Chapter 3-3 「勇者祭前半戦」
──さて、どうする。目の前の飛行型は、ジジジ……と変な音を出しながら飛び回ってやがる。リーチが足りないのは俺も同じで、こいつにレーヴァテインを当てるには飛ぶか、叩き落とすしかねぇ。
「うおぉあ!?」
……速いな、あの光線。目元が光ったあとに放たれるから攻撃予兆としてはわかりやすいが、見てから反応したんじゃ避けられねぇ。現にガイルの太ももに光線が当たり、痺れてるのか片膝をついてその場でうずくまっている。これが訓練じゃなく本物だったら、こいつはもう戦えない身体にされてるだろう。
──また赤く目元が光った! 俺は急いで地面を蹴って横へ飛ぶ! 光線は俺の足をかすめたようで、つま先が痺れるような感覚を覚える。このままじゃジリ貧……光線は避けられねぇし有効打も持ってねぇ。レーヴァテインをぶん投げるって手もあるが、外したら終わりだ。
「……おいガイル、力には自信あるか?」
「あたりめぇよ!」
「俺をあいつに向かってぶん投げろ」
「正気か!? いや、ぶっ飛んだ発想、それでこそ漢だぜぇ!」
俺たちが話している間にも、あいつは不規則に飛びながら、次の光線を準備してやがる。連射が出来ないところは助かるが、まともに食らったら1発でリタイアだろう。俺はガイルを向きながら頷くと、ガントレットを引き、籠手が白い光を放った!?
「乗れ、フェイッ! この距離じゃ届かねぇ、かっ飛ばすぜ!」
言われるがままガイルの聖剣に乗ると、腕に力を込めた!? おい待て、投げろとは言ったが、スキルを使えだなんて言ってねぇぞ!?
「聖剣技、灼熱拳ゥゥッ!」
──ガイルの籠手、肘部分が発火し、爆発する! その威力を利用して、超高速で振られた腕によって、凄まじい速度で射出された!?
「ぐっ……おおおぉ!」
「ギィィィ!?」
……すれ違いざまに、レーヴァテインによる斬りつけを食らった飛行型は真っ二つになり、力なく地面に落ちて爆発した! よし……いや、待てよ……!?
これ、着地どうすんだ!? ゆっくりと落ちていく俺の身体、眼下には大小さまざまな石が転がる砂地。ここに落ちたら全身打撲であの世行きだ!
「……は?」
どう受け身を取ろうか考えていた脳が停止する。砂地の丘を越え、俺の身体が投げ出され、下を見ると……遥か下に、生い茂った森が広がっていた。
「どわあああっ!」
──俺の身体はその森へ向かって急降下し、緑の葉を押しのけながら着地した! いってぇ……枝によって俺の制服はボロボロに引き裂かれていて、所々出血してる。葉と土の地面が緩衝材になっていなかったらもっと酷い怪我をしてただろう。
ガイルには悪いが、飛行型の3点は貰っとくぜ。この怪我と引き換えじゃ割に合わねぇけど。
「──諸君、制限時間だ! 訓練場へ帰還しろ!」
バーンリーの声が頭で響き、俺はぼろぼろになった身体を引きずりながら訓練場へ戻っていった……。
† † † † † † † † † † † † † † † †
「フェイさんっ!? す、すぐに治療しますね!」
訓練場へ着くと、俺の怪我を心配したシャルに治癒魔法を使ってもらった。シャルからは「そんなに激しい戦闘をしたんですか!?」と驚かれたが、ガイルによって投げ飛ばされて、崖下に落ちて出来た怪我だ、とは言えずに「まぁな」と雑な返事を返しておいた。
「──前半戦の集計が終わった! 順位は以下の通りだ!」
訓練場に立てられた大きな木製の看板に、結果が貼りだされた。俺の名前は……お、6点で6位か。あの飛行型の点数も加算されているようで、これで後半戦には進める。知ってる名前で言うと、ガイルが7位でアルベールは8位。あとは……俺たちより前世代の勇者たちか。順位に応じて初戦の相手が決まるようで、組み合わせを確認する。
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勇者祭 後半戦1回戦
第37勇者隊序列1位アーヴァイン・フォン・オーデンセ 対 第38勇者隊序列1位アルベール・フォン・オーデンセ
第37勇者隊序列2位シグルーン・ミネルヴァ 対 第38勇者隊序列2位ガイル・シモンズ
第37勇者隊序列6位シイナ・キサラギ 対 第38勇者隊序列30位フェイ・シュトラール
第37勇者隊序列9位ゼノン・バーキッシュ 対 第1勇者隊序列2位ラース・マクシミリアン
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「うへぇ、ガイルとアルベールはキツい相手に当たったな」
「で、でもっ後半戦に出られるだけ凄いですよっ! フェイさんも応援してますからねっ!」
「まぁ、やれるだけやってみるわ」
アルベールの対戦相手は自分の兄貴、最強の勇者アーヴァイン。ボッコボコにされて、また自信をなくさなきゃいいんだけどな。
ガイルの相手はシャルの姉、あの特質型徘徊天使を1撃で葬ったミネルヴァ。あれは俺でも勝つのは無理だろうな。
俺の対戦相手は知らねぇが、東方人か? 栄勇の世代と言われている第37勇者隊の6位……強い勇者なのは間違いねぇだろう。
気になるのは、第1勇者隊の生き残りがいるってところだ。今から37年前……50歳は超えてそうな年齢だが、まともに戦えるのか?
「……フェイ、やはり君も上がってきましたか」
「よぉアルベール。お前がボコボコにされるところ見ててやるから、安心しろ」
「簡単に負けるつもりはありませんよ。君との再戦を果たすためにも、負けるわけにはいかないのでね」
「別に俺は再戦に興味はねぇんだけどな……」
──俺は訓練場の脇に設置された観客席へ座り、観戦することにした。怪我人が続出するようで、シャルは治癒師ということもあって、救護室前で待機するようだ。魔法も聖剣技も使えるこの決闘形式は、いくら防護魔法をかけると言っても実戦と殆ど変わらない。俺も本気でやらねぇとな。
初戦はアルベール対アーヴァイン、いきなり新旧序列1位が戦うとあって、俺の周りの勇者たちが盛り上がってる。他国の貴族たちもこの勇者祭を観戦しに来ているようで、禁書庫で見たあのジジイも観客席に座っていた。
「ねぇねぇ、どっちが勝つのかなぁ!? そりゃあもちろん、ボクとしては同期だしアルベールに勝ってほしいけど!」
「……まぁ、現実はそうならないんじゃねぇか? あいつ……さすがにヤバそうだぜ」
俺の隣に座ったイリアへ返事をして、視線を正面に向ける。木の柵に囲まれた、四角形の舞台に立つ男……あれが最強の勇者、第37勇者隊序列1位金剛級勇者……アーヴァイン・フォン・オーデンセ。見た目は少し荒々しくなったアルベールといった感じで、金髪に青目という特徴は同じようだ。だが、身体はひとまわりアルベールより大きく、とてつもない威圧感を放っている。その証拠に、対面しているアルベールが半歩後退した。凄まじいプレッシャー……この会場全体を包むような緊張感だった。
「──では、第1試合……開始ッ!」
──アルベールが踏み込み、いきなり片手剣でアーヴァインに斬りかかった!? 美しく、無駄のない動きはアーヴァインの盾を捉え、受け止められはしたものの表情が変わった。
「……いい剣だ。随分鍛錬をしてきたようじゃないか」
「ぐっ……止められるとは……思っていませんでした」
──ウォォォ! いきなりの開戦に観客の熱狂が増し、叫び声で会場が揺れる!
へぇ、兄に勝ちたいっていう気持ちは本物のようだな。あれだけ冷静で、弱気だったアルベールが先手を打った。俺はあいつの雄姿を見届けようと、少し前のめりになる。これだから人間って奴はおもしれぇ。お前がどれだけキツい鍛錬をしてきたのか、俺は知ってる。……見せてみろよ、お前の覚悟って奴を!
「しばらく見ないうちに、お前も成長していたのだな」
アーヴァインが盾を押し、アルベールが後退する。剣を抜き、自分の顔前に掲げながら言い放つ。
「……全力で行くぞ、アルベールッ!」
──天才と天才の戦いが、始まった。




