7-17
拓斗は、いつ電話がかかってくるかわからないので一度電源を切っていたが、もう一度電源を入れ、すぐに履歴から母親の幸子に電話をしたのだった。
「もしもし・・・拓斗?」
「もしもし、母さん・・・ひさしぶり・・・」
幸子は電話に出るなり泣き出している。拓斗の声を聞けたことが、よっぽど嬉しかったのだろう。
「拓斗・・・あー元気なのね・・・生きてるのね・・・ほんとよかった・・・いなくなってからほんとに心配したんだからね・・・あっ、ちょっと待って・・・」
電話の向こうからは、幸子と父親の久光が喋っている声が聞こえてくる。
「もしもし、拓斗かっ!お前今どこにいるんだ!!心配したんだぞ!!」
久光は電話の向こうで怒鳴っているが、心配していたのだろう、声が優しく感じる。
「父さんごめんな・・・何も言わずに出ていっちゃって・・・でもこうするしかなかったから・・・」
「そんなこと今更言っても仕方ないだろう。謝るんなら母さんに言え!母さんは、心配で毎日ほとんど寝てないんだからな」
「そうなんだ・・・ほんとごめん・・・」
「母さんに代わるからちょっと待てよ」
しばらくして幸子が電話にでた。
「もしもし、元気にやってるの?相手の人は子供も一緒なんでしょ?それで拓斗はよかったの?相手の人に騙されてるんじゃないの?」
「四人で仲良く暮らしてるよ。騙されたなんてとんでもない。駆け落ちしようって言ったのは俺だからな。どうせ香奈にでも変なこと吹き込まれてるんじゃないの!?」
「拓斗から言ったの?香奈ちゃんの話では、相手の人に騙されてるだけだって言ってたけど」
やっぱり香奈が、適当なことを二人に言っていたのだった。
拓斗は今までの経緯を幸子に話した。
幸子からも、拓斗がいなくなってからのことを聞いたのだった。
拓斗がいなくなってから香奈は、久光と幸子に夜な夜な文句を言っているらしい。拓斗も嫌というほど夜遅くまで責められた。それが、拓斗がいなくなったことで親に当たっていたのだった。
久光は、それからノイローゼ気味になっているらしい。
「ほんとごめんな・・・・俺のせいで・・・」
「いいの、いいの、こうやって拓斗の無事もわかったんだし。これで少しは気が楽になったよ。父さんも同じだと思うよ」
「うん・・・すまない・・・でも、今日電話したことはまだ香奈には言わないでほしいんだ」
「わかった、わかった。まだ言わないでおくね。これからずっとそっちで暮らす気なの?」
「このままにしておくつもりはないけど、今はまだ帰るつもりはないかな。帰ってちゃんと話しないとだめだってことは分かってるんだけどな」
「そうね。離婚の話とかもきちんとしないとね。香奈ちゃんはもう諦めてるみたいだし」
「そうなんだ。もう探すの諦めたの?」
「もう探す宛がないみたいだね」
「そっか・・・じゃーまたそっちへ戻るときは電話するから。携帯は電源切ってあるからね」
「体だけは気を付けてね」
「あー、わかってる。じゃーね」
拓斗は電話を切ったあと、大きく深呼吸したのだった。
「どうだった?」
桜と向日葵に、電話の話をしていた愛だったが、拓斗の電話が終わったことに気が付いたのか、心配そうに聞いてきた。
「あー、父さんも母さんも心配してたよ。ほんと悪いことをしたよ・・・もっと早くに電話しておけば良かったな・・・」
拓斗も愛と同じく、親に心配させたことを後悔したのだった。




