【ユレイシア貴族連合王国】再編(3)
「『アイリシュ』と『グリシャ』?」
「『アイリシュ・ヴィッターマン』と『グリシャ・ヴェルマン』と申します。二名共に以前に、この城に仕えておりました」
聞き慣れない名前にサトルがディリップの方を見るが、ディリップも自分も分からないと首を横に振る。
「ガルグ殿が知らないのも無理はない。二人はガルグ殿が赴任してくる前に、前城主キストラに反発して、この城を去ったのだから」
「それはとても賢明な判断だな。期待できる」
ディリップの中で、二人の評価が上がったようだ。どうやらプラデーシュに反発という案件が、彼の琴線に触れたらしい。
「二人は祖父の代からこの城に仕える、優秀な将軍でした。アイリシュは戦において一度たりとも防衛線を超えられたことはなく、グリシャは騎馬隊を操らせたなら、あらゆる戦場で随一の機動力を発揮しました。通称『鉄壁のアイリシュ』と『神速のグリシャ』。二人そろって『クァンリーの双翼』と呼ばれていました。しかし、二人はなんというか……その……いわゆる頑固なところがありまして。駄目と思えば、城主の命令にすら逆らってしまう男でした」
「なるほど。それは確かに、キストラとの折り合いは最悪だったろうな。二人が城を去るのも分かる」
無茶な命令ばかりするプラデーシュと、無茶な命令に逆らう二人。口論になる様子が容易に想像でき、ディリップが苦笑する。
「ある日彼らは、この城を去りました。部下たちと共に。二人は部下に慕われていましたから、多くの者が彼らについていきました。今は、噂では近くの寺院をねぐらに生活しているとか」
「つまり、城主が変わったことを彼らに伝え、この城に戻ってきて貰おうというわけだな?」
「はい。しかし彼らは前言の通り、とても頑固な男たちです。彼ら自身が仕えたいと思う『何か』を今のクァンリー城に見出さない限り、帰ってきてはくれないでしょう」
「今戻ってきてくれるならば、部下共々かつての地位を約束する。というのはどうだろうか?」
サトルがアクシェイに提案する。
「難しいですね。彼らが金や地位で動く人間だったのなら、この城から去ったりはしなかったでしょうから」
「うーん……それは困ったな。いきなり、僕を信用しろ、と口で言っても信じてはくれないだろうし……」
サトルがハオランの方に目を向ける。
その視線に気がついたハオランは、静かに首を横に振った。
「申し訳ありません、アスカイ様。その二人がブラーミン殿の言う通りの男たちならば、今回私の出番はありません。私は損得勘定で動かない人間とは、相性が悪いのです。むしろ、彼らは私のような人間こそを嫌うでしょう」
「ならば、恐らく私も駄目でしょうね。その二人、どうにも文官では分が悪そうな気がします」
ハオランとディリップが、二人揃ってお手上げのポーズを取る。
「ふむ、となると……」
「父上」
サトルが目を向けるより先に、ヘイキチが手を上げた。
「私が参りましょう」
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