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6話 小さな派閥

 十四人についてはすぐに決まったが、残りの十六人が問題だった。

 前衛は北、後衛は南と別れてくれればいいのだが、まず自分の役割を分かっていない奴が多い。

 それに加えて、戦いたくない人もいる。当たり前のことだ。


 俺が居る東側は女の子の術士が置けないこともあって色々と調整が必要なのに、それもうまくいかない。

 南だってもしものために前衛を置いておきたい。

 それぞれの思惑が言葉と不満になって会議室に満ちていくのを俺は感じていた。


 それでも最終的には決め切り、王城での食事会が始まる。

 纏っていた装備を制服に、ホールで行われる立食形式の食事。


 フレイバー卿の言う通り、食料は十分にあるようだった。


 ◇


 食事会の最中、ジルヴァール王と四侯爵は別室で話し合っていた。

 場所はというと、さっきまで生徒がいた会議室である。


「どうだった。……はっきりいってこの国の未来がかかってる」

「それは分かっております。領地は既に無く、城壁の外にいる領民も多いですから」


 王の言葉に最初に答えたのは北の侯爵。フレイバー卿だった。荒事となれば真っ先にぶつかる彼の発言力は高い。


「『十四』、『十六』という数字が鍵のようでしたな。それと……たしか『職業』と」

「そういえば二つに別れておったな。それが『十四』と『十六』か。明確に別れる理由が分かった者は?」

「おそらくですが……」


 手をあげたのは未だ若い女性だった。

 十五歳ほどの彼女は東の侯爵、ブレリア・スカイハットである。


「理解度の差ではないかと考えております」

「理解度、というと」

「『十四』は自らの『職業』がはっきり分かっておりました。その戦い方、得意な立ち位置もです」

「最初に動けていたのも『十四』の方だったか。上手く分けたことは報告が来ていたな……、ブレリアの所は前衛が多かったか」

「『十四』から騎士を三人ほど」

「うむうむ、良いことだ」


 ジルヴァール王は深く頷いた。

 ブレリア卿は召喚前に大規模な行軍を行なっており、その際に元当主や彼女の兄を失っていたため、ジルヴァール王は不安に思っていたのだ。

 だがそれも当面は大丈夫そうである。


「では注意すべき者はどうだ。魔女殺しの騎士と暗殺者だけだったか?」

「『十六』の方にも情報収集に長けた者が居たかと。職業は言っておりませんでしたが」

「その者はどこに行った。王城なら監視もしやすいが」

「私のところですな。『十六』の前衛の殆どは北以外に集まっとりますし、小さいながらに派閥にも似たものがあるようでしたから」


 南の侯爵、リブート・ラムアは熟年の男性。戦線を引いた武人である。四侯爵の中で唯一、未だに領地を経営する人物だ。


「そこは上手くコントロールするんだ。貴重な情報は紙に記し、読み終われば燃やすように徹底しよう。他の侯爵もだ。これから王国は復興していかねばならん」

「承知しております、王よ」


 情報の共有は密に。ここで終わるわけにはいかぬと、ジルヴァール王が吹き消した蝋燭の煙が会議室に溶けて消えていった。


 ◇


 食事会は大きな催しもなく進んでいった。

 ジルヴァール王と四侯爵の姿が見えないのは相談でもしているんだろうし、やることといえば俺たちを受け入れてくれる貴族家と挨拶をするぐらいだった。

 四侯爵から土地を預かり、治めていた貴族たちの家にお邪魔することになっている。前衛が街の外周より。後衛が中心地よりといった具合だ。


 未だに俺を受け入れてくれる言う貴族から声が掛からないのは不安だが、東に居る貴族を知らないために、こちらから探すことが出来ないでいた。


 元は大きい国だったのか知らないが、会場にはいかんせん貴族の数が多い。一人に一家宛がってもお釣りがくる程度には居るんじゃないだろうか。


 話しかけられることもなくぼーっとしていた俺は、田島さんに手招きされて吸い寄せられるように彼女の元まで歩いていった。


「どうかした?」

「影山くんがクラス全員の『職業』聞いてきてくれたから纏めたんだよね」

「おー、でも紙は?ノートとか持ってこれないはずだけど」


 俺の質問に彼女はわざとらしく笑い、指先で宙をなぞった。


 ──田島 陽花里の『戦術C』が発動しました。

 田島 陽花里のパーティー14人に情報が共有されます。


 目の前に現れた文字にはクラス全員の『職業』が書かれていた。


「メモ帳じゃん」

「そう、メモ帳。スキルも載せたいけど、隠したい人もいるじゃん?だから確認したいんだよね、松浦くんの成り行きで聞いちゃったし」

「あー。俺はいいよ、別に」

「あ、本当?助かるよ。十六人には勝ちたいんだよね。日輪くんの『職業』見た?」


『戦術』に記された日輪くんの職業は……『勇者』。


「私、勇者を殺すゲームしてたんだよね」


 歪んだ笑みを浮かべた田島さんが、俺の目には酷く蠱惑的に見えた。

 だからだろうか……つい口から言葉が漏れた。その時の俺はさぞかし気持ちの悪い笑みを浮かべていたんだろう。


「ちょうどいいおもちゃ森の中に隠したんだけど、どうかな。拷問でもしようかと思ってたんだけど」


 引かれるかも知れない。

 誰かに言われるかもしれない。


 それでも、出てしまったものは戻せない。


 田島さんは「今の松浦くん最っ高」と、俺の肩に拳を押し付けて笑ったのだ。


「その話、私にも噛ませてもらえません?」


 その声は唐突だった。慌てて振り向いた俺に、その女性はゆっくりと自己紹介を始める。


「はじめまして。ブレリア・スカイハットと申します。東の侯爵。そして、マツウラ殿を預かる者でございます」


 スカートの裾を摘んで優雅にかがんで見せた彼女は、何事も無かったかのように平常を保っていた。

 もう少し警戒しておけばよかったと、俺と田島さんは顔を見合わせ、ブレリア嬢の白い手を取った。


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