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時間は少し戻り、愛は拓斗が風呂を見に行ったあと、大石に電話をしていた。
水道のことを話し、大家さんに電話してもらうことにしたのだった。
大石は、大家から雨水だということは何も聞かされていないのである。
「愛ーー!!」
愛が電話を切ってからすぐに、拓斗が慌てて戻ってきた。
「そんなに慌ててどうしたの?今、大石さんに大家さんに言ってもらうように言ったから」
「今、風呂場でここに住んでる人に出会って教えてもらったんだけどな」
拓斗は、松下から聞いたことを愛に話したのだった。
「えー雨水ってどういうこと?」
「そうらしいんだよ。ほんと教えてもらってよかったよ」
「浄水してこの汚さなの?こんなんじゃ料理に使うどころかお風呂も入れないじゃんかー」
「そうなんだよ、大石さんは知らなかったの?」
「電話したけど、そんなこと言ってなかったよ。聞いてないんじゃないの。もうー、いったいどんな大家なんだろ」
「とにかく、水は買わないとだめだよな。問題は風呂だよな。安い銭湯探すしかないかな」
「そうだね・・・お風呂はもうちょっと水綺麗になったらなんとか我慢して入れるかな。水は買ったら高いしなー、でもこの水は飲めないしなー」
愛はなるべくお金のかからない方法を考えることにした。今は無駄な出費をおさえなければならない。
「雨水って分かって風呂入れるか?俺はそこまで神経質じゃないから大丈夫だけど」
「今はそんなこと言ってられないからね。我慢できるところはしないとね」
「まぁーそうだけどね」
「とにかく、こんなこと言ってても仕方ないからご飯作っちゃうよ」
愛は、水を使わない料理を適当に作ることにした。
「俺、もうちょっと松下さんに色々聞いてくるよ」
拓斗は、松下の部屋に向かうため、初めての2階へ向かったのだった。
狭い鉄骨の階段を登り、2階に着くとすぐ右の部屋からおじさんの笑い声が聞こえてくる。
もう1人の住人なんだろう。テレビらしき音が漏れてくるので、テレビを見ながら笑っているのだろう。
松下の部屋は一番奥の部屋だと言っていた。
端から部屋は4つある。2つは空部屋なのだろう。
一番奥のドアをノックし、少し控えめな声で松下を呼んだ拓斗であった。
部屋の中からは音すら聞こえてこない。寝ているのだろうか。
拓斗はもう一度、今度は少し強めにドアをノックした。
しばらく待つと、松下が出てきたのだった。
今度は、パンツ1枚ではなくスウェットをきていた。さすがにパンツ1枚ではまだまだ寒いはずだ。
「はいはい、あーさっきの、えーっと・・・」
「西岡です」
「そうそう、西岡君だったな。どうしたの?何か困ったことでもあったかな」
「さっきの話なんですけどね、松下さんは雨水まさか飲んでないですよね?」
「そりゃーな。腹痛くなったら嫌だからなー」
松下は大笑いしながら答えたのだった。
「水ってどうしてるんですか?買ってるんですか?」
「買ってたら高いからなー。近くに湧水がでるところがあるんだよ。そうだ、場所教えてあげるよ。そんなに遠くないから。ちょっと待ってよ」
松下は、一旦部屋の中に戻り何かを書いている。
地図でも書いてくれているのだろう。
「ちょっと分かりにくいかもしれないが、この辺りだよ」
松下は簡単ではあるが、地図を書いて見せて説明してくれた。
「ありがとうございます。大体分かりました。一度行ってみます」
「あー、結構人来てるから近くまで行ったらすぐわかると思うから」
拓斗は他にもこの倉庫について、松下に色々と聞いてみたのだった。
松下も嫌な顔1つせずに、親切に教えてくれたのだった。
「お休みのところ、ほんとありがとうございました。助かりました」
「いやいや、また困ったことあったらいつでも聞いてな」
「はい、またお伺いします」
拓斗は松下にお礼を言い、愛の元へ戻ったのだった。
松下の話では、大家がかなり適当な人だということがわかった。
松下、そしてもう1人の住人も、いろんなことで大家に文句を言っているらしい。
その日の夜は、1日の疲れからか雨水で仕方なく髪の毛だけ洗い、布団に入ったのだった。




