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オレたちエクソシスト  作者: 地野千塩


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はじまりの夏休み編(8)

 少々欠けているとはいえ、大きな月が出ている夜だった。


 波音は静かで、穏やかな風も吹いていた。遠くの方で少し車の音が聞こえるが、しんとした静けさを感じる。


「な、なぜあなたがそこに居るのよ……」


 篝火に声をかけられた美湖は、動揺していた。一方後退っていたが、足元に人形があった。市販製品には、とうてい見えない手作り感のある人形だった。


 金髪碧眼でドレスを着ていた可愛らしい人形だったが、さすがに夜見ると怖い。しかも人形に悪霊が入っていた。


 墓場にいた深海の先祖の振りをした悪霊と、あの神社にいた偶像崇拝の悪霊が、コンビを組みながら入っているのが見えた。


『美湖を騙すぞ〜!』

『深海の演技頑張ってね!』


 悪霊達は、明らかに美湖を騙すつもりで、連携を取りながら張り切っていた。


「この人形何? どういう事?」

「あの、違くて……」


 問い詰めても美湖は答えないだろう。


 篝火は人形に入っている悪霊に睨みつけた。


『美湖の願いを叶えてあげるだけだよーん』

『その代わり、地獄に連れていくからね!』

『エクソシスト、邪魔すんな!』

『美湖とは契約状態だからな!』


 どうやらギャーギャー騒ぐ悪霊と美湖は契約してしまったらしい。おそらく神社参拝した瞬間の契約が成立してしまったようで、篝火は頭を抱えたくなる。


 何かを拝む対象とは、契約関係になる。人間の結婚に近い契約状態で、健康や金銭なども相手の「霊」と一体になる。


 クリスチャンも、キリストの花嫁と言われ、神様と結婚しているような契約状態になる。意外と霊の世界は、きっちりとした契約社会なのだ。


 悪霊はこうして契約した人間の願いを叶える事もあるだろう。ただ、その代わり、健康や金銭も食いつくし、最終的には、地獄につれていくという契約関係になる。


 占い師も悪霊の契約下で動いているコマみたいなものだ。占い師は死ぬ直前、こうした契約関係だったとようやく気づくのだろう。だから、占い師は死に方が悲惨だったり、死に際を隠したりするのだ。


「美湖さん、何? この人形は?」

「良いのよ。ねぇ、見てよ。この人形は、深海と全く同じ記憶があるの。本当に深海みたい」


 篝火の引いている顔にも美湖は気づかなかった。悪霊入りの人形を持ち上げると、ぎゅっと抱きしめた。


「ああ、深海。帰ってきたのね」

「違うよ! 美湖さん!」


 少しウットリとして悪霊入りの人形を抱きしめる美湖を必至に止めた。悪霊が死んだ人間の記憶を食べ、その人の振りをしていることや、契約ぁ関係である事も説明した。


 いっそ人形に入っている悪霊を追い払ってしまいたかったが、本気で死んだ深海だと思い込んでいる美湖を思うと、それも難しかった。


 それにこの状況で追い払っても、何倍にも報復しってくる可能性もある。それだけは避けたかった。できれば美湖自身が自分から、こんな事を辞めたいと言って欲しかった。


「そんな、この子は深海じゃないの?」

「そうだよ。悪霊がオレオレ詐欺やってるんだ!」


 必死の篝火の説得に、美湖も何か心が動かされているようだった。激しく動揺し、ついに人形を砂の上に落とした。


「じゃあ、深海は一体どこにいるの?あなた達が信じてる宗教では、地獄にいるってことよね?」


 それを突っ込まれると痛かった。


「そ、そうだけどさ」

「だったら、ニセモノでも私のそばのいて欲しいよ」


 ここで悪霊にスキを与えてしまったらしい。

 しかも美湖は、かなり悲しみや悔しさなどの想念を発していた。このエネルギーでは、悪霊が入る門が開いてしまうだろう。


 篝火の懸念通りに門が開いてしまった。


 数々の悪霊が襲来し、美湖を襲っていた。


「いやああああ!」


 気づいた時には、遅かった。美湖は、様々な悪霊の攻撃を受け、白目をむいて倒れてしまった。


「美湖さん!」


 篝火の悲痛な声が、静かな海に響いた。

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