3-7
「パパおきて」
拓斗が寝ていると、隣で宇宙が座っていた。
「どうした?宇宙」
時間はAM7時。拓斗は眠気まなこで宇宙を見つめている。
「もう起きるの。だからパパもおきて」
宇宙はそう言いながら拓斗を揺さぶっている。
「ママ起こしなよ」
宇宙の隣で香奈はぐっすり寝ている。
「だってママ起きてくれないんだもん」
宇宙は先に香奈を起こしていたようだ。
「…仕方ないな〜。じゃ〜起きようか」
「うん。下に行こうよ」
宇宙はベットの上から飛び降りて、拓斗の隣で待っている。
「よし。行こう」
拓斗は布団からゆっくりでて宇宙をだっこしてあげた。
リビングに入ると、宇宙はさっそくテレビをつけソファーに座り込んだ。宇宙が見ているのはいつも見ているヒーロー戦隊の番組だった。
「パパも一緒に見よ〜よ」
拓斗も宇宙に誘われるままに隣に座り、ぼ〜っとテレビに目を向けていた。
宇宙はテレビに夢中である。
拓斗はそのとなりでもう一度寝ていた。
一時間ぐらいは寝ていただろうか。拓斗が目を覚ますと、隣に宇宙はいなかった。
後ろを振り向くと、香奈と二人で朝御飯を食べていたのだ。
「あっ、パパおきたよ。パパもご飯食べなよ」
子供は朝からほんと元気だ。
「今日はどこへも行かないでしょ。暇だから実家でも行くよ」
「別にいいけど…」
拓斗は毎回のことなので諦めている。
「行くの昼からでいいかな〜。朝はゆっくりしたいから」
最近は仕事が忙しく、帰りも遅いのでゆっくりしたかった。行かないと言えば香奈の機嫌が悪くなるだけだ。
「はい、はい」
香奈はすでに機嫌が悪い。
拓斗は気にすることなく、朝ご飯の食パンを食べ終えてソファーに座った。
「宇宙、DVDでも見るか」
「うん、見る見る」
宇宙は早速好きなDVDを拓斗に渡してきた。
二人の後ろで香奈は一人で携帯を触っている。
拓斗は、休みの日は愛にメールをしない。香奈に怪しまれるからである。
ブルルル…ブルルル…
ポケットの中で携帯がブルッている。
マナーモードにしてあるので音はならない。
拓斗は携帯を取りだした。愛からの電話だった。
『どうしたんだろ?休みの日は電話なんてしてこないのに』
拓斗は不思議に思ったが、今は出るわけにはいかないのでそのままにしておいた。
電話は一度止まったが、それから何回もかかってきている。
拓斗はとりあえずメールをしてみた。
〈どうしたの?〉
返事はすぐに返ってきた。
〈急ぎの用事があるからすぐに電話して〉
『急ぎの用事ってなんだろ?』
拓斗はとりあえず電話をかけてみようと、トイレに向かった。
トイレに入ったと同時に電話がなった。
「もしもし?どうしたの?」
拓斗はゆっくり便座に座り電話をとった。
「お前誰だ!!?」
電話の相手は愛ではなかった。
「…えっ…誰?」
「お前、人の嫁と何してんだ!!」
「え?…嫁?」
やっと拓斗にも電話の相手が誰なのか分かった。
『旦那にばれたのか?…』
拓斗は思いもよらない電話に、頭の中が真っ白になった。
電話の向こうでは、旦那なんだろう男が何か怒鳴っているが、拓斗には全く聞こえていなかった。
『どうしよう…どうしてバレたんだ?携帯か?…もしかして…プリクラか!?』
拓斗は冷静に考えようと必死だった。
「あの?失礼ですがどちら様ですか?言っている意味がよくわからないんですけど」
とりあえず拓斗はとぼけてみることにした。
「はぁ〜、お前何とぼけてるん!?うちの馬鹿がお前と不倫してるって白状したんだよ。お前とのプリクラもでてきたんだよ!!!それでもまだ開き直る気なのか!?」
やっぱりばれている。
「愛さんとはたまに遊んでいただけですけど。別に体の関係もないですけど。それって不倫になるんですか?」
それでも拓斗はしらをきった。
「まだ開き直るのか!!いい加減にしろよ!!体の関係はないだと!?ちゃんと"やった"って言ってるんだよ!!とぼけるな、この馬鹿が!!」
大和は愛から聞いていないことまで言っている。
もちろん拓斗にはわからないことである。
「……」
拓斗はそれ以上何も言えなかった。
『…もうどうしようもない…どうしよう…』
拓斗はもうどうすることもできない。
こんな経験はもちろんだがない。何を考えてもばれてしまったことは仕方ない。もう素直に応じるしかないのか。拓斗は携帯を持ったまま完全に止まってしまった。
そのときだった。
ドン!!ドン!!ドン!!
トイレのドアを向こう側から激しく叩いている人間がいる。
「拓斗!!開けなよ!!不倫ってどういうこと!?愛って誰よ!!?」
香奈がドアの向こう側で話を聞いていたのだった。
「早く開けろ!!」
今にもドアを叩き割りそうな勢いだ。
『もう終わりだ……』




