苦労
ミュラーは頭を抱え込みたかった。己の上官と同様、上からの命令には逆らえず苦悩するほかなかった。
私に与えられた兵数は
近衛兵1500名
重装騎兵500名
騎馬兵4000名
槍兵11500名
鉄砲兵500名
の、合計18000の兵だった。明らかに少将の地位に相応しくない大部隊だ。失敗したら首では済まないだろうと考えると、頭が痛い。
最後の鉄砲兵500名というのは、最近開発された兵器で15メートルほどの距離から撃つと鉄の球が飛び出て敵に当たるという代物だった。
殺傷能力はかなり高いらしいが、射程距離が短いことや、使ってからもう一度使えるまでに時間がかかることが難点だ。
研究は重ねてきているが、実践は初めてだそうでどう転ぶかもわからないとのこと。
そんなことでたまるか。私は突然大量の兵を渡され、時期に相応しくない出兵を課されているにもかかわらず、新兵器の実験台だと!馬鹿げている。
流石に口には出せないが、悔しいものだな。カイン先輩ならどうするだろうな。
あの人は、心の中は誰よりもおとなしいにもかかわらず、心の中では毒づいている人だ。自分が完全に彼に似てきていることをも自覚せざるを得ない。
なんだったら、彼よりも心の中で毒づいているな、私は。
嘆いているだけではどうにもならない。どうせ、覆すことはできない。自分の命のために勝つことを考えよう。
そういえばヴォロイ王国とテレシア、カルンが同盟を結んだらしいが、カルンに先輩がいたな。もしかしたら相対するかもしれないな、、、。
士官学校時代、一番よくしてくれた先輩だ。テレシアで戦った時も正直、逃げ出したい気持ちだった。
あの人は士官学校の成績では普通だったが、戦術戦略においては右に出るものがいない人だったからな。誰も気づいてはいなかったが。
いつのまにか、過去を振り返るようになったな。未来をしっかり見据えなければならないのだから、これからのことを考えよう。
ヴォロイ王国へ出兵するとはいえ、曖昧ではまずい。まず目標はどこにするかな。妥当なのはヴォロイ王国最大の要塞、パーツェバルを占領することだ。
ここをとれば一気にヴォロイ王国との争いを有利に持っていける。だが、この兵力で落とせるかな。
と言ってもここを落とさない限りヴォロイ王国の首都ハーペルンへはいけない。そうすると、今回の出兵は失敗だと言われ私が処刑される。
これは困る。仕方がないから、パーツェバルを占領を最終目的として出兵しよう。
信頼にあたる人間もいない。司令官というものはかなりの精神力が必要だから、信頼できる人材に一部を任せたいのだがな、、、。
これは私事でも同じことかな。結婚とかするべきなのかな。まぁ、相手がいないことにはどうしようもないか。
まずいな、思考が色々なところに分散する。疲れているのかな。
ミュラーは忙しさに押し殺され、苦労しながらも兵たちを編成し、ヴォロイ王国のパーツェバルを占領せんと出兵した。
当然ながら、ヴォロイ王国がその動きを感知し、テレシアへの救援要請を行った。
それにより、出兵するのはカインだ。
カインとミュラーはある戦いを境に大きくかけ離れた人生を歩み、これから、大量の兵を持って戦おうとしていた。




