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閑話:鉄の男と、溶けないアイス

「……勝さん、本当にこれでいいんですか?」

特殊防衛隊の購買部。

山本富樫は、目の前の光景に引き気味の声を上げた。

伝説の指揮官、藤田勝が真剣な面持ちで睨みつけているのは、最新鋭のレーザー銃……ではなく、期間限定の『特盛・琥珀バニラアイス』のカップだった。

「ああ。山名が最近、食が細いと言っていた。栄養補給は任務の基本だ」

「いや、アイスは栄養っていうか……ご褒美的なやつですよね?」

勝は無言でアイスを三つ、カゴに放り込んだ。

「田中にもやる。あいつは機材のメンテナンスで糖分を消費しているからな」

「(自分の分はないんだ……)」

山本は、上官のあまりのストイック(かつ極度の無自覚)さに肩を落とした。

その頃、女子寮の共同スペース。

「……はぁ、勝さん……」

山名貞子は、自室のベッドで悶えていた。

先ほど、勝に頭を撫でられた感触が消えない。正確には、彼が触れた瞬間に彼女の中のミネルヴァ因子が「求愛行動」と勘違いして、体温が40度近くまで急上昇してしまったのだ。

「ダメよ、貞子。私は半分バケモノなんだから。勝さんにこれ以上近づいたら、私、溶けちゃう……」

そこへ、ノックもなしに田中幸恵が入ってくる。

「おーい、山名さーん。勝が変なアイス買ってきたわよー」

「えっ!? 勝さんが……私に!?」

貞子は飛び起きた。

リビングへ向かうと、そこには仁王立ちでアイスを差し出す勝の姿。

「山名、食え。体温が高いようだが、これで冷やせ。作戦行動に支障が出る」

「は、はい! 喜んで!!」

貞子は、勝の手からアイスをひったくるように受け取った。

その瞬間、勝の指と貞子の指が触れ合う。

「(……あ、熱い。やっぱり熱があるのか?)」

心配して顔を覗き込む勝。

「(きゃあああああ! ゼロ距離! 勝さんの吐息がエネルギー結晶より熱い!!)」

貞子の頭から、シュウゥゥ……と物理的に湯気が上がった。

彼女の体内のミネルヴァ細胞が、アイスを食べる前にアイスを溶かしてしまうほどの熱を発している。

「おい、山名。アイスが液体になっているぞ」

「……し、幸せの味がしますぅ……」

ドロドロに溶けたバニラをストローで飲むような勢いで啜りながら、貞子は幸せそうに目を回した。

それを見守る勝は、「やはり栄養不足だったか」と満足げに頷いている。

「……ねえ、山本くん。あの二人、もう放っておいていいわよね?」

「……そうですね、田中さん。僕らには入り込めない聖域ですよ」

平和な(?)防衛隊の午後は、こうして更けていくのだった。

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