第8話 研究所
馬車はゆっくりと研究所に向かって行った。馬車の中では珍しく母から話しかけられた。
「サクラ、住み込みで働くのは良いけど、これからは自分の事を自分で出来る?」
「出来る限り努力します」
「そう。何か困った事が有っても簡単には帰って来られないかもしれないけど頑張ってね。……貴方は女の子だしいつかは家を出るって思っていたけど、思っていたより早いわ」
「そうですね。でもまだ独立したわけでは有りませんので……」
「多分ね、貴女にお金がかからないとなると次の子を産む事になると思うの……そうなったら家には帰って来ない方が良いわ」
「そうですか……」
「貴族だから世継ぎの男の子が欲しいのよ……貴方に魔法の適性が見つかるまでは女の子を産んだことを責められたりもしたわ」
「生まれてくる子供は選べないのに……」
「貴族の家には貴族の責任が有るのよ……」
「……もし私の弟が出来たら、私の立場はどうなりますか?」
「家を継ぐための結婚が必要なくなるから少し気楽になると思うわ。裕福な商人とでも結婚した方が良い暮らしが出来そうね」
「そうですか。……男を産んだらお母さまの立場も良くなりますか?」
「そうね」
「では弟が出来るように祈っておきます」
「ありがとう」
そんな話をしていたら研究所が見えて来た。父は隣で母との会話を聞いていたのに何も言ってはこなかった。
クフェア先生の「もうすぐ着きます」の声に父が反応して、先に見えて来た建物を指さして私に聞いて来た
「あれが研究所か?」
「そうです」
「大きいな……税金を無駄に使って……でもまあそれでうちにも収入が増えるのだから悪くは無いか」
私が稼いだお金は自分の物だと思っているみたいだった。
研究所に到着したら、セアノサスさんが出て来て、両親に挨拶をしてから研究所の中を両親に案内してくれた。
「間違いなく国の魔法の研究所みたいだな……働いている人数も多いし兵士も沢山いて治安は良さそうだし……あとはサクラの給金が少し安いのが気になるが、まあまだ子供だし仕方ないか」
「子供なので労働時間は短めになってますから、成人程の給金は出せません」
「一応納得はしたのでここでサクラには働いてもらうが、一応男爵家の子供だからそこには気を付けて欲しい」
「それは気を付けますので大丈夫です」
ここで働く許可が出たので持って来た荷物を馬車から降ろして私が住む寮の部屋に運んでもらった。
私の住む部屋は2人部屋で同室になったカルミア様が私の面倒を見てくれることになった。
「カルミア様今日から宜しくお願い致します!」
「サクラさんだったかな?そんな硬い話し方しないでいいわ。もっと気楽に話しましょう」
「はい。分かりました」
「……まあいいわ。もう知ってると思うけど私はカルミア。年齢は15歳で成人したばかりよ。ここでは少しだけ先輩よ。宜しくね」
「私はサクラ、5歳です。働くのは初めてなのでご指導……色々教えてください!」
「5歳?……見た目が若いとは思っていたけど本当に若かったのね。私が5歳の時ってそんなにしっかりしてなかったわ……」
「まだ知らない事が多く、自分の事もどこまでできるか分かりませんが頑張ります」
「まだ5歳なのでしょ?自分の事なんて出来なくて当然よ……私が出来る範囲で手伝うから気にしないでゆっくり覚えて行こうね」
「ありがとうございます」
「……何か距離を感じるから敬語は無しで……と言うかその年で敬語を使えるってすごいわね」
「先生が良かったんですよ。教会で色々教えて貰い……貰ったので」
「そう。確か男爵家の長女だったかな?」
「そうです。男爵家と言っても……裕福では無いけど」
「私も一応男爵家の二女なの。実質平民だけどね」
適当に少し話した後、両親に挨拶をして両親と先生は帰って行った。今日から初めての住み込みでの仕事が始まる……。
今後の展開の参考にもなりますので評価、感想など頂けると助かります。
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