8-1
「愛、着いたぞ」
「・・・・・・着いたの・・・?」
ぐっすり寝ていた愛は、拓斗の声で目が覚めた。
待ち合わせ場所は、愛がよくご飯の買い物をしていたスーパーの駐車場だった。
「ごめん・・・寝ちゃってたよ・・・」
「全然大丈夫だよ。愛も疲れてるでしょ」
「疲れてるのは拓斗も一緒だからね・・・もう大石さん来てるかなー。一回電話してみるよ」
愛は、携帯をとりだし大石に電話した。
大石はまだ事務所でいるらしく、今から向かうとのことだった。
派遣の事務所は近い場所にあるため、5分程度で到着するだろう。
「ほんと懐かしいね。3か月しか経ってないのに、もう1年近く帰ってきてなかったような気がするよ」
「ほんとだな、なんか懐かしいよな。いよいよだな・・・」
「・・・そうだね・・・あっ、きっとあの車だよ」
大石の車は、少し離れた場所に停まった。
拓斗は車を大石の隣まで移動し、愛と一緒に車から降りたのだった。
「大石さん、久しぶり。ごめんな、急なことで」
「あーいいよいいよ」
大石は、50歳ぐらいのどこにでもいる普通のおじさんだった。
小柄で小太り。優しそうな人である。
気のせいか、どことなく疲れ果てているのか、顔がやつれている。
大石は、頭をかきながら拓斗のほうを見て軽くお辞儀をした。
「西岡君だったかな?大石です。よろしくお願いします」
大石は、愛から事情はある程度だが聞いていた。
「西岡です。ほんと急に無理聞いて頂いてすいませんでした」
「いえいえ、戸川さんにはいつもお世話になってるので」
「大石さん、とにかくアパートまで案内してくれる?ここじゃ誰と会うかわからないから」
家の近くで土曜ということもあり、誰がいるかわからない。もしかしたら大和がいる可能性もあるのである。
愛は、びくびくしながら辺りを気にしていたのだった。
「そうだな、じゃー私に着いてきてくれるかな。ここから5分ぐらいだから」
大石は、古びた今にも壊れそうなワンボックスカーに乗り、先に動き出した。
拓斗と愛も車に戻り、大石の後に続いて車を走らせたのであった。
大石の車は、二人が見慣れた道を少し走り、愛の団地とは逆方向の細い道に入っていった。
そして1キロほど走ると、今よりも細い道に曲がっていく。辺りは田んぼしかない農道である。
「こんなところにアパートなんてあったかなー?」
拓斗は、さっきまでの道は通ったことがあったが、今走っている道は初めてだった。
「愛はこんなところ初めて。どこまで行くんだろ・・・」
少し離れたところには田舎の家が何件か見えるが、今走っているところには田んぼと農業用の倉庫だろう建物が一軒建っているだけだった。
「まさかねー」
「そんなことはないでしょー」
拓斗と愛は、その倉庫を同時に見て顔を見合わせた。
大石の車は、二人がまさかと思っているその倉庫に入っていったのである。
「えーーウソでしょー」
「冗談だよなー、これってどう見てもアパートじゃないよなー、倉庫だよなー」
二人は、まだ信じられないがとにかく大石の車の後ろに車を停めたのだった。




