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オレたちエクソシスト  作者: 地野千塩


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お金の誘惑編(9)

 その夜、この結果を夕飯を食べながら悠一に話した。


 断食を続けようかと思ったが、真緒の事で心が折れてしまった。


 ひとまず、断食は中断していつも通り生活する事に決めた。悠一は、仕方ないといった様子で、食卓についた。


 今日の夕飯は、手抜きしてチャーハンだった。しかもクイック調味料を使ったので、冷やご飯を混ぜて炒めただけという感じだ。よっぽど普段、料理をしないのか、悠一は手抜きチャーハンでも嬉しそうの食べてはいたが。


「本当、真緒さんは頑なだよー。絶対こっちの聞く耳持たないって感じだった」

「だろうな。もう諦めろ。神様は人間に自由意思を与えてるんだ。その上でお金を選ぶんだったらしょーがねぇよ」


 意外と悠一はドライだった。


「でもこの事で、教会が攻撃されたりしない?」

「まあ、真緒さんは追い出すしか無いだろう。神様よりお金って言ったんだろ?」

「うん。夜の仕事するんだってよ……」


 悠一は深いため息をついた。篝火はよく知らなかったが、夜の仕事も罪になりらしい。


「身体売らなくても罪?」

「もちろんさ。そんな一晩で大金を得るような仕事は、ろくなもんじゃねー」


 篝火はかつてホストみたいな事もやっていたので、背筋が寒くなってきた。


「献金もしたくないんだって」

「はぁー。アホだ、真緒さんは」

「牧師が言うと、献金目当ての人に聞こえるんですけどー」


 悠一はそんなお金が好きには見えないが、献金については思うところがあるようだった。


 ガツガツとチャーハンを食べ終えると、理由を語ってくれた。


「世の中にあるものは、全部神様のもんなんだよ。仕事できる健康、知能だって神様からの贈り物だぜ? それを十分の一返せばいいなんて、むしろ太っ腹じゃないか」

「でも、真緒さんみたいに困窮してる人もいるし……」


 反論しようとしたが、今日の悠一はなかなか饒舌だった。酒を飲んでいるわけでもないのに。


「世界で金持ちのユダヤ人だって献金やってるんだよ。っていうかむしろ悪い奴らなのに、そんな風に祝福されている事を、篝火もよく考えて見ればいい」

「うーん。わからん。どういう事?」


 篝火は陰謀論も好きだった時がある。確かに悪側のユダヤ人が、経済的に祝福されているのは、ちょっと納得いかないが。


「神様は公平なお方だ。悪い奴らの献金だって、きっちり祝福するんだよ。あのビル・ゲイツもやたらと募金とかやってるんだよ。ずる賢いよな、全く」


 なかなかヒートアップしている悠一にドン引きしながらも、こうして語る彼はなかなか楽しそうではあった。


 外見は、繊細そうに見えるが、中身は熱い思いをもっているようで意外だった。見直したというか、やっぱり悪い人には見えなかった。そもそも悪霊の影響で、家に住めない篝火に居候させてくれるのも、だいぶ優しいと改めて感じた。


「真緒さんに、その事言ったことある?」

「もちろんだよ。献金した方が良いって言ったが、オレが金の亡者扱いされた」

「うわー、伝わんないな。そもそも福音がわかってないのかも」


 悠一を金の亡者扱いする真緒の様子は、容易に想像がついた。


「カルトの奴らも熱心に献金やってるわな。そう思うと、日本のクリスチャンは経済力と組織力はカルトに負けてるんだよ……。篝火くん、情けねぇと思わないから? 最近はせっかく陰謀論で聖書に興味を持った人も反教会の悪霊に惑わされて、無教会派の野良クリスチャンばっかり量産されてるし」

「まあ、確かにカルトは、でっかい会堂あるな。クリスチャンは教会行かなくても良いとか呑気に言ってる人も多いけど、カルトはそんなユルい感じはしないよな」

「カルトやこの世の支配者は陰謀論なんて語られても痛くも痒くもないぞ。クリスチャンが集まって祈り、霊的な力をつける事が一番打撃なんだがな」


 篝火は、この町の駅前にカルトが建てた大きな会堂があった事を思い出してた。一方、この教会は老朽化し、礼拝室へと続く階段も急で入りにくい雰囲気は否定できない。


 しばらくカルトの問題について、悠一と篝火は語っていた。


 もっとも篝火は聞く側だったが、こうして熱く語る悠一は、少し眩しく見えた。


 一方、自分は真緒の説得にも失敗している。エクソシストをしたいと言いながら、何一つ上手く行っていない現状を思い返して、心がチクチクとしてきた。


 ちょうどそんな事を感じている時、チャイムが鳴った。


「オレがでるわ。Amazonで注文した本が届いたかも」


 篝火は、ハンコを持って玄関に行くと、そこには宅配業者ではなかった。


 真緒の息子、涼太が立っていた。


「おじちゃん、こんばんわ」


 涼太は子供らしい笑顔を向けた。まだ10歳ぐらいの為か、背負っている鞄がとても大きく見えた。


「おいおい、もう夜だぜ。さっさと家帰れ。っていうか送っていくよ」

「うんうん。いいんだ」


 涼太は、首を振っていた。


「おじちゃん、牧師先生にお願いがあるんだよ」

「お願い? っていうかオレっておじさんに見える?」


 純粋そうな子供におじさんに見られるのは、篝火は苦笑してしまう。


 どうせ子供の言う頼みは、些細なものだろうと思っていたが、涼太は意外な事を口走った。


「おじちゃん、僕の悪霊を追い出してくれない?」

「は?」

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