↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/41

Chapter 1-9 「作戦会議」

「──このパーティのリーダーを務める、アルベールだ。まず、今回の概要を説明する」


 アルベールが主導し、聖剣の素材となる魔物の核を手に入れるため、迷宮攻略の作戦会議が俺とスコットの部屋で始まった。


「迷宮攻略では大まかに3つの役割に分ける。前衛を務め、パーティの盾役になるのは僕とドゴン。そして後方からの支援を行うのがスコット、イリア、そしてシャルロッテ。本人からの希望もあり、フェイには遊撃を務めてもらう。主に前衛が敵意を取り切れなかった魔物を対処してもらう」


 全員が頷き、アルベールの基本陣形に賛同する。


「……この6人の中で、一番戦闘経験が豊富なのはフェイだ。彼は僕の目の前で、あの徘徊天使を倒している」

「その話ほんとだったんだぁ!? フェイ、凄いね~!」

「……まぁ、雑魚天使だったからな」

「そこで……フェイに聞きたい。僕たち勇者見習いが、天使や魔物と戦うのに足りていない部分があれば教えてほしい」


 ……足りてない部分か。まぁこれは育ってきた環境によるものだから何とも言えないが、いい機会だからアルベールに聞いてみる。


「アルベール、お前の剣、流派は何だ?」

「……勿論、オーデンセ流だ」

「そのオーデンセ流ってのは、どういう流派だ?」

「そうだな……剣と盾を扱うオーソドックスなスタイルではあるが、特徴的なのは盾の使い方だろうか。盾をもう1つの武器として、攻撃的に使う」


 そう、それだ。一度戦ってみてわかったが、アルベールの剣技は洗練されすぎている。いい意味で言えば美しいが、悪い意味で言えば読みやすい。それじゃあ……天使は殺せない。

 

「俺との模擬戦みたいに、ってことだよな?」

「ああ」

「……じゃあ改めてお前たち全員に聞くぜ。このヴァルハラ勇者寄宿学校での鍛錬や教育も含めて、お前たちが今日まで学んできたものはいったい何のためだ?」


 ……全員が考え込み、答えを探しているようだ。そう、俺と、俺以外の勇者見習いでは決定的な違いが1つある。


「……わからない。教えてくれないか、フェイ」


 スキンヘッドの戦士、ドゴンが低い声で俺に聞く。こいつらの常識に、俺は斬りかかる。


「恐らく、お前たちが今まで学んできた剣技や魔法、教育は、対人を想定してる。例えばアルベールの流派であるオーデンセ流は、盾の使い方を工夫してるって言ってたが、それは人間の武器や急所を狙って無力化するためのものだろ? 模擬戦でイリアの魔法も見たが、あの遅さじゃ天使には当たらねぇ」

「なるほど、確かに……」

「──俺の剣は、我流だ。白化した大地で育った俺は、野生動物や魔物、天使たちがうじゃうじゃいる文字通り地獄で生きてきた。特定の型にこだわっていちゃあ、とっくに死んでたわけだ」


 ベッドから立ちあがり、続きを話す。


「──つまり、俺とお前たちとの違いは……経験と柔軟性だ。俺は対峙する相手に応じて戦い方を変えるし、使う獲物にこだわりも無(ね)ぇ。いいか、良く聞け。戦いで一番重要なのは、相手の弱点を的確に見極めて、そこを突くことだ。それ以上も、以下もねぇよ」

「いったい、君は何者なんだフェイ……!?」

「俺は人に何かを教えたこともねぇし、世界の命運とやらにも全く興味がねぇ。だけどよ、シャルやシグルーンの期待を裏切りたくはねぇし、アルベールの熱意を無下にするクソ野郎に成り下がるつもりもねぇ。いいか、俺がこの迷宮攻略でお前たちに戦い方を叩きこんでやる」


 スコットが驚きながらも、俺に問いかける。


「フェ、フェイさんは寄宿学校でも教えてくれない、天使の倒し方もわかるんですか……!?」

「まぁな。厳密に言うと、寄宿学校は天使の殺し方を教えないんじゃない。恐らく、わからない、が正しい。聖剣と勇者の力に頼り、倒せたら勇者の実力、倒せなかったらそれは勇者の実力が足りていなかった、で片付けられる。その証拠に、ざっと教科書に目を通したが、どこにも天使に関する情報は載ってなかっただろ?」


 ──全員が考え込み、教科書の内容を思い出しているようだ。だが、俺にも腑に落ちない部分はある。第37勇者隊も、それ以前の勇者隊も、終末戦争で勝てていないとはいえ、アヤメやシグルーンのように生き残りはいたはずだ。敗北をしたのに生きている、つまり天使どもから逃げたってわけだ。それなのに、天使たちの情報がないだなんて矛盾してやがる。

 ……あり得るのか、そんなことが? あいつらの動きは人間より速く、到底逃げられるようなものじゃないのは身をもって知っている。今は……考えても答えはでねぇか。 迷宮攻略が終わったら、シグルーンに聞いてみるとしよう。

 

「フェイは、どうやって天使の殺し方を学んだの!?」

「んなもん、殺しまくるしかねぇだろ。あ、あとは1回天使の腹ん中引き裂いて解剖したことはあるな」

「……規格外ですね、貴方は」

「環境が違った、ただそれだけだろ。これ以上長話していてもしょうがねぇし、行くぞ……迷宮へ!」


 俺たちは部屋から出て、迷宮へと向かった──。

 

 † † † † † † † † † † † † † † † † † †


 ヴァルハラ勇者寄宿学校の正門から出て、俺たちは街道を歩く。昼前に出発し、半日ほど歩けば目的地だ。ふと横を見ると、魔法使いのイリアがドゴンにおんぶしてもらっている。まだ歩き始めてから1時間も経ってないぞ。


「……おい、自分で歩かせたほうがいいんじゃねぇか?」

「ボクはエルフだから体力がないんだよぉ~」


 ドゴンの背中に身体を預け、イリアは満足そうな顔で言い訳を言う。

 

「仮にもこいつはお前の髪の毛を燃やし尽くした極悪人だぞ? いいのかこれで?」

「……問題ない。髪はいずれ、生えてくる」


 そういう問題なのか、と突っ込みを入れようとしたが、本人が気にしていなさそうだったのでスルーした。それにしてもデケぇなこいつ……。身長は2メートル近くあり、髪型も相まって遠目で見たら魔物と何ら変わらない風貌だ。

 アルベールとシャルは問題なく歩いているが、スコットも問題がありそうで、やはり華奢だからか体力が無い。そもそも、なんでそんなデカい荷物を持ってるんだお前は。自分の背丈よりも大きな革鞄を背負って歩いているからか、余計疲れそうだ。

 

「はぁ……はぁ……」

「……俺が言うのもアレだが、お前よく勇者見習いになれたな」

「ぼ……ぼくもそう……思う……」


 俺たちは迷宮攻略のため、実戦用の武器をヴァルハラ勇者寄宿学校から借り受けている。俺は短剣を選び、アルベールは剣と盾、シャルはメイス、ドゴンは両手斧、そしてイリアは両手杖を選択した。だが、スコットは武器を持っていない。そもそもこいつが戦っているところを見たことがないんだが、この調子で大丈夫なのか……?

 一抹の不安を抱えながら街道を抜けると、広漠とした平原に出る。目的地は平原の奥、山岳地帯の洞窟にある迷宮だ。もう少し歩けば、目的地へ到着するだろう。


「……すけ……てっ!」

「……ん?」


 正面から誰かが走ってくる。寄宿学校の制服を着てるってことは、同期か? 物凄い形相で叫んでいる。


「はぁ……はぁ! 助けてっ……もらえませんかっ! 迷宮内に……称号付き(ネームド)がっ!」

「称号付き(ネームド)、ってなんだ?」

「……魔物は冒険者や騎士、勇者たちによって狩られていますが、何らかの要因で進化し、長い間生き残った特殊な個体のことを称号付きと呼びます」


 アルベールから説明を受けてもピンとこなかったが、とりあえずそこらの魔物より強いってことか。


「おい、そいつのところまで案内しろ」

「なっ、フェイッ!? 危険です、称号付きは天使と何ら変わらない異形ですよ!」


 鼻で笑い飛ばし、当たり前のように俺が説明する。

 

「丁度いいじゃねぇか。強い魔物の核なら、良い聖剣を作れるんだろ?」

「それは……そうですが……」

「んじゃ、決まりだな。行くぜ!」

 

 三つ編みの女は頷き、俺たちは彼女の後を追って迷宮へと走った──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。