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【ユレイシア貴族連合王国】城主(20)

 ――クァンリー城城主執務室にて


「ガルグ・ディリップです」

「入れ」


 執務室の扉をノックし、ディリップが入室する。


「お友達への別れは済ませてきたか?」


 意地の悪い笑顔を浮かべて、机の向こうからプラデーシュがディリップに話しかける。


「はい。本人も全て覚悟していたようで、潔く罪を受け入れるそうです」

「フン、ようやく見どころを見せたか。それでいい。人間、最期の時ぐらいは見苦しいことをせず、心静かに受け入れるべきなのだ」

「おっしゃるとおりです」


 ディリップが恭しく頭を下げた。


「いいか、ガルグ。これはお前への罰でもある。友を失う苦しみで以って、今回の騒動を引き起こしたことに対する、お前の贖罪とする。わかるな?」

「はい。この度は大変申し訳ありませんでした」


 何が『わかる』のかさっぱり理解できないが、ディリップは大人しくプラデーシュの言うことを受け入れた。


「わかっているならば良い。城主として、いつまでも起きてし待ったことに固執していても、しようがないからな。それより問題は外の軍勢だ。一体どうするつもりなのだ?」

「問題ありません。先程、解決策を思いつきましたので。明日には事態は収拾するかと」

「本当か!?」

「はい、もちろんです」


 そのディリップの報告に、プラデーシュが笑顔になる。


「明日、私が彼らを説得いたします」

「ほう?あの商人に出来なかったことが、お前に出来ると?」

「はい。私には、彼にはない切り札がありますので」


 自信満々と言わんばかりに、ディリップが胸を張って答える。


「なんだか分からんが、随分と自信があるようだな」

「はい。全て私にお任せください。キストラ様も、今日はもうお疲れでしょう。後のことは全て私に任せて、今日はもうお休みになられてください」

「フン、お前にしてはなかなか気の利いた言葉だ。では、お言葉に甘えて今日は上がらせてもらおう」


 プラデーシュが立ち上がり、ディリップの脇を通り抜けて、退室しようとドアノブに手を掛ける。


「ああ、そうだ。忘れていた。ガルグ、お前の――あ?」


 プラデーシュの動きが止まった。


「……はい?」


 何故なら、自分の腹から銀色の刃が突き出ていたからだ。


「お呼びですか、キストラ様?」


 首だけを後ろの向けると、そこには笑顔で背中に短刀を突き刺している、ディリップがいた。


「ガ、ガルグ……き、さ、ま……!」


 ドンッと、プラデーシュが振り向きざまにディリップを突き飛ばした。


「チッ……急所を外したか」


 ディリップが後ろに仰け反り、背中に突き刺さった短刀が抜ける。


「だが、まぁいい。致命傷には違いない」


 同時に刃で塞がれていた傷口から、血が溢れ出した。


「初めは気が引けてたんだが……なんだ。実際にやってみたら、思った以上になんてことはないな」


 ディリップが血塗られた短刀を眺めながら、そんな事を呟く。


「お……のれ……。貴様、よくもこんな事を……」


 プラデーシュが傷口を手で押さえながら、ディリップを睨みつける。


「何故……何故、こんな馬鹿なことをする、ガルグ!?」

「何故?何故だって?クククッ……」


 プラデーシュのその言葉に、ディリップが我慢できずに笑い出した。


「クハハハ……!アーハッハッハ!!そんなのは決まってるだろうが、キストラ・プラデーシュ!」

「ガ、ガルグ……?」

「お前が、この期に及んで『何故?』なんてぬかす、致命的な阿呆だからだよ!」


 ディリップの豹変っぷりにプラデーシュが腹を刺されたことすら忘れて、呆然とする。


「お、お前……地下牢で……あの……男に何を吹き……込まれて……」


 大量出血から、意識が朦朧としだしたプラデーシュが、床に崩れ落ちる。


「阿呆が。他人ではなく、少しは自分の所業に目を向けてみたらどうだ?こうなることに、心当たりはあるだろうが」

「こ、こんな事をして……ただで済むと……」

「お決まりの台詞をどうもありがとう、キストラ。だが、お前が生きている方が、こっちはただじゃ済まないんだよ」


 ディリップが短刀をゆっくり振り上げ、心臓に狙いを定める。


「ま、待っ……」

「駄目ですよ、キストラ様。人間、最期の時ぐらいは見苦しいことをせず、心静かに受け入れるべきなのですから」

「……っ!?」


 そして、力いっぱい振り下ろした。


「た、助け……ガァッ!?」


 短刀がプラデーシュの心臓を貫いた。一瞬、その身体がビクリと仰け反るも、すぐに動かなくなる。

 横柄を極めた城主の、なんともあっけない最期であった。


「キストラ様、いままで大変お世話になりました。城の者一同、これからは心機一転、新しい城主様の下で頑張らせていただきますので、迷わずお逝きください」

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