7-25
「大和おかえり」
佐々木莉那が、仕事から帰ってきた大和を出迎えた。
ここは大和の家。
もちろん以前まで愛達が住んでいた一軒家である。
「ご飯作ってあるよ」
「おぅ、サンキュー」
年が明けてから、大和は莉那を家に呼び、大胆にも一緒に暮らしていたのだった。
「なんだ、また野菜炒めかー」
莉那は、料理が得意なほうではない。
どうしてもレパートリーが限られてくるのである。
毎日、愛の料理を食べていた大和にとって、莉那の料理はいまいちだった。
莉那はまだ若い、だから仕方ない、そう思うようにはしているが、不満はつのるだけだった。
「どうせ莉那は奥さんみたいに料理うまくありませんから!!」
「ごめん、ごめん」
大和は言った後に後悔した。
「嫌だったら食べなかったらいいじゃん」
「ごめんってー、嫌じゃないからな」
大和は、怒っている莉那をなだめるが、時はすでに遅かった。
莉那は携帯を片手にソファーに座り込み、一言も喋らなかった。
大和は仕方なく、正直あまり美味しくない野菜炒めを、一人で食べることにしたのだった。
「莉那、美味しいよ」
大和は、莉那に聞こえるように少し大きな声で言ってみたが、とうの莉那は完全に無視である。
大和が一人でショボくれていると、携帯が鳴っているのに気がついた。
画面を確認すると、電話の相手は愛の父親、佐々木義雄だった。
「珍しいなー」
義雄からの電話は、ひとつきぶりぐらいだろうか。
「もしもし」
大和は、口に入っている半焼けの人参を飲み込んでから、静かに電話に出たのだった。
「ご無沙汰です大和君」
「どうしたんですか?愛からはなんの連絡もないですよ」
どうせ、愛のことで何かわかったかどうかの確認だろうと思っていた大和であった。
「愛から連絡あったよ・・・」
「えっ、そうなんですか?」
「あー、桜も向日葵も元気だそうだ」
「で、どこにいるんですか!?」
「場所は言ってくれなかったよ。ただ、桜の卒業式までには帰ってくるそうだ」
「卒業式?もうすぐじゃないですか」
「それでなんだが大和君。もう分かってると思うけど、愛は帰ってきても大和君と一緒には暮らさないと言ってるんだ」
「あの男と住むっていうことですね」
「すまない・・・本人から言うべきなんだが、愛は大和君と二人では話をしたくないと言っているんだ」
「そんな無責任な話ありますか!?勝手に逃げておいて、帰ってきたかと思えば話もしたくないって!!」
「大和君の気持ちもわかるが、愛の気持ちもわかってやってくれ。急にいなくなったことは愛も反省してる。私からも嫌というほど怒ったから。でも愛も相当苦しんでるみたいなんだ。私も親としてこれ以上放っておくことができない。だから愛が帰ってきたら私達も一緒に話をしようと思ってる。大和君の親にも話に参加してほしいんだよ。わかってくれ」
「子供じゃないんだから、どうして親まででてくるんですか?話にならないですよ」
「もう二人だけの問題じゃないんだよ大和君。愛がこうなったのも、今までの生活に問題があったからだろう。こうなる前に私達も気づいてあげるべきだったんだが・・・愛もなにも言わない子だから」
「じゃー俺が悪いって言いたいんですか!?」
「そうは言ってないが、とにかく大和君の両親には私からもお願いしておくから。話する日が決まったらまた連絡しますので」
「ちょっと・・・」
電話はすぐに切れた。義雄も大和の性格は知っている。あまり話をややこしくするとやっかいな人間である。言うべきことだけ伝え、電話を切ったのだった。
「あー、くっそー、勝手に話進めやがって!!」
大和は、自分の言いたいことも言えずに電話が切れたので腹が立っていた。
「どうしたの?そんなに腹立てて」
さっきまで怒っていた莉那も、大和の異変に気がついたのだろう心配そうにしている。
「あいつらが帰ってくるんだと!!」
「えっ、じゃー莉那出ていかないとだめじゃん」
「もうこの家には帰ってこないよ!!離婚したいんだと!!」
「よかったじゃん」
莉那は喜んでいる。
「離婚するのはいいが、二人で話はしたくないんだと!!」
「誰と話するの?」
「親と一緒にだと・・・ちょっと実家にいってくるから」
大和は食べかけの野菜炒めをおき、急ぎ足で出ていったのだった。




