7-20
2月も終わりに近づき、相変わらず寒い毎日だった。
今日は、桜も向日葵も学校がいつもより早く終わり帰ってきたため、公園へ散歩に行くことにしたのだった。
公園には池があり、子守りをしているのだろう、お婆さんと2歳ぐらいの男の子が池に食パンをちぎっては投げていた。
食パンの先には、数ひきの鯉が口を開けて待っていたのだった。
「食パンもったいないね」
その風景を見ていた向日葵が、ボソッと呟いている。
今の愛達にとって、食パンは贅沢品であった。
昔の生活では考えられないほど、切り詰めた生活が続いている。
食パン1つでも、今の愛達にとっては贅沢品なのである。
「もったいないね。鯉に食パンあげるなんてね」
愛は、今まで桜と向日葵にはそれなりの生活をさせてきたこともあり、言う言葉が見つからなかった。
「向日葵、ブランコしようよ」
そんな愛の気持ちを察したのか、桜は向日葵の手を引っ張りブランコのほうへ向かったのだった。
「誰かおしてよー」
桜は一人でブランコこいで乗っている。
向日葵は、まだまだ一人では桜のようにこげなかった。
「はいはい、ママが押してあげるね」
愛は向日葵の後ろにつき、背中を押してあげたのだった。
「ねぇー愛ちゃん?いつまでここで暮らすの?ずっといるつもり?」
桜が急にブランコを止め、愛に目をやった。
「そうだねー。桜は帰りたいよね・・・そのことはママもパパも考えてるんだけどね」
「・・・そうなんだ・・・」
「向日葵は帰りたい?」
愛は無邪気にブランコをこいで喜んでいる向日葵にも聞いてみた。
「向日葵はどっちでもいいよ」
「そっかー、向日葵はこっちでも友達いっぱい出来たもんね」
「うん」
向日葵は元気な声で答えている。
「とにかく桜、もうちょっと考えさせてね」
「・・・」
桜は黙って下を向いているだけだった。
「さぁーそろそろパパ帰ってくる頃だし帰ろうか」
「はーい」
「・・・」
向日葵は元気に返事したが、桜は下を向いたまま何も言わなかった。
「あっ、パパちゃんだよ」
3人で帰り道を歩いていると、向日葵がいきなり指をさしている。
その先には拓斗が自転車で走っていた。
「あっ、ほんとだー」
愛も拓斗に気が付き、呼び止めようとしたが、拓斗で隠れて見えなかったが女のひとが隣にいたのだった。
「愛ちゃん、あの人だよ、この前一緒にいたひと」
「・・・なんか仲良さそうだね」
愛は、二人の光景を見て急に不安になってきたのだった。
「帰ろうか・・・」
愛はそれ以上何も言わず、桜と向日葵を連れて家路についたのだった。




