7-18
今日も定時に仕事が終わり、拓斗は自転車で帰っていた。
ここ最近は、芝浦と佐伯の三人で一緒に帰っていた。
今日もいつものように、芝浦と別れ佐伯と二人になっていたのだった。
「あのー西岡さん・・・ちょっと相談にのってほしいことがあるんですが・・・だめでしょうか?」
佐伯とは、初めて一緒に帰った日以来、込み入った話はしていなかった。拓斗も仕事以外の話はしないようにしていたのだった。
「相談?・・・仕事のことかっ!?」
「仕事のことじゃないんです・・・家庭のことなんですけどね 」
「家庭のことかー。俺でいいんならきいてあげるけど?」
拓斗は、人の相談にのってやる立場ではないが、佐伯も困っている様子であるため、断ることもできなかった。
「ありがとうございます。実は旦那のことなんですけどね・・・」
「とにかく、どっか座ろうか?もう家に着いちゃうからな」
「はい・・・ほんとすいません・・・」
佐伯は、申し訳なさそうに拓斗を見ている。
「いいよ、あっ、あそこの公園がいいかな」
拓斗と佐伯は、帰り道に通っている公園に入り、ベンチに座ったのだった。
「早速なんですが・・・」
佐伯は、座るなり話始めた。
佐伯の話によると、旦那とは同級生であり、高校の時から付き合っていたらしい。
そして、高校を卒業してから妊娠していることがわかり結婚した。いわゆる出来婚である。
子供が出来てからは、何でも手伝いをしてくれた旦那であったが、最初だけだった。
子供が1歳を過ぎたころから手伝いはおろか、毎日帰ってくるのも遅くなっていた。
女ができたのだろうと問い詰めると、逆ギレされる。
それからというもの、夫婦の会話も全くなくすれ違いの生活が始まったのである。
佐伯はそれが嫌になり、子供を連れて家を出たのだった。
「なるほどねー・・・それで悩んでるの?」
「それが話はここからなんですよ。家を出てから一年が経つんですが、この前なんの連絡もしてこなかった旦那からメールがきたんです・・・女と別れたから戻ってきてくれって」
「また勝手な話だなー」
「そうなんですよ。それでどうしようか悩んでるんですよ・・・」
「悩んでるってことは、戻る気もあるってこと?」
「はい・・・現実問題、女一人で子供を育てていくことが大変なんです!・・・私一人なら戻るなんて馬鹿なことはしないんですが・・・生活のことを考えると・・・」
「そうだよな。女手ひとつではきついよな・・・」
「はい・・・」
拓斗も、嫁と子供を捨てた人間だ。
そんな人間が、こんな相談にのっていてもいいのか。そう思うと何も言えない拓斗であった。
「旦那の気持ち次第かな・・・佐伯さんのことが嫌で他に女作ったかどうかだよな。若くで出来婚だから、ただ遊びたかっただけなのかもしれないしな。それで女と別れてもう一度って思ってるのかもしれない。でも一回そういうことをすると、また同じことをするかもしれないよ。あとは佐伯さんが旦那を許してあげるかどうかだと思うんだけどな」
「男なんて勝手ですよね・・・女の方が育児に家事に大変だと思うんですけどね」
ごもっともな意見である。
「佐伯さんはどう思ってるの?まだ旦那さんのこと好きなの?」
「嫌いにはなってないですけど、女作ったことは許せません。でも生活のこと考えたらより戻したほうがいいのかなって・・・」
「一番大切なのは自分の気持ちだよ。嫌々戻ったら絶対後悔するよ。佐伯さんまだまだ若いんだから、新しい恋するのもいいんじゃないかなー?」
「西岡さんならどうですか?子供連れの女に興味持ちますか?」
「俺は子供好きだからな。そりゃー最初はひくと思うよ、子供がいたなんて知ったときはね」
「そうでしょ・・・ひきますよね・・・」
「でも人を好きになるって、子供がいるとかいないとか関係ないと思うけどね。今の時代にはそんか人達いっぱいいるからね。再婚して、血の繋がりないけど仲のいい親子なんてね」
「そうでしょうかー・・・」
「佐伯さんはまだまだ若いから選択肢は色々あるよ。大丈夫、大丈夫」
「はい・・・」
「そんなに急いで決めることじゃないと思うよ。少しゆっくり考えたらどうかな?旦那さんもほんとにやり直したいと思ってるんなら、それなりの行動はしてくるだろっ。もしかしたら一人でいるのが淋しいだけで、もう違う女が出来たかもしれないしね」
「そうですね・・・もう少し考えてみます」
「それがいいよ。またいつでも相談のってやるからな」
拓斗は、蔓延の笑みで佐伯を見てあげた。
「はい、ありがとうございます」
佐伯は、相変わらず元気のない顔であるが。
「じゃー帰ろうか」
二人は再び自転車に乗り、それぞれに待ってくれている人の元へ帰っていったのだった。




