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オレたちエクソシスト  作者: 地野千塩


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お金の誘惑編(10)

 とりあえず、訪ねてきた涼太を家にあげた。


「教会の一階ってこうなってるんだー。ここが牧師さんの部屋? こっちがおじちゃんに部屋なんだー」


 涼太は初めて入る牧師の家にちょっと興奮気味だった。


 とりあえず、一番大きな部屋にあたるリビングに通した。


 子供が喜ぶものが見当がつかない篝火と違って、悠一は気が効くようだ。桜が持ってきたバウムクーヘンとペットボトルのコーラを持ってきて、テーブルの上に置いた。


「どうしたんだよ、涼太」


 篝火は、コーラをぐびぐびと飲む涼太に声をかけた。


「だから言ったじゃん。悪霊祓って」


 あまりにも呑気に言うので、篝火の目には涼太は大人をからかっているいるように見えた。


「一応事情を聞くが、どういう事だ?」


 悠一は、意外と冷静だった。涼太に視線を合わせて、質問した。子供扱いしないのも意外だった。おかげで涼太は気を良くして、ペラペラと事情を話し始めた。


 一年ぐらい前から、涼太は悪霊が見えるようになったという。


「マジで?」


 篝火の驚いた声を無視し、涼太はさらに話しはじめた。


「うん。最初はいい人っぽく話しかけてきたんだ。それで俺達を拝めば、金持ちにしてやろうって言ってきた」

「は?」


 篝火は言葉を喪っていたが、悠一は冷静だった。そう語る涼太も冷静で、パクパクとバームクーヘンを食べていた。


「うん。それで悪霊としばらく契約していたんだけど、別にうちは金持ちにならないね。むしろ、貧乏になってるし、困ったよ」

「おいおい……」


 悠一はここで初めて呆れた声を上げたが、篝火の目から涼太についてる悪霊がハッキリと見え始めた。


 チビなオッサンの悪霊だった。ぶつぶつと暗い顔をしてお金を数えていたが、涼太に「万引きしちゃえよ」「友達をいじめちゃえよ」とずーっと囁いていた。これを聞かされている涼太を思うと、篝火もしんどくなってきた。


「それにママにいい大学行けとか言われるのも嫌になってきたね。今時大学行っても、東大レベルじゃないと無理っしょ」


 ぜいぶんと冷めた子供で、篝火はジェネレーションギャップで言葉がない。


「まあ、いいだろう。悪霊を祓ってもいいが、これからの人生は神様と共に歩むという覚悟はあるか?」


 悠一は呆れながらも念を押した。


「うん。もうお金、お金ばっかり言ってるはウンザリさー。塾も行きたくないし、無駄な勉強もしたくない!」


 涼太は意外と賢い子供のようで、学校の勉強は嘘が混じっていると嘆いていた。特に進化論なふど洗脳的な教育は問題だと大人みたいに口を尖らせていた。


 おもわず、篝火と悠一は顔を見合わせて苦笑してしまうが、母親の真緒よりよっぽど素直さを感じた。


「じゃあ、悪霊祓う? 悠一さん」

「そうだな」


 という事で悪霊祓いが始まった。涼太本人の意思が強いおかげか、すぐに悪霊は消えて行ってしまった。


『覚えてろよ! こもクソ男ども!』


 最後に悪霊は捨て台詞を吐いていったが、涼太は心底ホッとした顔をしていた。


「悪霊消えたよ。ありがとう神様。それにごめんなさい」


 素直な涼太の祈りの言葉に、これ以上悪霊が攻撃する事はないだろうと、二人ともホッとした。


 その後、真緒に連絡して涼太を迎えに来てもらう事になった。


 やってきた真緒は鬼の形相だった。


「ちょっと、何で塾行かないの? ママがどんな気持ちで塾代出しているか解ってる?」


 今にも涼太を叩きそうな勢いだったので、篝火が咄嗟に間に入った。


「そんな強く言うなよ。本人は塾行きたくないって言ってるんだからさー」

「真緒さん。こういう事は、あまり強制するものじゃないですよ」


 篝火と悠一に揃ってケチをつけられてしまった真緒は、バツが悪そうに口を閉ざしてしまった。


「ママ。夜の仕事もやめてよ。そんな事しても僕は嬉しく無いよ。どうせ終末が来るよ。お金稼いでる場合じゃなくない?」


 トドメは涼太のこの言葉だった。真緒は完全に黙ってしまった。


「終末が来るってどういう事?」


 確かに終末については聖書に書いてあるが、涼太はかなり自信満々に胸をはる。


「うん。ちょっと前にイエス様の夢を見たんだよ。姿形はよく見えなかったけれど、『私はすぐに来る』って言ってた」

「本当か?」

「本当?」


 ほとんど同時に悠一と篝火が声を上げていた。


「うん。いつかはわからないけど、神様が来るよ」


 涼太の言葉に、真緒は下を向いてしまった。どこか後悔している表情だったが、結局は、前と同じように心は頑なになっているようだった。


「帰るわよ、涼太」

「うん。でも僕はママとは違う人間だから、これからは教会行くよ? いいよね、ママ」

「……勝手にすればいいわ」


 そう吐き捨てると、真緒は涼太の手を引いて帰って行ってしまった。まるで嵐が過ぎ去ったように辺りは静かになった。


 涼太に出したバームクーヘンもコーラもすっかり空になっていた。


「真緒さんの悪霊追い出しは失敗したけど、涼太は成功って事でいい?」

「そうだなぁ。まあ、棚ぼただけど、一応成功だ」


 真緒に事は心残りだが、一応涼太のエクソシストは成功と言って良いだろう。そう思うと、篝火の自信もちょっと回復してきた。

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