?」
「行くに決まってるだろ!!どうして私だけ黙って大人しくしてないとだめなんだよ!!馬鹿にしないでよ」
香奈の顔がますます鬼のように変わってきた。
「はい…すいません」
「謝ってないでさっさと行くよ」
香奈は拓斗の腕を掴み、引きずり回す勢いだ。
「そんな引っ張るなって…分かったから…」
拓斗は香奈に引きずられるように車に乗った。
『あ〜どうなるんだろ…いっそのこと一人で逃げてしまいたいよ……』
運転は香奈。隣でずっと下を向いたままの拓斗だった。




