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「ねぇー拓斗ー。やっぱり水道の水汚いよ」
愛は、晩御飯の用意をしていた。
特に何も食材を買ってないので、簡単なものにしようと思っていたのだが、相変わらず水道の水が茶色いのである。
最初のころに比べたら透明感はでているが、まだまだ目で見ても茶色いのである。
「なんだろうなこの水。水道管腐ってるのかなー。風呂のほう見てくるよ。こんな水じゃ風呂なんて入れないよな」
「ほんとだよ。1回大石さんに聞いてみるよ。アパートの大家さんと連絡とれると思うし」
拓斗は風呂の水道を見に行った。
蛇口をまわしてみると、やはり茶色い水しかでない。
「どうなってるんだこの水道」
「どうしたんだ?」
拓斗の後ろから、聞き慣れない男の人の声が聞こえてきた。
「えっ、」
拓斗が後ろを振り向くと、知らないおじさんがパンツ1枚姿で立っていたのだった。
「あっ、どうもどうも。君が新しく下に引っ越してきた人だな」
その男は、背は拓斗より高くスラッとした紳士的なおじさんだった。パンツ1枚ではあるが。
「あっ、そうでしたか。西岡と申します。これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。私、松下と言います。それよりもよくこんなアパートに来ましたね。聞く話ではご家族なんでしょ?」
「はい、妻と子供が二人います。このアパートは派遣会社の人に探してもらいましたので、自分達は来るまでどんなところか知らなかったんですよ」
「そうだったんですか。派遣の人もひどいですね。もっと普通のアパートあったでしょ。ここは私みたいな男独り身の人間が住むところですよ」
「私もこのアパート見たときは何も言えなかったですよ」
「そうだろうな。ところでさっきから水道ずっと見てたみたいだけど、どうかしたのかな」
「あー、それがですね、水道の水が汚いようで」
「あれっ、何も聞いてないの?」
「えっ、何をですか?水道代がタダっていうのは聞いたんですけどね」
「それは大家さんもひどいなー。ここの水は水道じゃないんだよ。雨水を浄水させてるだけだからな」
「・・・えっ!?今なんて言いました?」
拓斗は、松下のあり得ない言葉に驚きを隠せない。
「ほんとあり得ないだろっ。外に大きな穴開けて、そこに雨水貯めてるんだよ。それを浄水させて使ってるんだよ」
「雨水って・・・そりゃ水道代タダなはずですね」
「それは大家さんも言っておかないといけないことだよな。だから飲んだらだめだぞ。料理するのも使わないほうがいいよ。浄水してるといっても雨水だからな」
松下は笑いながら言っているが、拓斗は全く笑えず苦笑いを浮かべたのだった。
「ありがとうございます。教えてくれなかったら大変なことでしたよ。ちょっと嫁に言ってきますよ」
「あー、早く言ってやりな。他にも困ったことあったら言ってよ。私からも大家さんに言ってやるから」
「ありがとうございます。ほんと助かります」
拓斗は松下にお辞儀をして、愛の元へ戻ったのだった。




