7-22
愛はアパートから出ると、桜を探した。
今までなら、家の近くにある公園のベンチに座り込んでいるのである。
過去にも何度かこういうことはあった。
桜は普段から思っていることを口に出さずにいるため、何かの拍子に爆発してしまうのである。
今のアパートの周辺には何もないため、そんなに遠くには行っていないはずだ。
愛はアパートのぐるりを歩いていると、ちょうど裏側の隅の方で桜はしゃがみ込んでいたのだった。
「ふぅー・・・」
愛は桜を見つけたことで、一呼吸おき、桜の隣に座りこんだのだった。
「桜、ごめんね・・・こんなときに喧嘩なんかしちゃって」
「・・・」
桜は下を向いたまま泣き続けているだけだった。
「桜もいっぱいいっぱいだよね。急にでてきちゃって、知らないところだしね。ほんとごめんね」
愛は桜の頭をゆっくりと撫でてあげた。
「いいよ・・・ついてきたの桜だし・・・愛ちゃんが幸せならいいよ・・・」
「ありがとう桜・・・桜はほんと優しいね」
「愛ちゃんはあの人のこと信じてるの?桜はあの人のこと知らないし・・・」
「全てを信じてる訳じゃないけど、一緒にいることが幸せだから」
「そうなんだ・・・愛ちゃんが幸せならいいよ・・・ごめんね・・・桜が変なこと言っちゃったからこんなことになったんだよね・・・」
「桜のせいじゃないよ・・・拓斗のことは後で話するからね・・・」
「うん・・・ごめんね・・・愛ちゃんの泣くところ見たくないから・・・喧嘩しないでね」
桜は昔から仲のよくない愛と大和を見ていたのだった。
愛もそのことはよく分かっている。
「桜も言いたいこと溜めないで言ってね」
「うん・・・」
「何か言いたいことあるんでしょ」
愛は、ここのところ元気のない桜のことを気にかけていた。
「・・・卒業式、前の学校でやりたいの・・・今の学校も友達できたけど・・・やっぱり今までの友達と一緒に卒業したい」
桜は、自分の思いを言えずにいた。
もうすぐ卒業式。どうしても昔の友達の顔が忘れられないでいた。
「やっぱりそうだったんだね。ごめんね、気づかないで。そのことも拓斗と話してみるね。どのみちこのままではいれないからね。いつかは帰らないといけないから」
「うん、ごめんね、わがまま言っちゃって・・・」
「そんなこと言わないの。迷惑かけてるのはママだからね・・・じゃー帰ろうか。向日葵とパパが心配してるからね」
「うん・・・」
愛と桜はしっかりと手を繋ぎ、拓斗と向日葵の元へと戻っていったのだった。
愛は、桜の涙をふいてあげながら、自分の目から溢れてきそうな涙をグッとこらえていたのだった。




