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第4話

 朝が来るたびに絶望するのはいつものことだ。

 まず目が覚めてしまったこと。

 そして、その目を開けた先に何ひとつ慰めのない現実がならんでいること。

 三つ目、これが一番重要なことだ。

 今日も死ねなかったという事実。

 僕は眠る時、もう目覚めないことを祈りながら目を閉じる。

 癖みたいなものだ。

 眠るように死ねたらどれだけ楽だろう。

 僕にとっての幸せとは、苦痛なく死ねるということ。

 それ以外の幸福はないように思う。

 生きることそのものこそが苦痛だからだ。

 布団から出て学校に行くまでの全ての事柄が僕を少しずつ削っていく。

 日常はどうしてこうも重たいのだろう。

 普通のことを普通にできる人たちは、一体どうやって息をしているのか。

 僕は不思議でならない。

 教室には人の数だけ音があった。笑い声、鉛筆の走る音、机をひっかく爪の音。

 だけど僕の周りには、そういう音があまり近づいてこなかった。

 僕が壁をつくっているのかもしれない。

 あるいは、気づかれないくらい存在が薄いだけかもしれない。

 たぶん後者な気がする。

 授業は流れていく。

 ノートに意味のない文字が並べられていくたびに、自分の存在も並列化されていく気がした。

 朝が始まって、昼が来て、夕方が来る。

 それだけで一日が終わる。

 「・・・次、いつ死のうか」

 教科書の隅にそう書いてみた。

 誰にも見られないようにシャーペンで小さく。

 「死にたい」という言葉は、もう日常の一部になってしまっていた。

 叫びでもないし、絶望でもない。

 ただ疲れたと同じくらい自然な響きで、心の底からゆっくりと浮かんで上がってくる。

 本当に死にたいのか。これまで何度も自分に問いた。

 本当に死にたいわけじゃないのかもしれない。

 でも、生きている意味を探していると、いつもその問いに戻ってしまう。

 まるで、死ぬことが目的地のようだった。

 意味のないことが、まるで世界を形成すると言った彼女。

果たしてそれは、本当に正しいのだろうか。

 

 放課後のチャイムが鳴った瞬間、教室は生き返ったみたいにざわつき出す。

 机を寄せて話し始めるグループ、廊下に飛び出す音、椅子を引く音。

 僕はその真ん中にいながら、どこか別の場所にいるようだった。

 「でさ、今日はどこ行く?」

 「え、またカラオケ」

 「ちょ、男子組が金ないとか言うからじゃん」

 斜め前の四人組が笑いながら話している。

 女子二人と、男子二人。

 まぶしいほど楽しそうな日常の景色。

 僕はゆっくりと教科書をしまいながら、誰にも気づかれないように立ち去るタイミングを見計らっていた。

 「・・・あ、やっべ、今日俺日直だった!」

 「なにそれ?今さら?」

 「いや、中原のプリントとか頼まれてたんだった。病院行って渡すやつ」

 そんな会話を耳の端で聞きつつ、「中原って誰だっけ?」と心の中で呟く。

 たしか、野球部の足を怪我して休んでるやつ・・・

 それくらいの情報しか持ちあわせていなかった。

 当たり前だ。話したことがないんだから。

 僕はいつも通り、誰にも呼ばれず、誰も待っていないカバンを持って立ち上がった。

 教室から出ようとした。

 「・・・あ、如月くん、だよね?」

 ふいに名前を呼ばれて顔を上げる。

 声をかけてきたのは、談笑グループの男子。

 申し訳ないが、名前は出てこない。

 「あのさ、悪いんだけど、中原のとこ行ってもらえたりしない?」

 僕は、思わぬ出来後に口を開くことができなかった。

 「いや、今ちょうど残ってたし・・・あ、これプリントと課題のプリントなんだけど・・・いい?」

 「あ、う、うん」

 差し出された紙束を、反射的に受け取る。

 断ったあとに流れる空気や、気まずい沈黙を想像したら自然と体が動いていた。

 「ありがとう、マジ助かるわ!」

 彼は顔の前で両手をこすりあわせた。

 僕はただ頷き、男子はそのまま仲間の輪の中に戻っていった。

 こういうときは、断って気まずくなるより、すんなり引き受けた方がずっと楽だ。

 僕さえ受け入れれば全て平和にすむ。

 彼らは何の後腐れなく気持ちよく遊びに行けるし、僕は僕で、「ちょっとだけ役に立った」みたいな顔ができる。

 「断れない人」は便利なんだろう。

 嫌われる勇気なんてない。

 好かれたいとも思わないけど、嫌われるのはもっと面倒だ。

 空気みたいに存在していればいい。そうやってやり過ごしてきた。

 僕のことなんて誰もちゃんとみていない。

 仕方のないことだ。

 人にはそれぞれ役割というものがある。

 気乗りしないまま、だけど顔には出さず、教室を後にする。

 校舎を出る足音が夕暮れの空気に吸い込まれていく。

 頼まれた荷物が少しだけ重く感じたのは、きっと気のせいじゃない。

 

 外に出て空気に触れる。学校でため込んだものを深いため息によって吐き出した。

 気がつけば五月になっていた。

 僕は、制服の袖を握り直しながら、坂道を登っていく。

 白くふくらんだ封筒の中には『中原金之助』の課題プリント。

 病院の名前は、スマホに送られてきたメールに書かれていた。

 その送り主の名前はもう忘れた。

 既読をつけたまま、それっきり。

 覚える必要も義理もないだろう。

 「中原・・・金之助・・・」

 口に出してみると、なんだか不思議な響きだった。

 クラスで見かけたことはあるけど、一度も目を合わせたことはない。

 野球部。

 きっと、日焼けして、声がでかくて、周りに友達がいて。

 たぶん、僕とは住む世界が違う。

 僕がこんなふうに彼のために歩いているなんて想像すらしていないだろう。

 というか、そもそも僕のことなんて知らないんじゃないか。

 病院の入り口に着いたとき、足が止まった。

 見舞いなんていつぶりだろう。

 思い出してみると、祖母が入院していた小さな病院以来だ。

 受付で部屋番号を聞いて、廊下を歩く。

 消毒液のにおいが鼻の奥をつんと刺す。

 ドアの前に立ち、ノックをした。

 コンコン。

 中から「どうぞ」と男の声が返る。

 ゆっくりスライド式の扉を開けると、病室の中にはギプスを巻いた右足をベッドに乗せた男子生徒がいた。

 金之助だった。

 漫画を片手にイヤホンで何かを聴いていた。

 僕に気づくと「誰?」と言いたげな、少し困ったような顔をした。

 「如月。クラスの・・・同じクラスのやつにプリント頼まれて」

 僕は問われる前に自分から名乗った。

 「あー!あの、あいつら?まじで?はは、わりーな。ありがとな」

 笑いながら、彼はベッドから身を起こす。

 その動きに無駄がなくて、なんとなく運動部だなと思った。

 僕は持っていた封筒を、彼に渡す。

 「うわ、分厚・・・」

 彼はそう言うと、封筒を棚の上に置いた。

 ぼーっと見ていると、彼は視線に気づいて、頭を搔きながら二ッと歯を出して笑った。

 案外、気さくな奴みたいだ。

 「そういえば、俺のこと・・・知ってる?」

 唐突に彼が尋ねてきた。

 「名前くらいは」

 僕は正直に答えた。

 「そっか。如月くんだったっけ。よろしくな。あ、いや。ありがとな!わざわざ」

 くん付けで呼ばれたことに少し驚いて、言葉がすぐに出てこなかった。

 「ん?どうしたん?」

 「いや、なんか意外と普通だなって」

 「おいおい、どんなイメージだったんだよ!」

 そう言って彼は笑った。

 その笑い声は大きくもなければ軽薄でもなかった。

 ただ部屋の中の空気を柔らかくした。

 「てか、如月くんって普段なにしてんの?趣味とかさ」

 僕は未だ目を合わせられないまま、「絵、描いたり・・・するけど」と言った。

 「まじ?絵描けるん?すげぇ。俺、絵とかさっぱりだわ。なんか描いてみとか言われても棒人間しか描けねぇ」

 「それは絵のうちに入らないんじゃ」

 僕は少し口角を上げて言った。

 「それな!自分でも思うー!」

 彼は僕の言葉を否定しなかった。笑いながら受け止めて、なんでもないように返してきた。

 まるで彼が得意とするキャッチボールのようだ。

 僕はキャッチして投げ返すので精一杯。

 きっとフォームは目も当てられないほどだ。

 彼は、笑うと意外と目が細くなって、なんだか子どもみたいだった。

 「でもなんかいいな。そうやって自分の世界あるのって。俺基本どこ行ってもうるさいやつって言われて終わりだからさ。まあ、実際うるさいんだけどさ」

 「うん、ちょっと思った」

 「うわ、ストレート!でも嫌いじゃないぞ、そういうの」

 会話はぎこちなかったけれど、不思議と嫌な感じはしなかった。

 僕は四階にある病室の窓から武甲山(秩父で有名な山)を眺めながら、しばらく彼と話をした。

 途中、お見舞いでもらったというクッキーを差し出された。

 仲良く食べながら話す会話はやっぱり弾んでいるとは言えなかった。

 「あ、そうだ」

 帰り際、彼は少しだけ恥ずかしそうな顔をして言った。

 「また来てくれよ。別に来れなくても全然いいけど。ほら、俺って案外寂しがり屋なんだよね。見た目クソ元気だけど」

 僕はあまり間をあけず、「約束できないけど、気が向いたら」と答えた。

 しばらく友達がいない僕にとって、なんだかこの感じが久しぶりで背中がむず痒かった。

 「おっ、じゃ、その気が向いたらに賭けとく!」

 表情が晴れ渡り親指を立てた。

 「そういや、俺の名前ちゃんと覚えた?」

 僕が病室から出ようとした時、背後から声がかかった。

 僕は振り返り「・・・たぶん」と言った。

 「おいおい、たのむぜ。金之助。中原金之助な。ちゃんと『こころ』にしまっておけよ!」

 彼、金之助は、『こころ』の部分を強調した。

 そんなジョークに肩を揺らしながら一人でくすくすと笑っている。

 「じゃ、またな、画伯!」

 僕は控えめに手をあげ、静かに病室を出た。

 人が幸福になるか、ならないか、それはそばにいる人のちょっとした言葉だったりするのかもしれない。

 病院を背に歩きながら、そんなことを思った。

 

 その週の土曜日。

 週末は基本的に家にいる。

 僕は根っからのインドアだ。

 だから今日も僕は僕の普通に則って自分の部屋に引きこもり、音楽を聴いたり、絵を描いたりして過ごしていた。

 お昼を少し過ぎたところで自室を出て、近くのコンビニで菓子パンを買った。

 家のリビングでテレビを見ながら胃を満たしていると、スマホが震えた。

 『やっほ!今何してる?』

 メールの相手は花咲月歌だ。

 『テレビ見てる』

 『そうなんだ!ってことは暇ってことだ!』

 『いいえ』

 『最近、映画館できたじゃん?私、見たい映画あるんだよね‼』

 そういえば最近、秩父で一番大きいショッピング施設の一角に小さい映画館ができた。

 ド田舎に映画館ができたことはそれなりに話題になっている。

 学校でも映画館の話で騒いでいるのを聞いたことがあった。

 『お一人でどうぞ』

 僕はそこまで映画に興味がない。

 『じゃ、十五時に駅前で!』

 すぐに時間と場所が送られてくる。

 彼女の元には、まるで違う言葉が届いているのではないか?と疑ってしまうほど嚙み合わないやりとり。

 しかし僕は、十四時を少し過ぎたあたりで出かける準備を始めた。

 そして時間に間に合うように家をでた。

 

 映画館の入り口には、手書きの看板と丸っこい電球がぶらさがっていた。

 チェーンの映画館にはない空気感がそこにはあった。

 看板には『本日のおすすめ。夏の断片』と書かれている。

 聞いたことも見たこともない、全く話題になっていない作品。

 人気のない作品を押すあたりが田舎くさくて笑ってしまう。

 「いいねぇ!この感じ!秩父に合ってる!」

 どうやら美的価値観も彼女とは大きく異なるようだ。

 ちなみに、スクリーンは全部で三つしかない。

 大、中、小。

 話題作やヒット作なんかを一番大きいシアターで上映。

 そこそこの作品を真ん中のサイズで上映。

 話題にもなっていない、今日見る作品は一番小さいシアターで上映するらしい。

 「ねぇ。私、ジュース買ってくる!あとチュロスも」

 チケットカウンターで並んでいると、彼女が小声で言った。

 彼女は列から離れ、売店の方へ走っていく。

 僕は受付でチケットを二枚購入して、ピスタチオグリーンの趣味の良いソファーに座って彼女を待った。

 戻ってきた彼女の手には、ストロー付きのジュースと、シュガーがたっぷりまぶされたチュロスが二本。

 一本を僕に差し出し、彼女はにこっと笑った。

 「おやつは共有!」

 僕は戸惑いながらも受け取って、ありがとうと小さくお礼を言った。

 やがて上映のアナウンスがあり、僕と彼女は腰をあげた。

 チケットを係の人に見せて中に入る。

 ホールは噂通り小さく、その大きさは教室二つ分ほどだった。

 お客さんも少なく、老夫婦と育ちの良さそうな子どもと、そのお母さんだけだった。

 スクリーンには、まだ映画が始まる前の予告が流れている。

 心なしか都会の映画館よりも音量が小さい。

 彼女は僕の隣で足を小さくぶらぶらさせて、天井を見上げている。

 「私、始まる前のこの感じが好き。静かでそわそわする感じ」

 彼女はしばらく迷惑にならない程度にじたばたしていたが、シアター内が暗くなると静かになった。

 観たのは、静穏な恋愛映画だった。

 ゆったりとした展開で、セリフも少ない。

 画面には海辺の風景と二人の影と悲哀な音楽が流れていた。

 終盤、恋人を亡くした主人公が白い骨の欠片(かけら)を瓶に詰めて、波打ち際から静かに流す場面があった。

 妙にそのシーンが印象的で、エンドロールが流れる中も、僕の頭の中では、そのシーンが、まるで傷ついたレコードのように繰り返し流れていた。

 上映が終わり、映画館を出る。

 急なオレンジ色の光に、目がちかちかした。

 彼女の提案で一階のカフェに立ち寄ることにした。

 彼女が席を見つけている間、僕が飲み物を買いに行くことにした。

 二人分のドリンクをトレイに載せて、彼女を見つける。

 彼女はテーブルで日記にペンを走らせていた。

 この光景を目にするのは、確か二度目だ。

 「お、ありがとう」

 向かい側に座る。

 「日記が趣味なの?」

 「まぁね。でも毎日書いてるわけじゃなないよ。なにか思ったときとか、吐き出したいときにこの日記に色々書くの」

 「それは面白いの?」

 「面白いよ!中学生くらいから、この日記に色々書いてて、今読み返してみたりすると意外と面白い!あー私この時、こんなこと思ってたんだ~とかさ」

 しばらく集中してから彼女は日記を閉じて、鞄にしまって、抹茶ラテを一口飲んだ。

 「ところで映画どうだった?」

 「んー。僕は特に・・・強いて言えば、最後の海のシーンは印象的だったかな」

 「あー。あそこね。わたしも!でも私泣いちゃった」

 「なんで?」

 「わかんないけど、エンドロールで」

 「涙脆いんだね」

 「んなことないよ。好きな人の骨を海に流すなんて切ないじゃん?」

 「でも、なんで流したんだろう?」

 「きっと、忘れるためだよ」

 彼女は少し、声のトーンを落として言った。

 「忘れるため?」

 「そう・・・如月くんは地球五分前仮説って知ってる?」

 「聞いたことくらいは。たしか地球は五分前にできたっていう仮説でしょ?」

 「うんうん。つまり、過去を証明することは誰にもできない。過去とか記憶とかってそれくらい儚くて、脆いもんなんだよ」

 「それが骨を流すことと、なにか関係があるの?」

 「きっと主人公は新しい彼女ができたんだよ。それで今を生きることに決めた。今までもそうしてきたように。死んだ彼女とだって、ずっと今を生きていたわけでしょ?」

 「なるほど」

 納得すると彼女は満足げに微笑んだ。

 「海に行ってみたいなぁ」

 ストローをいじりながら、窓の外を眺めながら彼女が呟いた。

 「私も最後はあんな風に海に流してもらいたいな」

 「もしかして、アクション映画を観た後、電柱とか蹴飛ばすタイプ?」

 「違うよ!そんなんじゃない。私は本気!」

 「じゃ、もうすぐ死ぬの?」

 いつもの調子でおどけて返すと思っていたのだが、彼女はしんみりした顔になった。

 「死にはしないよ」

 ゆっくり噛みしめるように、そっと言葉をテーブルに置いた。

 僕は気まずくなって話題を違う方向に変えることにした。

 「でも、海って遠くない?」

 秩父には、山と川はあるが海という代物はこの街にはない。

 あと、彼女が大好きな星とか。あるとすればそんなもんだ。

 「うん。でも、たまにはさ、遠いところもいいかなって」

 彼女の声は、明るさの裏にどこか空っぽな響きを持っていた。

 さっきのことを引きずっているのだろうか。

 「なるほど・・・僕のおじいちゃん家が海の近くだけど」

 間を埋めるように、気がつけばそんなことを言っていた。

 彼女がとびっきりの笑顔で、こちらを向いた。

 どうやら彼女を喜ばせてしまったらしい。

 「え!そうなの!」

 「うん、おじいちゃんっ子だったから昔よく行ってたんだ」

 親が放任するために、兄弟の真ん中がおじいちゃん、おばあちゃんっ子になるのはよくある話だ。

 「じゃ、今度案内してよ!」

 僕は彼女の気迫に圧倒されながら、引き気味に「あ、うん、まぁ今度」と言った。

 曖昧に返しながらも、その「今度」が本当に来る気がした。

 なんなら来てほしい、と気まぐれに思った。

 彼女は上機嫌になり、いつもの調子に戻って鼻歌を歌った。

 テーブルの上、飲みかけの抹茶ラテのグラスに彼女の鼻歌がぼんやりと響いて、騒がしい店内に溶けていった。

 「てか、おじいちゃんっ子なんだね。意外だ」

 「真ん中っ子あるあるな気もするけど・・・」

 「えーそうかなぁ?でも私もおばあちゃんっ子だよ!おばあちゃん大好き!でも兄弟いいなぁ」

 「僕は逆に一人っ子に憧れる」

 「ないものねだりだねぇ」

 「兄貴とは比べられるし。あいつは何でもできるから。僕とはまるで違う・・・でもそれがきっと正解なんだろうね」

 「正解って誰が決めたの?」

 「わかんないけど。世間じゃない?」

 「それはあれ、えーと、固定概念ってやつだよ!」

 「でも、みんな固定概念のもと生きているじゃない?」

 「んなことないよ!少なくとも私は違うよ!固定概念なんて垢みたいなもんだよ!洗い流しちゃえ!」

 腕組みをして鼻を鳴らす彼女。

 死にたいという気持ちすら洗い流せていない僕が、果たして洗い流せるのだろうか。

 「大丈夫!きっと何もかも上手くいくよ!私がいるんだから」

 たいそうな驕りを言って、ちびちびと抹茶ラテを飲んだ。

 彼女といることで僕の未来は明るくなっているのだろうか。

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