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地味な能力者Kの日常 ~地味すぎて誰も気づかない英雄談~  作者: 空野 翔


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4/9

第3話 スーパーでの買い物 ~カゴとレジ袋の地味な芸術~

夕方5時48分。

いつもの地元スーパー藤倉店。

土曜日のこの時間は、ちょうど主婦層と学生が混ざる混雑のピーク。Kはカゴを片手に野菜売り場をゆっくり回っている。

今日は夕飯の材料を最小限で揃える日。

牛乳パック1本、納豆2パック、木綿豆腐1丁、冷凍餃子1袋、卵6個パック。

これだけ買えば、明日の朝まで何とかなる計算だ。

カゴに商品を入れるたび、Kの能力は無意識に発動する。


まず、カゴ内の商品総重量を±30gで即座に推定(能力No.51)。

「牛乳980g、納豆×2で220g、豆腐300g、餃子450g、卵360g……合計2310g。エコバッグの耐荷重は3kgだから、まだ余裕0.69kg」

次にレジ袋の残り容量をリットル単位で視覚化(能力No.109)。

今日のレジ袋は厚さ0.02mmの標準タイプで、容量約15L。

最適配置を考えながら、商品の形を脳内で3D回転させる(能力No.99)。

さらに値札のフォントサイズを0.1mm単位で把握(能力No.112)。

納豆の値札が少しずれていることに気づくが、修正する権限はないのでスルー。


レジに並ぶ。

前には主婦2人、後ろにサラリーマン1人。

Kの順番が来て店員のお姉さん(20代後半、名札に「山田」とある)が笑顔で商品をスキャンし始める。

Kは小さく声を出す。

「……あの、もしよかったら……重いものは下に、牛乳は横に倒さない方が……豆腐は一番上に、納豆は横に並べて」

山田さん「あ、はい! ありがとうございます~。お客様、いつも細かいところまで気遣ってくださるんですね」

K「……いえ、別に……たまたま思いついただけです」


山田さんは手際よく袋詰めを始める。

Kの提案通り重い牛乳を底に、豆腐を一番上に、納豆と卵を横に並べ、冷凍餃子を隙間にぴったり収める。

結果、袋は驚くほど美しくバランスよく詰まった。

持ち手部分にほとんど負荷がかからず、底が抜ける心配もゼロ。

山田さん「……わ、今日なんかすごい綺麗に詰まった!いつもより持ちやすそうですよ~」

Kは俯き加減で袋を受け取りながら、

「……はぁ、たまたまです」

山田さん「いやいや、ほんと助かりました!お客様みたいな人がいると、袋詰めも楽しくなるんですよね」

Kは会計を済ませて店を出る。外はもう薄暗くなっていた。

エコバッグを肩にかけながら、Kは小さく息を吐く。

(心の声:袋破損リスク0.02%……持ち運び時の疲労度-18.4%……今日も地味に、1人の主婦の腕の負担を軽くした……でも「楽しくなる」はちょっと大げさかな……)


スーパーの自動ドアが静かに閉まる音を背に、Kは夜の街へ歩き出す。

袋の中身は今日も完璧に安定していた。


―続く―


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