始まりの航宙輸送艦
“ラアラ解放戦線”は壊滅し、私はついに自由を手にした。
もはや、誰にも縛られることはない。
さらに、この浮島は私のコントロール化にある。ここを管理するAIシステムを完璧に掌握したのだ。
そうなると、次の悩みとなるのは、私の管理下となってしまった彼ら採掘奴隷・・"バイオマトン"たちの存在となる。
自我も記憶も持たない半人間的な彼らを人間として扱うべきか、それとも単なる自動ロボットとして見るべきなのか。
なんという難しい判断・・・私も彼らと同じ境遇であったがゆえに・・・人間として尊重してやりたいが、もはや意識も自我もないとすれば、ただの自動機械、生物ですらないのだ。
「うん、保留だ! 気持ち的に納得できない」
私は深く考えるのをやめた。考えれば考えるほど、気が重くなるからだ。
そのうち・・なんとかなるかも!? または気にしなくなる!?
いわゆる責任放棄なのだ。
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この浮島の中央部付近に存在する宇宙港へと、私は静かに足を踏み入れた。
案の定、そこに人の姿はなく、管理を担っているのはAIシステムのみ。
“宇宙港”とされてはいたが(AIシステムからの情報)、その実態は名ばかりのもので、 広がるのは舗装された滑走路だけ。
管制塔すらないのだ。
いや! ただ唯一存在している物体が視界に映った。
それは“ラアラ解放戦線”所属の航宙輸送艦・・・・何事もなく静かに停泊している。
そして、やはりというべきか・・その航宙艦もまた無人であり、人の痕跡はどこにも見当たらなかった。
ということは・・すなわち、この瞬間・・・私の所有物になったという事なのである。
ラアラ解放戦線”は壊滅し・・この浮島のAIシステムは私の管理下・・ならば、この航宙艦は私の所有になるというわけなのだ。
「慰謝料として・・いただいておくよ! “ラアラ解放戦線”様、まいどあり~」
AIシステム情報からの・・検索
この航宙輸送艦の名は"アインフィス"・・意味は"鉄拳"というらしい。
もちろん、こんな名前は破棄だ。
“ラアラ解放戦線”と関連付けられたくない! 実にいまいましい。
それに・・こんな名前をつけておくと厄介なことになりかねないからだ。
新しい名前は・・完全に反対の意味にしてやろう。
「そうだな~鉄ではなく・・柔らかく非戦闘的なイメージが良いだろう・・うん! あれだ、"ネェイルン"だ」
意味は・・かわいい猫w
私は・・AIシステムを経由して、この航宙輸送艦の運用コンピュータにアクセスした。
そして、わずかな手順を経て、艦名を変更させた。
「ふっ! これでお前の名は・・航宙艦"ネェイルン"」
二つの円盤を重ねたような姿をしている全長1kmの航宙輸送艦・・「うん、大きい! でかい!」
この時代の航宙輸送艦としては・・・大型に入るのだろう。
私は・・頭上で輝く航宙艦を見上げながら、中央にある大型ハッチから・・中へと入って行った。
「ほっおぉぉぉぉ」
この航宙艦の内部は、驚くほど清潔だった。
汚れ一つなく、明るく解放的な通路・・所々に飾られている値打ち不明の絵画や置き物
犯罪組織の所有艦だったとは思えないほどの高級感( 酒と薬物で薄汚れているイメージ・偏見 )
どうやら・・掃除ドローンのおかげらしい。
実にありがたい。
私はワクワク感に満たされながら、未知なる空間・艦内を探検した。
広大な倉庫に足を踏み入れると、そこには、この浮島で採掘されたレアアース・"グラアスピア"の原石が山のように積み上げられていた。
その傍らでは作業用・人型ドローンがせわしなく動き、原石を精錬炉へと流し込んでいた。
どうやら・・この輸送艦には精練施設も完備しているようである。ちょっとした工場のようだ。
私は、出来立てほやほや!?の精錬されたグラアスピア・インゴットを手に取ってみた。
ずっしりと重い・・なかなかのものだ。
しかもこの光沢! 光加減・・・人の心を魅了してしまいそうである。
ついでにいうと・・このレアアースは重力制御装置に必要不可欠な素材でもあるらしい。
「これは・・つまり・・全部・・・」
私はゴクリと息をのんだ。
目の前にある大量のインゴット。
それが全て・全て・・私のものなのか!?
もしかして大金持ちになれるのでは・・・
・・などと気楽に思っていた時が私にありましたw
そう、話はそんなに甘くなかったのだ。
このグラアスピアは戦略物資であり、公に現金化することはできない。
いわゆる"ご禁制の品"だと知るのは、後になってからのことだった。
「ふっふふふ」
私は上機嫌、夢は膨らむ、未来は明るい!
ルンルン気分で軽やかなステップを踏みながら・・・この輸送艦の艦橋へと足を踏み入れた。
その場所は広々としており、壁面全体をぐるりと覆う巨大モニター。
そして、そこに映し出される外の景色。
それはあたかも、露天艦橋のごとく・・・周囲を一望できる。
よき眺め!
「ほぉぉぉぉぉ」と私は感嘆した。
艦長席をはじめとして・・オペレーター用の席も幾つか用意されているが、当然ながら誰も座っていない。
理論上、この輸送艦は無人での運用も可能だ。
しかし、繊細な操作が必要な時には、人間の手を借りることもあるのだろう。
複雑そうな機器などがずらりと並んでおり・・私は思わず気おくれしてしまったが・・運用コンピューターAIに任せれば問題ないはずだ。
などと・・考えていると、心地よい美声が聞こえて来た。
『新しき主様、お初にお目にかかります。私はこの艦のコンピューター"アキ2403"』
おっ! 良いタイミングだ!
どうやら、この輸送艦を支える運用コンピューターAIの声らしい。
「あ~、AI君、よろしくな!」
目前のモニターに私の発した発言が、文字表示された。
対話型インターフェイスらしい。
『主様の本名が未登録です。お名前をお聞かせてもらえませんか!?』
おっと! 名前を要求された。
これは困ったぞ。記憶が無いのだ。何も覚えていない!
いやまてよ! 性別すら・・わからないではないか。
ふとモニターを見てみると・・自分の姿が映っている。
それは、人の姿をしているだけの鉄の塊・・・
二足歩行しているドローンにすぎないのではないか!
これでは人前には、出られない。
間違いなくドローン扱い・・物扱いされ、人間として認めてもらえないだろう。
そうだ! ここはこの艦の優秀なるAIに尋ねてみよう。
「私は人間に戻りたい。その方法はないのか!?」
そんな発言に対して・・膨大なデーターがモニターに表示された。
運用AIは何かを検索しているらしい。
そして、しばらくしたのちに・・何かの答えを出したようである。
『倉庫W-20のコンテナ内に・・"ヴィラルノイド"が保管されており、それを利用することをお勧めします』
そんな運用AIの回答に私は驚き・・歓喜した。
「おっおおおっっ!」
本当なのか!? 私はもう一度問い直してみる。
「AI君、間違いなく・・・"ヴィラルノイド"なのだな!?」
『 はい、人型"ヴィラルノイド"で間違いありません』
聞き間違いではなかった!
何と素晴らしき答え・・・飛び上がりたいほどのうれしさ!
しかも、それがこの艦の倉庫に保管されているとは! 何と運の良いことか!
ちなみに・・・"ヴィラルノイド"とは有機体の人造人間・・・要するに人間の体そのものなのだ。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




