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カルン王国記演義  作者: ユリシーズ
最初の英雄
42/191

帝国

アイン帝国首脳部は焦っていた。西方は『コールティアの英雄』ミュラー大佐らのおかげで講和に持っていくことができた。


だが、それでコールティア方面の兵を防備に回せると言うことで現在の防衛兵をテレシアに向かわせたにもかかわらず、惨敗して帰ってきたのだ。


挙句、ついこの前テレシアとヴォロイが同盟を組んだと言う話だった。すなわち、この2国とカルンとがいっぺんにアインに攻めてくると言うことだ。


それに乗じたレゲードン共和国に攻撃されれば既存の兵力では対応はできない。


対応するためには、大陸にいる国家の中で唯一我々との敵対関係を公表していないエレインと同盟を結び、出来るだけ敵を減らすこと、援軍を出してもらうことしかない。


アイン帝国はたびたび起こる戦争によって、慢性的な食糧不足に苛まれている。敗戦も重なっている。そのため、各地で暴動が起きているのだ。


この暴動に兵力を割かねばならない。出兵ができる状態になかった。しかし、若い将校たちはそれを分かっておらず、


「皇帝陛下の権威を知らしめるために、長期出兵し敵を討伐するのみです!」


何代も権力を相続した皇帝も軍事への理解を全くしていなかった。


「皆の言う通りじゃ!愚かなる者どもをなぎ倒し、我が帝国の権威を示すのじゃ!ゲーフェルト元帥、出兵の準備をせよ」


フリードリッヒ・フォン・ゲーフェルトは生粋の軍人だ。軍事以外のことには頭が回らない男だが、子爵のでながら元帥になった、その能力と忠誠心は賞賛される者だった。


だから、皇帝や若い将校の考えが厳しいこともわかる。皇帝に無理難題を押し付けられ、苦悩した。だが、皇帝陛下の勅命だ。忠誠心の塊のゲーフェルトは何としてもやらねばならないと思った。


とりあえずは目下の敵のテレシア、ヴォロイへの出兵にすることにした。そして、兵力。これは防御兵を割けば20000は出せる。


民衆への対応はどうするべきか。そういえば『コールティアの英雄』とか言う奴がいたな。そのものが出兵のするならば、少しは民衆の不満を和らげることができる。


それに失敗すれば切っていい人材だ。階級もこの前、民衆暴動の鎮圧で准将に昇進していた。何らかの理由で少将まで昇進させて特別に20000率いさせればいいのだ。


ゲーフェルトは苦し紛れではあったものの、若い未来のある将官を使ってなんとか解決された。しかし、ミュラーには災難以外の何でもない。



ミュラーは人事部に呼ばれると、人事部長のカウフマン大将に


「卿は今日が誕生日だったな。誕生日祝いの昇進だ。ミュラー少将」


ミュラーは何か裏があることを察した。しかし、拒否するわけにもいかない。給料も上がる。

結局断らずにその昇進を受けた。


翌日、ミュラーは作戦本部に呼ばれた。作戦本部長のゲーフェルト元帥に


「卿に20000近くの兵を率いてもらい、ヴォロイ王国を攻めてもらう」


「はっ!どのあたりまで攻め込みますか?」


「それは卿に任せる」


ミュラーはなんとなく予測はしていたが、ここまで酷いものだとは思っていなかった。おそらく元帥も振り回されているのだろう、と思った。要するに皇帝陛下の勅命か。


受けないわけにはいかないミュラーは、渋々命令を受け取ったのだった。


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