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オレたちエクソシスト  作者: 地野千塩


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お金の誘惑編(8)

 次の日、篝火は仕事を終えると真緒が働いているスーパーマーケットに直行した。


 真緒は、スーパーの店員をしていた。詳しいシフトはわからないが、運が良ければ会えるかも知れない。


 スーパーは教会の近くにあり、何度か働いている所を見かけた事がある。


 無計画に来てしまった事をちょっと後悔しかけたが、スーパーのおばちゃん店員に声をかけ、真緒に取り次いで貰う事に成功した。


 おばあちゃん店員にはイケメンビームを送り、サービス精神いっぱいで接したら、向こうも気を許してくれたようだ。


 すぐに真緒を取り継いでくれた。ちょうど仕事が終わったばかりの時間で、ラッキーだった。


「何、あんた。何の用?」


 真緒は篝火を見て、機嫌を悪くしていたが、人懐っこい表情を作った。


「ごめんよぉ、真緒さん。どうしても話したい事があるんだよ」


 機嫌の悪い真緒には安直なイケメンビームは通用しないと察し、とにかく低姿勢で頭を下げた。


「しょうがないわね。子供の塾が終わるまでよ」


 低姿勢な態度が効いたのか、意外とすぐに真緒は折れてくれた。


 スーパーで話すのは、色々問題なので、結局教会に向かった。


 礼拝室の隣にある多目的室に通し、お茶とバームクーヘンを出した。


 バームクーヘンは、桜が持ってきたものでまだまだ余っていた。適当に切って、小皿に乗せてテーブルの上においた。今日は少し暑かったので、アイスティーをコップに注いでおく。


 悠一は、用事があるのか教会にはいなかった。


 そのおかげか真緒は少しホッとしたような表情を浮かべていた。


「へぇ。あなた、今教会に住んでるの」

「うん。けっこう快適だよ」


 いきなり本題に入るのも難しいので、適当に雑談していた。


 バームクーヘンを頬張る真緒は、普通のアラフォー女性に見えた。今日は真緒についている貧困の悪霊も大人しくしていた。こなえだの事を思い出すと、篝火はちょっと怖くなってくるが、とりあえず今は大丈夫そうだった。


「子供は? 涼太君っていったっけ?」

「今は塾に行かせてる。学歴ないと人生詰むからね。できればいい大学行ってほしい」


 真緒のその言葉に、憑いている貧困の悪霊がザワザワと騒ぎはじめているのが見えた。周囲の空気がぐっと重くなり、この貧困の悪霊が真緒にヒソヒソと囁き始めていた。


「へぇ。真緒さんは大学へは?」

「言ったけど、学費の問題で中退しなければならなかったのよ」


 こんな話題は地雷だったと篝火は後悔した。しばらく不満そうに真緒は、お金について愚痴を呟いていた。もっとも背後にいる悪霊が言わせているものだったので、真緒の本心という感じではなかったが、聞いていてしんどくなってきた。


 断食中なので、目の前にバームクーヘンを置いたのも後悔した。普段は、食べ物に執着がないくせに、今は口の中が涎でいっぱいになる。慌ててアイスティーを飲み、食欲を誤魔化した。


「ちょっと、篝火くん、聞いてるの?」

「聞いてます、聞いてます!」


 真緒の愚痴を聞いていない事がバレそうだったので、慌てて言った。しかし、このままずっと愚痴を聞いている訳にはいかない。篝火は、姿勢を直して、真緒に向き合った。


「なあ、真緒さん。教会に帰ってきてくれないか」

「それは……」


 真剣な表情の篝火に、真緒は明らかに動揺し始めていた。


「神様よりお金のが大事?」

「そ、それは……」


 確かにお金は生活する上で大事だが、やっぱりそれ以上に真緒からが強い執着を感じた。この場合、やっぱりいくら他人が悪霊祓いをしても意味がないかもしれない。悠一や直恵も言っいたが、本人が福音や悔い改めを無視した場合、また悪霊が戻ってくるらしい。


「正直にいうよ、真緒さん。実はオレは悪霊が見えるんだ」

「は?」


 意外と真緒は驚いていなかった。廃教しかけているとはいえ、聖書には霊の事がたくさん書いてあるので、受け入れやすいのだろう。


「貧困の悪霊がついてる」

「そう。やっぱりね」

「真緒さんを貧乏にしてる悪霊っていうより、お金に執着させて神様から心を離すっていう感じに見える。祓う? それともこのままにしておく?」

「それは……」


 真緒は迷っているようだった。


 篝火がこうして秘密を話したためか、真緒も事情を話してくれた。


 もともとお金にこまっていた真緒は、ずっと祈っていたらしい。しかし、いつまでたっても状況が変わらず、献金も苦しくてやめた。同時に金銭欲が強くなり、今は子供の教育費の為に夜の仕事も検討しているらしい。


「ちょ、真緒さん。夜の仕事はやめよう」

「いいのよ。どうせ若い頃は、そんな仕事もしていたし」


 やさぐれた口調で言う真緒に、篝火は完全にお手上げだった。今の状況は、真緒が好き好んで悪霊を招いているように見えた。


 卓弥のような人間が、地域にいくら悪霊を撒いても結局受け入れる本人が、受け入れなければ悪霊を招く事はできない。


「悪霊、そのままでいいの……?」

「ええ。もう私は献金もしたくないし、自分と子供の為だけに生きる。放っておいて」


 お手上げだった。


 二人で話せば真緒の気が変わると思っていたが、別にそんな事は無いようだった。


「じゃあね。もう話しかけないで」


 真緒は、そう言い残して帰って行った。


 テーブルの上には、食べかけのバームクーヘンが残されていた。さっきまでは食欲を感じていたが、やっぱり食べたく無くなってしまった。

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