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オレたちエクソシスト  作者: 地野千塩


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お金の誘惑編(4)

 数日が過ぎた。


 雲雪は、福音を受け入れ悔い改めをしたので、悪霊が元に戻ってくる事はなかったが、ミュージシャンとしては細々と活動して行きたいなどと言っていた。


 結局悪霊をいくら祓っても本人が福音を受けいれず、悔い改めもしなければ意味がない。また悪霊が報復しに来て元より酷い事になる。その点、雲雪については安心だったが、問題は悪魔崇拝者である卓弥である。


 悠一が調べた結果だと、表向きは拝み屋として綺麗なホームページを作り、集客しているらしかった。


 ただ、霊的に守られているクリスチャンには呪えない。口コミでは、そんなクリスチャンを呪って返って酷い目にあったコメントも載っていたが、依頼する人が後を絶えないようだ。絶賛するコメントも多く寄せられていた。


 悠一は雲雪から聞いた住所を頼りに卓弥のオフィスを探したそうだが、もぬけのからだった。代わりに挑発するコメントが書かれた手紙が、オフィスのドアに挟まっていた。


『クリスチャンを呪う。絶対呪ってやる! 神谷悠一、篝火! 覚えてろよ! 雲雪の事は、よくもやってくれたな!』


 このコメントを見た篝火は、震えあがったわけだが、いつものように夕食を作れと悠一に命令され、キーマカレーを作った。


 キーマカレーも見た目の割には、手間がかからず作れる。ズボラな人にとってひき肉を使った料理は偉大だ。餃子はめんどくさいが、こうして手を動かしていると篝火の気分も落ち着いてきた。


 キーマカレーのスパイシーな香りも何かメンタルに良い作用でもあるのだろうか。


 ビビっていた篝火だが、キーマカレーを作り終えた時には、落ち着きを取り戻していた。


 食前の祈りを捧げ、キーマカレーを食べ始めた。


「カレーの香辛料の香りって食欲増したり、良いらしいよ」

「へー」


 悠一は意外と物知りなのか豆知識を披露した。


「だから、被災地なんかではレトルトカレー出すといいらしい。聖書に出てくるフランキンセンスっていうアロマもメンタル安定にとてもいいらしいよ。篝火くんは、香料の会社にいるけど、知らないか?」

「全く知らない。うちの会社で使ってるのは、全部化学物質の人口香料だって」

「そうか。まあ、そうだろうな」

「フランキンセンスってどんな香りなん?」

「奥ゆかしい香りだよ。森にあるレモンって感じ」

「なにそれ、意味わからん」


 そんな下らない話だったが、卓弥からの脅しのような手紙の事を忘れられて、少しホッとしてきた。


 新約聖書には、イエス様の誕生を祝い、東方の三賢人が黄金・乳香・没薬を捧げたという箇所があるという。この乳香が、フランキンセンスの別名だ。


 フランキンセンスには神権を象徴しているらしい。


「救世主に捧げるにピッタリな香りというわけさ」

「ふーん。悠一さん、意外と物知りだなー」


 やっぱり卓弥と関係のない会話は、安心してきた。


 キーマカレーの皿がちょうど空になった頃、なぜか直恵と桜も訪ねてきた。


「来たわよー、篝火太郎くん!」


 桜は相変わらず呑気そうだった。そんな桜のおかげですっかりこの場が和んだ。


 しばらく桜が手土産にっもってきたバームクーヘンを食べながら、ゆっくりとお茶を楽しんだ。バームクーヘンの甘さに頬が緩む。


 しかし、直恵は渋い顔だった。バームクーヘンを一緒に食べてはいるが、あまり手をつけていない。


「悠一先生から聞いたわ。変な悪魔崇拝者から呪いみたいな攻撃受けてるんですってね。どうするの? あなた達はいいかもしれないけど、あいつら狡猾よ。弱いものに攻撃が向かうかもしれない」


 現実的な事を言われ、さすがの桜も押し黙る。


「弱いものって誰よ?」


 篝火は内心びびっていたが、それを悟らせないように、胸を張って去勢を張る。もっとも、そんな姿は他の誰も気づかず、スルーされているわけだが。


「例えば、子供とか。信仰の弱いクリスチャンとか。そうそう最近、栗田さんは、礼拝出てないわよね。大丈夫?」


 直恵の指摘に、この馬の空気が張り詰める。確かに最近この教会で礼拝に出席していない信徒がいた。栗田真緒というシングルマザーだ。子供もクリスチャンだが、二人とも全く出席しなくなった事を篝火は思い出す。


 さすがの悠一の顔も青くなってきた。


「どうしよー、直恵ちーん」

「情け無い声をあげないでよ、篝火。とりあえず、あいつら悪魔崇拝者が地域に悪霊を撒く事が多いから、近所をまたパトロールするのがいいんじゃない?」


 直恵はあくまでも冷静だった。


 という事で、直恵に提案にみな賛成し、この教会の近所を再び見回る事になった。

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