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始まりの脱出

自我を保ちつつ記憶を失った私・・・


この浮島に連れ込まれて、どれほどの月日が流れただろうか!?

記憶さえ曖昧になるほどの長い時間が経っている。

だが、寿命を持たない"バイオマトン"にとって、時間の流れは意味を成さない。

ただひたすらグラアスピア(レアアース)を掘り続ける奴隷なのだ。


彼の目前、または後ろ、左右にいる多数の"バイオマトン"たちが採掘を続けていた。

そう、ただ・・ひたすらピッケルを叩きつけ無言で堀続ける。


坑道を掘らず、露天掘りなのは、まだマシだったかもしれない。

落盤事故による生き埋めという最悪な事態だけは避けられるからである。




そんな彼ら"バイオマトン"たちの中で・・おそらく私だけが自我を持っているのだろう。

他の連中(バイオマトン)は・・AIで動く人形のようなものなのだ。


いや、それだけではない。

この浮島は全てAIでコントロールされている。または遠隔操作なのだろう。

なぜならここは・・生物が生息できない場所だからだ。 

酸素もなく、強烈な放射能を放つ・・荒涼とした大地。草木もない岩だらけの大地。

生身の人間では、到底生き延びることはできないだろう!


ただし・・アストラスーツ(宇宙服)を身にまとえば、理論上この星で動くことは可能なはずだ。

だが、それでも過酷すぎるのである。

それは・・重力!

ここは巨大なガス惑星、強烈な重力によって支配されているのだ。(通常重力の3倍)

それゆえに、普通の人間は、この地での生活に耐えられない。生きていけない。


私を除いては・・・




私は"バイオマトン"。自我を保ちながらも、鉄の身体に改造された唯一の存在。

この浮島で生きる唯一の人間なのだ。


そして、私は何とかして、ここから脱出しようと考えた。

いつまでも、こんなとこにはいられない。

奴隷など・・やってられないのだ! 

労働! 労働! 賃金も貰えずひたすら労働! 労働!  

来る日も来る日も同じく労働・・・

過酷で辛く・・まるで地獄! 

やってられるか! やってられるか!


いずれは絶対に逃げてやる!


・・・とはいうものの、現実は厳しい。

私たち"バイオマトン"の動きは、この浮島のAIシステムによって一体一体、たえず監視され、追跡されているのだ。


少しでも不審な動きを見せれば、バグや欠陥品と判断され、スクラップとして処分されるであろう。

そう、今までに何体かは処分され・・・この惑星の底へと落とされていったのだ。

それはすなわち"死"を意味する。

そう、殺されてしまうのだ! ただの無機質なコンピューターに殺されてしまうのだ。


私は、そんな光景を見て怒り・・戦慄した。

"バイオマトン"たちが、まるでゴミのように捨てられていく。

抵抗もせず意思もなく・・道具のように殺されていく。


「なんたること!」


そう、このままでは、私も同じ運命を辿るだろう。

だから・・必ず逃げてやる。復習してやる! よくもこんな体に・・してくれたな!



私は用心深く、周囲を観察し・・例の計画を遂行していく。

自我を持っているなどと思われてはならない。バグや欠陥だと思われてもいけない。


慎重に・・・慎重に・・・この浮島のAIシステムに侵入し、内部情報を書き換えていく。

この作業には時間がかかるが、それこそが私の計画なのだ。




私の"バイオマトン"は・・・定期的にメンテナンスを受ける。

機械仕掛けの身体である以上、メンテ・・定期検診は必要なのだ。



そう、その瞬間こそ! 私の頭脳・・半分以上電脳化した私の頭脳が、この浮島のAIシステムに接続される時なのである。


AI側としても、まさか! 私に自我があるなどと判断しないだろう。

それゆえに、ハッキング対策など、ほとんどされていない。

この盲点こそ、私にとっての優位性なのだ。



接続の・・その瞬間を利用し・・静かに慎重に私はAIシステムへ入り込む。

そして、用心深くファイルを覗きこみ、少ずつ情報を改変していくのだ。




そこで初めて判明した事実・・


この惑星の名前は"Pqdmwx@24875-58741-0005"

具体的な名称を持たず、単なる惑星ナンバーでしか表されていない。

この事実が示すのは、この地が、かなりの辺境であり、しかも人々の関心すら持たれていないという事なのだ。


このガス惑星は恒星から数えて第五惑星、1日は10時間、1年は900日。

そして周囲には20もの衛星が浮かんでいる。


そして、何よりも重要な情報を得た!

私を"バイオマトン"に改造し、奴隷化した元凶の組織・・それが"ラアラ解放戦線"

ラアラと呼ばれる地域の独立を目指す軍事組織、そして非合法に資金を稼ぐ犯罪集団でもある。

そんな奴らに、私を含む多くの人々をさらい、改造し・・そして、資金を得るために強制採掘させられたのだ。


自我を奪い、記憶をも消し去り、ただの人形のように扱う。

このような非道な行為を続ける奴ら(ラアラ解放戦線)を・・・絶対に許さない! かならず復讐してやる!


この屈辱・・恨み・・よくも記憶を奪ってくれたな!

殺す! 殺す! 殺す!

いずれ・・ラアラ解放戦線を殲滅してやる!




-*- - - - - - *-


ついに、復讐の時が来た。

長い間、この瞬間を待ち続けていたのだ。

バイオマトンへと改造された私の顔は、邪悪な笑みを浮かべる。


「ふっふふふ。私の自由を奪った奴らに、それ相応の罰を与えてやろう」


その計画は容易なものではなかった。

忍耐強く、慎重に進めていったのだ。

悟られず・・確実に・・


この浮遊島のAIシステムを改変・操作し、そのネットワーク(次元間通信)を通じて“ラアラ解放戦線”のメインコンピューターへと侵入した。

メインコンピューターは・・意外にも脆弱だった。セキュリティシステムはまるでザルなのだ。


おそらく、このメインコンピューターは基本的にスタンドアローンで動作しており、他のシステムとの繋がりがほとんどなかったことが、油断につながったのだろう。

反面教師! そう、私は決して警戒を怠ってはいけない。慎重に、一歩ずつ進めていくのだ。


そしてついに・・メインコンピューターの中枢、軍事システムを完全に掌握した。

これで、全てが変わる。彼らが築いた支配の終焉なのだ!




その日、“ラアラ解放戦線”の本拠地である惑星“マーズ”は炎の渦に包まれた。

原因は、味方のはずの軍事ドローン(無人兵器)たちの大反乱。


10万体ものドローンが一斉に反旗を翻し、解放戦線の拠点に向かって攻撃を開始した!

冷酷な技術によって支配された軍隊が、自らの手でその主を滅ぼし始める。


しかも・・・初めの一撃で“ラアラ解放戦線”の主要な幹部は全滅!

完璧な奇襲攻撃ともいえた。


あとは・・消化試合! 残党狩り!

生身の兵士と・・・強化されたドローン兵士には あまりにも違いがあり過ぎたのだ。


そして数日にして・・・生身の人間たちは文字通りの全滅となる。


もちろん、これら反乱事件の首謀者・・仕掛けた者は、ここからあまりにも遠いガス惑星における自我をもたないはずの奴隷・・"バイオマトン"だった。




その後・・“ラアラ解放戦線壊滅”の情報は浮島のAIシステムを通じて私は知った。

・・というか、メインコンピューターとの接続が完全に切れたことにより、奴らの全滅を予測したのである。


しかも! 接続が切れる直前に・・陰惨な映像が送られてきたのだ。

全てが赤く染まり・・累々と横たわる屍の山・・・


「ふっふふふふ いい気味だ」


“ラアラ解放戦線”はおそらく再起不能となっているだろう。

これで・・・私たち"バイオマトン"を監視、支配する奴らは消滅したはずである。


「よっしゃああ! 私は勝ったのだ! 遠いこの地から遠隔操作で、敵を、奴らを・・壊滅したのである」


私は・・強く拳を握りしめた。

全てを達成したのだ。奴らに復讐したのだ。


そして自由だ・・・完璧に自由だ。

しかも・・この浮島は完全に私のコントロール下、私が支配しているようなもの。




--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)


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