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地味な能力者Kの日常 ~地味すぎて誰も気づかない英雄談~  作者: 空野 翔


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2/9

第1話 コンビニ深夜バイト ~お釣りの静かな革命~

深夜2時37分。

店の蛍光灯が微かにジーっと鳴いている。

客は一人だけ。40代半ばくらいのサラリーマン風の男性が、

缶チューハイ(レモン)2本と、タバコ(マルボロ・メンソール)、

そして500円分のガム(全部レモン味)を持ってレジカウンターに立った。

男性「これと……あ、ガムは全部レモンで頼むわ」

Kは無言で商品をスキャンする。

バーコードのピッという音が、静かな店内に小さく響く。

この瞬間Kの頭の中では能力が静かに、しかしフル回転で動き始める。


まず、レジ袋の在庫を瞬時に確認。

今日入荷した新品の袋は「開封難易度1.2」と評価される一番左の束(能力No.2)。

迷わずそれを選ぶ。

次に、男性が差し出した1000円札。

Kは受け取った瞬間に、紙幣の向きを自動で揃える(能力No.17)。

さらに折り目の深さを0.01mm単位で感知。

「この札、昨日誰かが三つ折りにしてポケットに入れてたんだな……」と脳内メモを取る(能力No.89)。

お釣りは490円。Kは小銭を1円単位で最適配置する(能力No.4)。

500円玉は使わず、100円玉4枚、50円玉1枚、10円玉4枚を、

厚みのバランスが最も良く、手のひらに落ちたときに「ピシッ」と揃う順番に並べる。

さらに、ガムの包み紙は右利きが99.7%の確率で開けやすい方向に回転させておく(能力No.78)。


男性「お釣り……おお?」

コインが手のひらに落ちた瞬間、まるで磁石で引き寄せられたように整列した。

男性は一瞬目を丸くして、自分の手のひらを見つめる。


男性「……なんか今日のお釣り、異常に気持ちいいな。コインが勝手に綺麗に並んでる気がするわ(笑)。人生の乱れが一瞬だけ整った気分だよ」

Kは俯き加減でいつものトーンで返す。

「……はぁ、まぁ普通に渡しただけですけど」


男性は笑いながらタバコの箱をポケットにしまう。

「いやいや、兄ちゃん、なんか……ありがとな。今日一日疲れてたけど、最後にちょっとだけ救われたわ」

男性が店を出て行った後、Kはレジカウンターの奥で小さく息を吐く。

(心の声:……1.8秒短縮+整列満足度+12.4%……今日も地味に人類を救った。でも「人生の乱れが整った」はちょっと大げさだな……)


蛍光灯のジーという音が再び店内に戻る。

Kは次の客を待つ間、静かに次の能力発動のシミュレーションを始める。

地味な夜はまだ終わらない。


―続く―


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