7-16
拓斗が仕事から帰り、愛は携帯を見たことを伝えた。
「やっぱり親は心配してるだろうな。元気にやってることだけでも伝えないとだめだよな」
拓斗もずっと気になっていることだった。
「うん、ろくに親孝行もしてないし、心配ばっかりかけてるからね・・・」
「じゃー俺も一回携帯見てみるよ。愛はとにかく電話してあげな」
「うん、そうするよ」
愛は、一度電源を切った携帯を開けた。
母親の昌子に電話をすると、すぐに昌子が電話に出たのだった。
「もしもし愛?」
昌子は、今にも泣きそうな声である。
「うん・・・お母さんごめんね・・・」
「あー、愛なんだね・・・本当に愛なのね・・・。よかった・・・お父さん、愛からかかってきたよ」
昌子の隣に、父親の義雄もいるのだろう。声が聞こえてくる。
「愛、元気にしてるの?桜と向日葵は?」
昌子は泣いているのだろう、声が震えている。
「うん、みんな元気だよ・・・ごめんね心配ばっかりかけちゃって・・・」
「もう何も言わなくていいから。元気にやってるんならよかった」
愛は、今までの経緯を昌子に話した。
拓斗のこと、子供のこと、住むところや拓斗が働いてくれていること、子供の学校のことなど。
「そっか、そっか、そんな遠いところでいるんだね。でもほんとよかった・・・もういなくなってからお父さんとずっと心配してたんだからね・・・」
「うん、ほんとごめん・・・ところであの人はどうしてる?」
「大和君のこと?あの人はもう諦めてるよ。相手の奥さんは捜索願いだしたみたいだけど。最近は電話もしてないし、かかってもこないよ」
「そうなんだ・・・捜索願いでてるんだね・・・まぁー大和はそういうひとだから・・・仕方ないよ」
心配なんてするはずがない。どうせ女と仲良くやっているんだろう。
「これからどうするの?ずっとそこで暮らすつもりなの?」
「まだわかんない・・・このままではいけないのは分かってるけど・・・もう少し考えさせて・・・」
「いいよ。無理に帰ってこなくても。ゆっくり考えてね」
「うん、ありがとう・・・あっ、電話したこと誰にも言わないで」
「誰にも言わないけど、相手の人のお父さんもお母さんも心配してるよ」
「拓斗も今日電話するって言ってたから」
「それならいいけど・・・」
「うん、じゃーまた電話するから・・・」
愛は、電話を切った。
隣では、拓斗が自分の携帯を眺めていた。
「どうだった?」
拓斗は、愛の電話が終わったのを確認し、心配そうに聞いてきた。
「うん・・・心配してた・・・ほんと電話してよかったよ・・・声聞けてちょっと安心できた」
「それはよかったよ。やっぱり親だけは心配かけたらだめだよな」
「うん・・・拓斗のほうはどうだった?携帯見たんでしょ?」
「あー、恐ろしいぐらいメールきてるよ、あいつから・・・うちの親はメールできないからきてないけど、電話は毎日のように来てるよ。愛の旦那からも結構かかってきてるよ・・・恐いぐらいね」
拓斗も愛と同じく、携帯を見ながら身震いしているところだったのだ。
「大和からもかかってきてるんだ・・・ほんとごめんね・・・」
「愛が謝ることないよ。わかってたことだからね。とにかく俺も電話してみるよ」
「うん・・・そうしてあげて。きっと心配してると思うから」
拓斗は携帯を手に取り、早速電話することにしたのだった。




