8-2
そのアパート?いや、倉庫は、入り口らしきものはなく大きなシャッターが1つあるだけだった。
建物は2階建てなのだろうか、2階には窓がいくつかあった。
誰がどうみても倉庫である。
「ここ、どこっ?」
車の後ろで寝ていた桜、そして向日葵も二人の声で起きたのである。
「やっとおきたの桜。もう帰ってきてるよ。ちょっと話してくるから待っててね」
拓斗と愛はとにかく車から降りることにしたのだった。
「大石さん、まさかここがアパートとか言うんじゃないでしょうーねー」
「ここだよ。外から見たら倉庫だけど中はちゃんとなってるから」
大石はシャッターの前まで行くと、大きなシャッターを手で上に上げた。
「自動じゃないの?」
拓斗はその大石の姿を見てボソッと呟いた。
大石はシャッターを開けると中に入っていく。
拓斗と愛も大石の後についていった。
倉庫の中は特に何もない。奥に階段があり、右側に壊れそうな木のドアが1つ。左側には通路があり覗いてみるとドアが4つほど続いている。隅のほうには壊れているのだろうレンジや掃除機、いろんなゴミが無造作に積み上げられていた。
「この部屋だよ。あっ、頼まれていた電化製品は車に入ってるから後で下ろすな」
「ありがとう・・・」
愛は大石に、最低限必要な電化製品を借りるように先に言ってあったのだった。
大石は、右側にあったドアの前に立ち、ポケットから鍵を取り出した。
拓斗も愛も、余りの汚い空間に言葉がでないが、辺りを見てまわっていたのだった。
「これが鍵ね。2個あるからね」
大石は、鍵をノブに差しドアを開けようとしている。
「あれっ・・・」
鍵をまわそうとしているのだが、どうも固くてまわらないようだ。
「ちょっと固いなー・・・あっ、開いたよ」
大石は扉を開け、中に入っていった。
「ほんとにこんなところに人が住んでるの?」
愛は今でもここがアパートだなんて信じられない。
拓斗も同じ気持ちだった。
「と、とにかく部屋に入ろうか」
二人は、仕方なく大石の後に続いて部屋の中へはいっていったのだった。
ドアから中に入ると、20畳ぐらいあるだろうか広い台所があった。
ただ台所といっても床はコンクリートで、長い間使われていないであろう、昔くさいキッチンが隅のほうにあるだけで、それ以外は何もない状態だった。
そして、左側にふすまの引き戸がある。この奥は部屋なのだろうか。
大石はその引き戸を開け、中を見せてくれた。
その中は10畳ぐらいの部屋であった。
腐りかけた木のクローゼットが1つ。磨りガラスの窓が2つあり、古びたカーテンが着いていた。床には赤色というか茶色というか、色がはげているじゅうたんが引きつめられている。
「部屋はこんな感じかな・・・」
「大石さん、これはひどすぎるよ・・・私達はなんとか我慢するけど、子供もいるんだよ。もうちょっとましなところはなかったのー!?」
愛は、大石の話からある程度古いアパートだということは予想していたのだが、ここまでひどいとは思わなかった。
「なかなかなくてね、とりあえずここで我慢してくれないかなー・・・違うアパート探しておくから」
「そうしてよ・・・それでお風呂とトイレはどこなの?」
「あー、部屋出て階段の下にあるから。案内するな」
3人は一度部屋から出て、さきほどチラッと見えた階段の下にあるドアへと向かった。
「ここがお風呂だよ。ここは戸川さんがすきに使っていいって」
「・・・・・何!?これっ!?」
愛も、その後ろでいた拓斗もその風呂?に言葉がでない。
「大石さん!!こんなところに入れっていうの!?」
ドアを開けると、1人がちょうど座って入れるだけの浴槽がある。そしてシャワーは設置してあるのだが、汚れているのか真っ黒である。
「これでも掃除してくれたみたいなんだけどね」
「これで掃除したの!?この浴槽なんなの?なんか赤いのがいっぱいついてるけど、それにどこもかしこも真っ黒じゃん!!カビはえまくってるじゃんかー!!」
「もう1回掃除してもらおうか・・・」
大石は、愛に責め立てられ困った顔をしている。
「いいよもう、自分で掃除するから」
「ほんとにいいの?」
「いいの?って・・・何回掃除してもらってもどうせ適当にかしないでしょ!?だったら自分でしたほうがましだよ!!」
「・・・・・・」
何も言えない大石であった。
「それでこっちがトイレ?」
愛は、さっさとトイレらしきドアを開けている。
「はいはい、こっちも一緒だね」
愛は呆れすぎてどうでもいいようになってきた。
「こんな感じかな・・・戸川さん以外に、二階で2人男の人が住んでるみたい。あっ、それと水道代はいらないらしいから」
「水道代いらないってどういうこと?タダほど恐いものはないんだけど・・・」
「どうしてかは聞いてないけど、いらないらしいよ」
「まぁーいいよ」
水道代がタダな理由。後にこのことで散々な目に合うことになるのだが、今はそんなことを知る由もない拓斗達であった。
その後、拓斗の仕事のことなどの話を聞き、大石とは別れたのだった。
「とにかく掃除だね・・・とうぶんはなんとかここで頑張ろっか」
「そうだね、今は贅沢なんていってられないからな」
「問題は桜と向日葵だね・・・耐えられるかなこんな環境に・・・とにかく呼んでくるね」
桜と向日葵は部屋を見るなり、愛が想像していたとおり、ものすごくひきつった顔で、その場に呆然と立っていたのだった。




