プロローグ
能力者K。本名・加藤健太、29歳。職業はコンビニ夜勤とイベント設営のアルバイトを掛け持ちする、典型的なフリーター。
見た目はごく普通。身長170cm弱、やや猫背で眼鏡の奥の目はいつも少し眠そう。
特別な過去も、壮絶な覚醒エピソードもない。
ただ、ある朝目覚めたら頭の中に「120個以上の超地味能力」がインストールされていただけだ。
能力のリストは本人がExcelで管理している(もちろんパスワード付き)。
内容はどれもこれも絶望的に地味。
例を挙げると:
- レジ袋の開きやすさを5段階で瞬時に評価
- 靴紐の緩み具合を角度単位で感知
- 自動販売機の在庫を触れずに±1本で予測
- 暗闇で靴下の左右を判別
- お釣りの小銭を最適配置
Etc.
どれも「あったらちょっと便利かも?」というレベルで、
「なくても人類は滅びない」どころか「なくても誰も困らない」ものばかり。
派手な炎上能力も、瞬間移動も、予知夢もない。
ただ日常の隅っこの隅っこで、0.0001秒単位の小さな不便をこっそり解消するだけ。
本人はこれを「人類への地味貢献」と呼んでいる。
心の中でだけ、毎日小さなドヤ顔をしている。 でも表に出すことは絶対にない。
「すごいと思われたら面倒くさい」「変な目で見られるのも嫌だ」
だから能力を使うときはいつも俯き加減で、
「……別に、普通にやっただけですけど」と呟くのが癖になっている。
周囲の反応はいつも「…………へぇ」か「ん?」程度。
それでいい、とKは思う。
いや、それでいいはずだ。
地味に生きる。
地味に助ける。
地味に満足する。
それが能力者Kという存在の、究極の生き様だった。
―続く―




