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オレたちエクソシスト  作者: 地野千塩


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はじまりの夏休み編(10)完

 数日たった。


 篝火は別荘の自室で荷物を纏めていた。


「結局、リフレッシュなんてなかったじゃん」


 篝火の口からぼやきが漏れていた。


 あの美湖の悪霊追い出しの後、アフターフォローが結構大変だった。確かに美湖は福音を受け入れ、悪霊を追い出したが、ずっと長年悪霊と馴染んだ生活をしてきたのである。突然、清い人間になるのは、難しく、キレたり、泣いたり、暴れたりと大変だった。


 おまけに墓場や神社に悪霊を呼び込む門が開いていて、しばらく直恵や悠一と3人がかりで地域の悪霊を縛っていた。


 夏は死んだ人間の魂を食べた悪霊たちが、オレオレ詐欺を活発にやっているので、なかなかしつこかった。


 こうして、篝火のリフレッシュ休暇はほぼ悪霊追い出しばかりしていた事になる。


 そうこうしてうるうちに、会社が始まる日が近づき、帰る事になった。大学生でまだまだ休みの桜や直恵、比較的時間に余裕がある悠一は、しばらく残って地域の悪霊のパトロールをする予定だが、篝火だけ一足先に帰る予定だった。


 カバンに荷物をつめていたら、あのロケットペンダントを発見した。


「返さなきゃ」


 篝火が、美湖がいるこの別荘の縁側に向かった。美湖はあれ以来、この別荘で寝起きしていた。美湖は両親との関係も悪いようなので、ここでしばらく生活した方がいいだろうという事だった。


 それを提案したのは松田だ。見かけによらず、中見は愛情が深い人間なのだろう。篝火はそこまで他人の娘に出来ないと尊敬してしまう。


「美湖さん、これ返すよ」


 美湖はぼんやりと縁側から見える海辺を眺めていた。もう夕方で、巨大な蜜柑のような太陽が海面に沈んでいくところだった。


 美湖の頬も夕陽が染めていた。


「あぁ、これね。なんか、今思うと恥ずかしい」


 同性愛の悪霊が抜けた美湖は、ロケットペンダントを目にすると、恥ずかしそうに顔を両手で隠していた。あの悪霊が消えた今なら、そんなものだろう。深海への執着も幻想だったと告白した。


「篝火は、帰ったらどうするの?」

「明後日から仕事だよ〜。結局リフレッシュできなかった〜」


 情け無い声を出す篝火に美湖は噴き出してしまった。


「でも、篝火くんは音楽このまま辞めちゃうのは、もったいないね」

「そっちこそ、歌うまいじゃん。歌手とかにならないの?」


 はじめて会ったとき、美湖は美しい声で歌っていた事を思い出した。そう思うと、このままにしておくのはもったいない。美湖は、元々地元のライブハウスなどで歌っていたそうだが、親が心配して禁止中なのだという。


「それは、ちょっと勿体無いなぁ。そうだ、オレも音楽活動をボチボチ再会しようと思ってるんだ。まあ、動画サイトに賛美歌あげたり、自主レーベル作成ぐらいで、メジャーに行く事何かは考えてないけど」

「それで?」


 美湖は興味がある風に身を乗り出してきた。


「美湖ちゃんもオレらと歌わね? あと雲雪っていうバンドマンと一緒にやろうと思っているんだけど」

「いいじゃん、それ」


 という事で、美湖も篝火の音楽活動に協力してもらう事に決まった。


「本当は音楽は賛美歌しか無いんだよ。でもサタンが、音楽も悪魔的なものにしちゃってるからね」

「そっか…。悔しいね。音楽は元々はとても良いものに」


 心底美湖は、悔しそうな顔を見せた。


 ちょうどその時、松田がそばのやってきた。腕には、可愛らしい黒髪の人形を抱えていた。フェルト生地で作られているのか、温か味のある雰囲気の人形だった。


「美湖ちゃん! みて! ミーちゃん2号を作ったの」

「本当?」


 美湖は目を輝かせながら、ミーちゃん2号の頭を撫でた。


「これでもう美湖ちゃんは、寂しくないはずよ」


 まるで子供のように美湖に接する松田に、篝火は苦笑する事しかできなかった。


「ありがとう、松田さん」


 美湖は目に涙をうっすらと浮かべながら、ミーちゃん2号を抱きしめた。


 何のリフレッシュもできなかったが、篝火は再び音楽しようという決意が強く固まった。美湖という味方も得た。


 この夏休みは、何かのはじまったのかも知れないと思った。

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