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オレたちエクソシスト  作者: 地野千塩


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はじまりの夏休み編(2)

 桜の家の別荘は、海辺にあった。


 教会のある町から電車で1時間半ほど離れた場所にあったが、綺麗な海辺の町だった。


「綺麗〜!」


 桜は、町に入ると海を見ながら声をあげた。海面は、太陽が反射し、キラキラと輝いていた。潮風がふわりと鼻をくすぐるが、意外とじめじめしてなく、風も心地よかった。


「本当ね、桜」


 桜につられてか、普段クールそうな直恵も海を見ながら喜んでいた。海は、いわゆる海水浴場ではないのようだ。釣りをしていたり、散歩をしている老人が散歩しているのが見えた。スローライフな雰囲気に和む。


 灯台も見えたが、その側に桜の家の別荘が見えた。青い屋根の二階建ての家だった。


 篝火は別荘と聞いていたので、もっと豪勢な屋敷なようなものを想像していたが、見かけは一見普通の民家だった。


「意外と小さいな」


 悠一も篝火と同じ事を考えていたようだった。


「この別荘が、元々私の死んだおじいちゃんが、病気療養のために建てた家なのよ。あんまり大きくはないわ」

「でも、綺麗な家よねー桜」


 桜と直恵はペチャクチャと喋りながら、別荘の方に向かった。


 悠一は海辺の方をやたら鋭い視線で見ていた。


「悠一さん、どうしたんだよ。なんかいたか?」

「いや、悪霊の気配を感じたんだが、気のせいかね?」


 篝火の目からは、悪霊は感じなかったが。


「海と悪霊ってかなり密接に関係があるんだよ。というか水があるところが問題で」

「そうよ。水天宮や水商売、水子。水があるところは、悪霊がけっこう動いてるの」


 悠一の話に直恵が口を挟む。


「えー、マジで。せっかくリフレッシュに来たのに」


 正直、このリフレッシュ中に悪霊の話は聞きたくなかった。


「まあ、別荘にいる間は、悪霊の事は忘れましょう」


 桜が明るくいい、悪霊の話題は打ち切られた。


 こうして別荘に入る。庭が広く、物置のような立物も隣にあった。


「どうぞ。いらっしゃいました」


 管理人の松田圭子から出迎えられた。同じ別荘管理人である直也や歩美のようなタイプを想像していた篝火は驚いた。


 60歳ぐらいの女性だったが、暗い雰囲気のする管理人だった。背も低く、顔つきもオカメ納豆のような和風顔。服装も和装に割烹着姿だったので、どことなく座敷童のような雰囲気もあった。


 初対面の篝火、直恵、悠一は松田の雰囲気にびっくりしてしまったが、桜は感激して彼女に抱きついていた。


「きゃー、松田さん! 久しぶりよぉ!」

「あらあら、お嬢様。子供じゃないんですから」


 母親のように桜に接する松田は、悪い人物には見えなかった。他の一同もホッとする。実際、松田には悪霊はついていないようだった。この年代の日本人だったら、何かしらつけていそうだが、そういう面でも篝火もホッとした。


 一同は、別荘の一階のあるリビングに通された。リビングの飾り棚には、赤ちゃんの写真がいっぱい飾ってある。


「この赤ちゃんは誰?」


 悠一が写真を眺めながら、松田に聞く。


「桜お嬢様ですよ。可愛いこと」

「やだー、松田さん。恥ずかしい」


 桜は顔を赤くしながら、リビングのソファに座る。


「でも、赤ちゃん桜は可愛いわ」


 珍しく直恵も目尻を下げながら、写真を見ていた。


「桜お嬢様は、子供の頃はここで育っていってもいいものですよ。本当に可愛い赤ちゃんで」


 松田は、心底嬉しそうにリビングのテーブルの上にアイスコーヒーをおく。コーヒーには、アイスクリームが浮いていた。


 こうしてみんなでリビングのテーブルを囲んで座り、アイスクリームが浮かんだコーヒーを楽しんだ。


 話題は自然と桜の子供時代の事になる。このアイスクリームが浮かんだコーヒーも子供の頃の桜の好物だったという。グラスもハローキティ がデザインされた、いかにも子供向けのものだった。篝火もおばあちゃん家に居るような、懐かしい気分になる。


 窓辺に飾られた風鈴からは、ちりんと涼しく音が聞こえていた。なんとも平和な夏の日で、一同の表情も柔らかくなってくる。


「私は本当に桜お嬢様が来てくれて嬉しいですよ」


 松田はそう言い、台所からポテトチップス、クラッカー、動物クッキーも持ってきてテーブルの上に並べた。


 すっかり子供のような扱いを受けている面々だったが、なぜか篝火は嫌な気分にはならなかった。悠一もちょっと戸惑ってはいやが、すぐに笑顔を浮かべていた。


「松田さんは、桜ちゃんの事が大好きなんだね」


 篝火も目尻を下げながら、そう言って動物クッキーをつまむ。


「ええ。もう目に入れても痛くないです。お嬢様は本当に可愛い子で。お姫様です。神様から頂いたお姫様ですよ」


 そう語る松田は、幸せそうだった。直也の別荘も結界みたいのが出来ていて、悪霊が寄り付いていなかったが、この別荘もそんな雰囲気だった。ここでは心からリラックスできそうだと篝火は安心した。


「あら、ミーちゃんはどこ行ったの?」


 桜は、写真が飾っている棚を指差して、素っ頓狂な声をあげた。


「ミーちゃんって何?」


 一堂声を上げるが、松田は眉根を寄せて困ったような表情をみせた。


 桜に聞くとミーちゃんは、彼女は子供の頃から大事にしていた人形だった。


 松田の手作りの人形で、金髪碧眼のフランスの女の子という設定らしい。


「実は、1ヶ月前からいないんです。どこいっちゃったのか」

「もしかして松田さん、人形の呪いだったりして」


 篝火のこの発言は悪意はなく、完全に冗談だった。


 確か昨日見たテレビのホラー番組で、呪いが込められた人形が夜中に動き回るというのを見ていた。


「ちょっと、篝火くん。確かに人形は悪霊が入りやすいモノだけど、呪いなんてないわ」


 直恵に睨まれ、篝火はぷるっと震えた。


「そう、直恵の言う通り人形は、悪霊が入りやすいんだが、そんな松田さんが呪いをかけたりとかしないでしょ」


 悠一にもたしなめられ、篝火は完全に反論できない。


「でもミーちゃん、どこに行ったのかしら。心配だわ」

「大丈夫よ、桜。どこかにあるでしょ」


 心配そうしている桜に直恵は、励ましていたが、篝火は心に引っかかりを覚えた。


「ミーちゃん、早く見つかるといいね」


 そうは言ってはみたが、嫌な予感もしていた。せっかくのリフレッシュ休暇だが、悪霊騒ぎに巻き込まれそうな悪寒がした。

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