7-21
拓斗はいつものように、佐伯と別れ家に到着した。
帰ってくる途中、愛達に見られていたことなんて全く知らない拓斗ではあったが。
「ただいまー」
いつものように玄関を開け、中に入っていったが、今日は返事が返ってこなかった。
いつもなら愛の「おかえりー」が返ってくるはずなんだが。
拓斗は、首をかしげながら奥へ入っていった。
「あれ、どうしたの?三人でショボくれちゃって」
部屋には、三人が何もしないで座っているだけだった。
「おかえり・・・」
愛は下を向いたまま、小さな声で返事をした。
「何かあったの?暗い顔しちゃって・・・」
「何でもないよ・・・ご飯の用意するね・・・」
愛は下を向いたまま台所へ向かった。
拓斗はもちろんこの状況が分からない。
「愛ちゃん・・・ちゃんと聞いたら?」
四人の中に沈黙が続いたが、桜が静かに口を開いた。
「えっ、何を聞くの?俺が何かしたのか?」
拓斗は桜の言ってる意味が理解できない。
愛は言うつもりはなかったが、仕方なく口を開いたのだった。
「・・・あのね・・・今日三人で公園行ったのね・・・それで帰るときに拓斗を見たの・・・女のひとと仲良さそうに話してた・・・」
「あー、佐伯さんのことか?なんだ、見かけたんなら声かけてくれたらよかったのに」
「誰なの?」
「もしかして、俺が佐伯さんと変な関係になってると思ったの?それでこんな雰囲気になったんだな」
「愛が見たのは初めてだったけど、前から桜は何回も見てるの。二人が一緒にいるところ。公園のベンチで楽しそうに喋ってたこともね
・・・」
愛の視線がものすごく冷たい。桜も同じような目で拓斗を見ている。
向日葵は話の内容がよく分かっていないが、その場の空気を読んでいるのだろう泣きそうな顔で三人を見つめていた。
「ごめん、黙ってた俺がいけなかったんだね。佐伯さんとは全然そんな関係じゃないんだよ。仕事場が一緒でね、帰る道も一緒だっただけなんだよ。公園で話してたのも、家庭のことで相談にのってただけなんだよ」
拓斗は佐伯との関係を説明した。
「へぇー・・・それでその話を信じろって言うの?」
愛は疑うことしかできない。
拓斗の話が不思議とウソにしか聞こえない。
「信じるも何もほんとの話だし・・・」
拓斗は、信じてくれない愛にどう説明したらいいのか分からなくなってきた。
証拠もなにもない。愛が拓斗の話を信じてくれない限り疑われるだけである。
「どうでもいいけど!!別に夫婦でもないんだし!!拓斗の好きなようにすればいいじゃん!!」
話はややこしいほうにしか進んでいかない。
「そんな言い方することないじゃん。俺はお前達のために頑張ってるんだぞ!!」
拓斗も愛の態度に腹が立ってきた。
別にやましいことなんてしていないのに。
「頑張ってもらわなくて結構です!!私達が邪魔なら出ていくし!!」
「行くところもないくせに偉そうなこと言うなよ!!」
久しぶりの喧嘩である。付き合っているときも、ささいなことで喧嘩になったこともある。
こうなった愛はどうすることもできない。
「もうやめてよ!!」
桜が急に叫び泣き出したのだった。
「・・・」
「・・・」
拓斗も愛も、突然のことでびっくりした。
めったに感情を出さない桜が大声で泣いている。
「もういやっ!!こんな生活・・・」
今まで溜めてきた感情がここにきて爆発したのだろう。
拓斗は、こんな桜を見るのは初めてであり、どうすることもできずに立っていることしかできないでいた。
向日葵も、桜の行動にびっくりし泣き出したのだった。
愛は桜の前にしゃがみこみ、桜を抱きなだめようとした。
「いやっー!!」
桜は愛の腕を払いのけ、逃げるように玄関のほうへ走っていってしまった。そして玄関を開け外に出ていってしまったのである。
「拓斗、向日葵のこと頼んだよ」
愛はそう言い残し、大きく深呼吸をすると、桜を追いアパートを出ていったのだった。




