お金の誘惑編(11)完
翌朝、篝火はご機嫌で朝ごはんを作っていた。味噌汁、ごはん、オムレツという簡単なメニューだが、涼太の悪霊を追い出せたのが単純に嬉しかった。
それに涼太のあの夢の言葉を思い出すと、嬉しくなってくるのも事実だった。
真緒の事は気がかりだが、やっぱり本人が拒否している場合はどうしようもない。とりあえず真緒についている悪霊がこれ以上悪さをしないよう、見守るぐらいはできそうだ。
「おはよう。おいおい、ぜいぶんとご機嫌だな」
悠一は、機嫌のよい篝火にも少々呆れながらも、食卓について食前の祈りを捧げた。
「それにしても神様は本当に来るのかな」
「来るよ、絶対」
悠一もそれに関しては自信満々だった。
「色々説はあるね。終末に艱難前、艱難中、艱難後にクリスチャンが携挙される説がある」
「マジで? 映画みたいのあり得るの? 悠一さんはどの説を支持してる派?」
いつもは結構ハッキリと言うタイプの悠一だが、今回は答えなかった。
「この説は、 クリスチャン同士でもかなり揉めるだよなぁ。この点は少し難しいから、後でゆっくりと教えてあげよう」
「へー。早く知りたいって」
「まあ、終末はくるよ。涼太の言う通り、お金の心配よりやるべき事はあるね」
そんな事を話しながら、食卓の朝ごはんはすっかり空になっていった。
「オレはエクソシストの素質ある?」
「さぁ、どうだろう。運はいいんじゃない?」
イマイチ褒められている気はしないが、やっぱり悪霊祓いは続けたかった。
「よし、頑張るぞ〜!」
「やれやれ、すっかりその気になってるわ」
ヤル気に満ちている篝火の耳には、悠一の呆れた声は聞こえなかった。
そんな篝火の元に、あのミュージシャン時代の先輩・雲雪から連絡が届いていた。
卓弥が大怪我を負い、しばらく入院しているという話だった。この事はすぐ悠一に報告した。
「これは、呪い返しかもな」
「呪い返し? マジで?」
悠一によると、神様に守られているものは、いくら呪いを受けても神様から守らるという。呪いはそのまま攻撃を与えた本人に戻るという話だった。
「でも、大丈夫かな。卓弥さん。別にあの人に恨みがあるわけじゃないし」
「そうだな。卓弥に為にも祈るか」
悠一がそう言い、しばらく卓弥の為に祈っていた。




