表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味な能力者Kの日常 ~地味すぎて誰も気づかない英雄談~  作者: 空野 翔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/9

第5話 電車内 ~座席の温もりと靴紐の静かな戦い~

朝8時22分。

藤倉駅発の特急列車。平日朝の通勤ラッシュで、車内はぎゅうぎゅう詰め。

Kはいつものようにつり革に掴まり、揺れに合わせて体を微調整しながら周囲を静かに観察している。能力は自動で起動中。


- 空いた座席の温もり残量を5段階で感知(能力No.82)

→ 3列目の窓側、残温レベル3.4。座ったらまだ温かいが、座席シートにシワが残る可能性27%

- 隣の人のカバンの重さを±80gで推定(能力No.54)

→ 約4.2kg。ノートPC+書類+水筒入り

- つり革の揺れを0.2秒早く予測(能力No.71)

→ 次に大きく揺れるのは12秒後。体を左に寄せておく


突然、隣に立っていた女子高生が「うわっ」と小さく声を上げる。

靴紐がほどけ、電車がカーブに差し掛かった拍子に踏みそうになったのだ。

Kは俯きながら、しかしはっきりした声で言う。

「……あの、靴紐……ほどけてます」

女子高生(制服姿、たぶん17歳くらい)は慌てて足元を見る。

「あ! ありがとうございます!」

彼女は急いでしゃがみ込み、靴紐を結び直す。

周囲はラッシュで誰も気づいていない。

スマホを見ている人、目を閉じている人ばかり。


女子高生(結び終わって立ち上がり、小声で)

「……なんか今日、助けてもらった気がする。いつもなら転んでたかも……」

Kはいつものトーンで返す。

「……いえ、別に……たまたま目に入っただけなんで」


女子高生は小さく頭を下げ、友達の待つほうへ移動する。

友達の一人が小声で囁くのが聞こえた。

友達「え、なんか今のお兄さん、地味に優しくない?」

女子高生「うん……でも言わないでいてくれたらもっとカッコよかったかも(笑)」

Kはそれを聞きながらつり革を握り直す。

(心の声:転倒リスク62%→4%……靴紐再緩み予測時間+18分……また地味に人類を守った……「カッコいい」は求めていない。地味でいい)


電車が次の駅に着く。

Kは誰にも気づかれず、静かに降りる準備をする。

車内の揺れは、今日も少しだけ優しく感じられた。


―続く―


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ