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【ユレイシア貴族連合王国】城主(8)

「シュウ、彼らは何をしているんだ?」


 村内を見物している最中、ハオランが何やら見慣れぬ作業をしている男たちを指差した。

 彼らは地面を掘り、そしてそこに木で出来た四角い管を設置している。


「ああ、彼らは今新しい水道管を敷いているんです」

「水道管?」


「はい。地下を流れる人工の川、とでもいいましょうか。川から取水した水を、地中に埋めた木管を通して、村中に設置した井戸に送っています。普通の水路と違って、人通りの多い所でも交通の邪魔をすることなく、村中に水を届ける事ができるのが利点ですね。一応、普通の井戸もあるにはあるのですが、地下水脈の場所に依存する上、そもそもこの土地は水脈が乏しいみたいで。このような形になりました」


「な、なるほど……」

「最近は特に入村希望者が多いですからね。村の拡大に合わせて、水道の拡張工事もしているんです」

「北の賢者と大蛇殺しの雷鳴様様ですね」とユーハンが笑顔で語る。

「……レイ様?どうかされましたか?」


 話を聞いて、なにやら神妙な顔になったハオランに、ユーハンが首を傾げる。


「ああいや、私は職業柄、いろんな土地に行く。だから今まで多くの街を見てきた。川の周辺で発達した街はいくらでもあったし、町中に水路が流れる都市もいくつもあった。だけど、水路を地中に埋めるなんて事をしているのは、この村が始めてでね。色々、頭が追いつかないんだ」

「そうですね、私もこの村に来るまで、聞いたことがありませんでした。アスカイ先生は時たま、何処から仕入れたか分からない知識を披露する時があるんですよね。とても不思議なお方です」


 と、そんな感じでハオランとユーハンが他愛のないおしゃべりをしながら、村内の様子に一喜一憂し、やがて村の外れにまで足を運んだ。


「さぁ着きましたよ。ここが最後の見どころですかね」


 小さな丘の上、急に景色が開け、同時に何やら集団の声が聞こえてきた。


「さぁ見てください、きっと驚くと思いますよ」

「こ、これは……」


 ユーハンが腕を指した先にあったのは、渓谷の間で整備された巨大なグラウンドと、そこで手に槍を持ち戦闘訓練をしている男たちの集団だった。

 しかも個々がバラバラに訓練をしているわけではない。指揮官の指示に従って、しっかりと隊列を組んで行進している。


「なんということだ……」


 流石のハオランもこれには言葉を失った。


「今日、ここで訓練しているのは千人ぐらいですかね。どうです、凄いでしょう?」

「あ、あぁ……。凄いな……」


 これだけ大きな村なら、自警団のような何かしらの戦力は持っているだろうとはハオランも予想はしていた。


(たったの一年、しかも流浪者たちの流入だけでは、とてもこの規模の軍隊はつくれない。これはもう、周辺の村をまるごと併呑しながら成長している。そういうレベルだ)


 だが、ここまで大規模かつ本格的な軍隊を保持しているのは完全に想定外だった。


(なにがアスカイ『村』だ。これはもはや、一つのく――)

「――レイ様が、今一番見たかったものだと思うのですが。お気に召していただけたでしょうか?」

「……っ!?」


 いつの間にか、文字通り子供のように無邪気な笑顔を浮かべて、ユーハンがハオランの顔を覗き込んでいた。


「いいえ、見たかったのはレイ様ではなく、レイ様の依頼主ですかね?それとも、その後ろにいる、クァンリー城の城主様ですか?」


 その心まで見透かすかののような瞳に、ハオランは背中に薄ら寒いものを感じ、冷や汗を流す。


「君は……」

「ふふ、冗談ですよ。ただの子供の戯言です。ああ、そろそろ良い時間ですね。お屋敷に案内します」


 クルリとユーハンがハオランに背を向け、何事もなかったかのように来た道を戻っていく。


「……戯言、ねぇ」

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