7-26
3月4日。
地元に帰る準備は、着々と進んでいた。
予定では、桜の卒業式の1週間前に帰る予定で進めている。
拓斗は、今週いっぱいで仕事を辞めることになっていた。
今日は水曜日。あと2日である。
桜と向日葵は、帰る1日前まで学校に行くことにした。
「えーっ!!西岡さんやめるんですかー!!」
拓斗は、佐伯の余りにも大きな声に驚き、自転車から落ちそうになった。
「そんな大声出すなよー。ほんとびっくりしたよ」
「すいませーん。だっていきなりなんですもん」
「ごめんなー、芝浦には前から言ってたんだけどな。佐伯さんにはなかなか言う機会がなかったからな」
「だって、西岡さん最近先に帰るんですもん」
拓斗は、愛に誤解された日以来、佐伯のことを避けていたのだった。
今日は偶然出会ってしまい、一緒に帰ることになってしまったのだった。
いつも一緒の芝浦は、今日は休んでいた。
「最近ちょっと急いで帰らないとだめだったから・・・。ほんとごめんな」
「そうなんですかー。でも西岡さん辞めたら寂しくなりますね」
「そんなことないよ。俺のことなんてすぐに忘れるよ」
「忘れませんよ。ほんと相談にのってもらいましたから」
「それで旦那とはどうなったんだ?」
拓斗は、相談を受けてから少し気になっていたのだった。
「あれからですか?・・・旦那とは電話で色々話したんですけどね・・・話するにつれてだんだん腹が立ってきちゃってね、もう別れることにしようかなって」
「あらっ、えらく思いきったなー」
「たぶん旦那とより戻してもまた同じ事されそうな気がしちゃって」
「そっかー、まぁー佐伯さんがそう決めたんなら文句はないけどな」
「はい、もう決めました。実家の母にこのこと言ったら、帰ってこいって言ってくれたんです。だから母の言葉に甘えようと思いまして」
「それはよかったじゃないかー。親っていうのは、いつまでたっても子供のことが心配なんだろうな」
「親には迷惑かけたくなかったんですけどね。今回は甘えようかなって」
「そうだな。とにかく無事解決してよかったよ。これで心置きなく俺も帰れるよ」
「心配かけてすいませんでした。西岡さんも頑張ってくださいね」
「あー、短い間だったけどありがとうな。じゃー元気でな」
拓斗は佐伯と別れ、アパートに帰ったのだった。
「西岡さん・・・バイバイ」
佐伯は、見えなくなるまで拓斗の背中を見ていたのだった。
いつからか拓斗のことが気になりはじめ、好きという気持ちが押さえられなくなってしまった。
佐伯は溢れる涙を流しながら、自分の気持ちを言えるはずもなく、心の中に静かに封印したのだった。




