【ユレイシア貴族連合王国】再編(2)
―クァンリー城軍議室にて
「みんな、今日は集まってくれてありがとう」
「とんでもありません、アスカイ様」
サトルからの招集を受け、夕刻、軍議室に五人の人間が集まった。
クァンリー城主『アスカイ・サトル』
城主補佐『ガルグ・ディリップ』
クァンリー城大隊長『アスカイ・ヘイキチ』
クァンリー城衛兵隊長『ブラーミン・アクシェイ』
城主食客『レイ・ハオラン』
以上五名、現在のクァンリー城運営に特に大きく携わる要人達だ。
「城主様、今日はどのようなご用件でありますか?」
衛兵隊長アクシェイがまず口火を切った。
「うん、今日皆を呼んだのは他でもない。この城の今後についてだ」
「!」
その言葉に、ハオランを除く三人の表情が引き締まる。
「皆、知っての通り、この城は今、人の流入がかなり激しくなっている。あー……ごめん。これは僕たちのせいなんだけども……ともかく、軍への志望者数も、前年とは比較にならない規模だ。これ自体は大変有難いことなんだけども……」
「城下の人口増加について懸念があるようでしたら、こちらは問題ありません。私とレイで順次対応しています」
口ごもるサトルにディリップが、手元の資料を確認しながら答える。
「現在、南居住区の拡大工事を実施中です。進捗も滞りなく。問題は軍の方かと」
「ガルグ殿のおっしゃるとおり。こちらは人員の増加が激しくて、そろそろ訓練も管理も対応が難しくなってきています。我軍は指揮官の数が不足気味ですから。現在、ブラーミン殿に手伝ってもらっていますが、それも限界が近いかと」
他の人間の目があるためか、普段よりかしこまった口調でヘイキチが状況について説明する。
「月並な対応ではありますが、軍を任せられる指揮官が育ち切るまで、志望者の数を絞るしかないかと、某は思います」
「ブラーミンさんの言うことはもっともな事だけど、申し訳ない。実は今日ここに皆を集めたのは、それと逆のことを考えているからなんだ」
「それはつまり……城主様はさらなる軍拡をお望みということですか?」
「うん、そうだね」
四人の間に動揺が走る。
「何故です、アスカイ様。現状の兵力でも、この城の維持に問題はないはずですが」
「ガルグ。つまり、そうではない状況が近づいているかも、ということだ」
ディリップの発言に、即座にハオランが反論した。
「現在の我らが城主の立場を考えてみろ。さほど、難しい問題じゃないだろう」
「城主の立場……ああ、そういうことか」
「そうだ、ガルグ。現城主は所詮、城の簒奪者。領主や国から正式に派遣されてきた役人ではない。アスカイ様がいくら優秀でも、奴らが『城主が変わった?そうですか。いいですよ』と認めてくれる訳がない。こんなご時世だ。最悪、キストラより無能な城主を寄越してくる可能性もある」
「せっかく城主が変わったというのに、それは勘弁願いたいな……」
もうああいうのは懲り懲りだと、ディリップがうんざりした顔をする。
「僕たちは少々、悪目立ちをしてしまっている。人口の増加、都市の発展が著しい中、その城下のトップが領主や国の管理から外れた人間というのは、好ましいはずがない。叛意ありと思われて、討伐隊を差し向けられても、文句は言えないだろう」
「だから、戦力を増強が必要という訳ですか」
「勿論、本当に彼らとやり合うつもりはない。でも、最低でもやりあったら、お互い無事では済まないと、向こうに思わせられる程度の戦力がなければ、交渉の場にも立てないだろう」
「せっかく城主になったのに、もう死刑にされるのはね」とサトルが笑う。
その意見に、四人が黙って首を縦に振った。
「なるほど、城主様のお考えは分かりました。であれば、某に一つだけ、考えがあります」
「考え?」
「はい。『アイリシュ』と『グリシャ』の双翼に、この城へ戻ってきて貰うのです。そうすれば、指揮者の数を増やすことができます」
感想、批評、レビュー、ブクマ、評価、質問、待っています。
よろしくお願いいたします。




