悪霊ストーカー編(8)
「香代さん、何か知ってるだろ。お願いだから、教えてよ」
篝火は、香代に頭を下げた。
あのチラシのイラストを見せると、香代は明らかにドギマギし始めた。目が泳技、篝火の顔を見ない。
何か知っている事は確かだ。篝火は探偵でもないので、推理などできない。香代に直接事情を話して貰うのが、一番だと思った。
「そ、それは……」
「何か知ってるでしょ。香代さんがストーカーだとは思ってないよ。でも、ストーカーには心当たりがあるよね?」
占い師の霧子は、ストーカーは香代と言っていたが、当たらずとも遠からずだったのかもしれない。占い師が、確かに当たる事もありるが、嘘も混ぜている。当たっても、その嘘に混乱させられて、依存状態にもなるだろう。霊的にも占いは危険なわけだが、普通に考えても依存性の高い娯楽だと思う。
「じ、実は……」
香代はとても言いにくそうだが、知っている事を教えてくれた。
香代には二つ年下の妹がいるらしい。年齢は20歳。名前は葵という。香代とは父親は違うのだが、事情があって、一緒に暮らしていた。
葵は中学、高校といじめにあい、引きこもり状態だという。勉強もせず、好きなB L漫画やロックバンドにハマっているが、そんな事をしていりので、家族とも不仲になり、ますます引きこもりが酷くなっているという。
「私も色々手を尽くしたんです。でも、余計に葵は酷くなってしまい……。家族の恥ですね正直、葵の扱いは困っています。私にも嫉妬していましたから、嫌がらせの犯人は葵でしょう」
香代は深いため息をつき、おでこを抑えた。葵に関しては、かなり参っているらしい。
話を総合すると、ストーカーの犯人も葵だろう。おそらく妄想を拗らせてやったのと予想するが、こんな事をしているものの思考は1ミリもわからない。
香代への嫌がらせも、確固とした信念があってやってる感じがしない。聞くと、香代が葵の持っているBL漫画を無理矢理捨てた事があり、逆恨みされているんだろうという話だった。
「本当に葵はどうしたものか……」
香代は苦渋に満ちた表情を浮かべながも、スマートフォンに保存している写真を見せてくれた。
香代と葵と思われる人物だった。二人とも中学生ぐらいで、溌剌とした笑顔を見せていた。葵も意外と可愛らしい雰囲気の娘だった。こんなストーかや嫌がらせをしていた事がちょっと信じられない。
「けっこう可愛いじゃん。葵ちゃん。モテたんじゃない?」
「そうなのよ。可愛いのよ、この子。でもそのおかげで女子から、嫉妬されていじめを受けちゃったのよ……。葵が登場男の子と付き合っていたんだけど、いじめの傷が深かったのかしら。男性に触れられるのも怖くなてしまったみたい」
こうして聞くと、葵には同情できる点もあった。男性が嫌いになって、触れられるのも嫌になるとは、悪霊の影響もあるかもしれない。
悠一から元レズビアンの悪霊祓いをした事を聞いた事がある。彼女には、小さな男の子の悪霊がついていて、同性愛に走っていた。悠一が悪霊祓いをしたとたん、異性愛者に変わったらしい。同性愛は生まれつきの障害じゃない、生まれつきに見えるのは先祖の咎の悪霊の問題でもあるだろうと言っていた事を思い出す。
おそらく葵もいじめの心の傷を足がかりにして、悪霊が入り込んだのだろう。葵が同性愛者かは不明だが、何らかの悪霊が憑いている事は想像がつく。悪霊がつくと、嫌がらせやいじめなどもしやすくなると、直恵から聞いた事もある。
「葵ちゃん、もしかしたら悪霊の問題かもしれない」
「本当?」
こんな目に見えない霊の話をすると、普通の人は嫌がるものだが、香代は肯定的だった。それだけ葵には困っているようだった。香代によると公的な相談機関やカウンセラーにもずっと頼っていたらしい。それでも葵の様子はよくならないので、見えない何かが悪さをしていると言ったら納得していた。
「でも、こういうのってスピリチュアルの人に相談した方が……。そういえば同じファンの仲間に霧子さんっていう占い師がいたから、ちょっと連絡とってみたいと思っていたんだけど」
「わー、わー。占い師に相談するのはやめてー。占い師や霊媒師が悪霊祓いができるのは、ジャイアンがスネ夫をいじめてるようなもんだから」
ドラえもんのキャラクターを例えにすると、香代はスピリチュアル に頼るのは辞めると言ってくれてホッとした。
「そういえば、映画で『イエス様の御名前で命令する、悪霊よ出てけ!』って言ってるシーンがあったけれど、あれは私が言っても効果ない?」
「全く無いわけじゃないけど、ノンクリスチャンが言った場合、より悪い悪霊が報復してくる場合もあるんだよ」
イエス様の御名前は確かに最強だ。でもいくら鋭い武器も、幼稚園児に持たせても効果は薄いだろう。やっぱりこう言った悪霊祓い行為は、ノンクリスチャンに丸腰にやらせるのは、危険だ。
「今から、葵ちゃんに会えない?心配になってきちゃったよ。これは、悪霊祓った方がいいかもしれない」
「まあ、たぶん今日は家にいるわね。会ってくれるかはわからないけれど、一応行く?」
という事で、香代と一緒に葵がいるマンションに行く事になった。




