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オレたちエクソシスト  作者: 地野千塩


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はじまりの夏休み編(5)

 別荘に来てから篝火は海辺で過ごす事が多かった。


 あの夜以来、美湖にはあっていないが、気付くと彼女の姿を探していた。松田によると家政婦の仕事は夏休み中という事もあり、美湖とは連絡が取れない状況らしかった。それを聞くと余計の気になってしまった。


 外見が好みだった事もあるのだろうが、悲しい事情があると聞くと、気になってしまう。悠一は放っておけばいいと言っていたが、悪霊がついている状況は辛いだろう。死の悪霊は、自殺を引き起こす可能性も高く、気がかりだ。


 それにロケットペンダントも返せていない。松田経緯で返せばいいと思ったが、もう一度直接話したいとも思っていた。


 そんな時、海辺で偶然美湖をみかけた。悠一や直恵、桜と釣りをやっていた時だったが、釣り竿を放り投げて、美湖の方に向かっていった。


「ちょ、篝火くん。何やってるんだよ」


 背中の方から悠一の声が聞こえてくるが、無視して向かった。


「な、ナンパ?」


 美湖は明らかに警戒していた。腕には少し、チューリップやかすみ草の綺麗な花束を抱えていたが、少し震えている様子が見えた。よっぽど警戒されているらしい。同性愛の悪霊がついていたら、こんなものかもしれない。この悪霊がつくと生身の異性を過剰に怖がったり、否定し易きなるとか直恵から聞いた事がある。


 篝火は、人懐っこい笑顔を作り、松田の知り合いであり事を説明した。


「あ、松田さんの」


 共通の知り合い・松田がいるという事で、明らかの美湖は警戒心を解いていた。美湖の背後にいる悪霊は、ぶつぶつ文句を言っていたが。


「お花持ってるけど、どっか行くの?」

「これから墓まえりに行くのよ」


 美湖は目をふせ、腕に抱えている花束を見つめた。長いまつ毛が、美湖の頬に影をつくった。ちょうど昼過ぎで、太陽も頭のてっぺんに居るようだった。


「オレも一緒に行っていい?」

「え、嫌だけど」


 明らかに美湖は嫌そうな顔を見せたはが、篝火はちょっと無理矢理、美湖についていく事にした。


「うざいんですけど」

「いいじゃん。一緒に行こうよ」


 側から見たら、篝火は美人にナンパしているチャラい男だが、結局墓場まで一緒に向かった。


 墓場は海辺から十分ほどの場所にあったが、雑木林に囲まれ、人も少ない。


 水場でバケツに水を入れたり、墓の草むしりwl手伝ったら、美湖は意外と喜んでくれた。


 墓が篝火が予想した通り、深海の家のものだった。仏教式の四角い墓は、やっぱりちょっと暗く見える。


 キリスト教式の墓石は、聖句が彫られていたりして、クリスチャンである篝火は、こっちの方が親しみを感じてしまった。


 蝉の鳴き声がうるさいが、美湖は熱心にお参りしていた。


 背後にいる死の悪霊は大喜びだったが、篝火が心の中で聖書の御言葉を呟きながら睨むと、びびって大人しくしていた。やっぱり美湖についてきて良かったと思った。


「この墓は、だれの墓なの?」

「友達」

「ふーん」


 美湖は、恋人の墓とは明かさなかった。気持ちは何となくわかる。


「なんか、あなたといると少しだけ、気分が明るくなったんけど、何かした?」

「いえいえ、何もしていませんよ!」


 篝火は首を振って必死に否定した。心の中で御言葉を引用しながら、美湖の背後にいる悪霊にメンチ切っていたとは言えない。


「オレ、クリスチャンなんだど、ここに死んだ人はいないよ」

「う、うそ。じゃあ、どこに私の友達はいるの?」


 地獄にいる可能性が高いとは言えなかった。ただ、お墓に行っても、死んだ人に会えるわけでは無いとやんわりと伝えた。


 墓の前に飾られた花が風に揺れ、太陽の光を浴びてキラキラと輝いて見えたが、美湖は不満そうだった。


「そんなわけない。深海は私のそばにいるよ」

「いや、それはないよ」


 やんわりと伝えたものだが、美湖は篝火の考えには、賛成できないようだった。


 再び美湖の背後にいる悪霊はザワザワしはじめたので、篝火はさらにキツく睨んだ。


 墓場に死んだ人の霊がいないが、悪霊は多かった。多くは死んだ人の記憶や念を食べた悪霊で、人を騙すために虎視眈々としている。


 人間界で例えるとオレオレ詐欺みたいなものだろうか。悪霊は死んだ人のフリが得意で、人間を騙すのが好きだった。


 死んだ人の霊は、もう神様の管轄に移っている。地獄にいくか天国に行くかは人間にはわからないが、この地上には死んだ人の幽霊は一人もいないのは確かだった。


 そんな事を考えていたら、悪霊がスキをついてきた。


 深海の先祖に化けた悪霊が、美湖に話しかけていた。


『美湖ちゃん、美湖ちゃん。私は深海の先祖だよ。神社に行ってご覧。美湖を救う方法がわかるかも知れないよ』


 篝火が再び心の中で祈りながら、その悪霊を追い払おうかと考えたが、美湖は明らかに取り乱しはじめた。


「深海、深海……」


 美湖は、走って墓場から出て行った。汗をたらし、かなり焦っていた。


「ちょ、待ってよ! 美湖さん!」


 篝火も走って美湖を追いかけた。

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