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花嫁とメイドの真珠

 朝の金城邸は、いつもより少しだけ慌ただしかった。


 大理石の床に、磨き上げられた銀の燭台。


 壁には金城家代々の肖像画。


 その広間の中央に、白いドレス姿の海宝瑠璃(かいほうるり)が立っていた。

挿絵(By みてみん)

 まだ本番用の花嫁衣装ではない。


 嫁入り準備のため、オーダーメイドしているウエディングドレスの仮縫いだった。


 瑠璃は名門女子大を卒業したばかりの二十二歳。

 旧家の御令嬢として育てられ、金城財閥の若き総帥、金城豊(きんじょうゆたか)の婚約者として、この屋敷へ通う日々が続いていた。


「豊様、いかがでしょうか」


 瑠璃は少しだけ頬を赤らめて尋ねた。


 豊は腕を組み、まっすぐ彼女を見た。


「ああ。よく似合っている」


「ありがとうございます」


 瑠璃は優雅に微笑んだ。


 だが、豊の視線は一瞬だけ、瑠璃の後ろへ流れた。


 そこには、メイド服姿の花園真珠(はなぞのましろ)が瑠璃の後ろに跪いていた。


 真珠は豊と同じ二十五歳。

 高校生の頃から金城家に住み込みで仕えているメイドで、幼なじみだった。


 そして、豪華客船の海難事故で互いに両親を失った、同じ痛みを知る者でもあった。


「坊ちゃま、紅茶でございます」


 真珠は静かにティーカップを差し出した。


「ありがとう、真珠」


 豊は自然に受け取った。


 ほんの短い視線。


 ほんの短い沈黙。


 けれど瑠璃は、それを見逃さなかった。


 豊が真珠を見る目は、婚約者を見る目とは違う。


 穏やかで、昔からそこにあったものを見るような目だった。


 瑠璃は胸の奥に、小さな棘が刺さるのを感じた。


「真珠さん」


「はい、瑠璃様」


「わたくしのドレスの裾、少し乱れていませんこと?」


 真珠はすぐに膝をつき、ドレスの裾を整えた。


「失礼いたします。こちらでよろしいでしょうか」


「ええ」


 瑠璃は真珠を見下ろした。


 黒と白のメイド服。


 清楚な肩ほどの髪。


 控えめな物腰。


 けれど、その胸元は豊かな曲線を描き、女としての存在感を隠しきれていない。


 瑠璃は思わず視線を逸らした。


「……ありがとう」


「恐れ入ります」


 真珠は何事もなかったように下がった。


 その姿が、瑠璃には余計に苦しかった。


 真珠は何も求めない。


 何も言わない。


 だからこそ、豊の心の奥にいるように見えた。


     *


 その頃、ダイフゴー基地では、蟹女が檻の中で丸くなっていた。


「カニ……」


 真珠が餌皿を持って近づく。


「蟹女様、お食事でございます」


 今日の皿には、マグロの切り身と甘エビが並んでいる。


 蟹女は檻の中から顔を上げた。


「カニィ」


 嬉しそうな声だった。


 真珠が小窓から皿を入れると、蟹女はそっと近づき、美味しそうに食べ始めた。


「カニ、カニィ」


「お口に合いましたか」


「カニ!」


 真珠は微笑んだ。


 その様子を、瑠璃が離れた場所から見ていた。


「真珠さんは、その怪物にも優しいのですね」


 真珠は振り向いた。


「瑠璃様」


「あの怪物は、まだ敵か味方か分からない存在ですわ」


「はい。ですが、お腹は空くと思います」


「そういう話ではありません」


 瑠璃の声が少し強くなった。


 蟹女は皿を抱えたまま、二人を見比べた。


「カニ?」


 瑠璃は檻に近づいた。


「あなたも真珠さんに懐いているのね。言葉も通じないくせに」


「カニィ……」


 蟹女は怯えたように少し下がった。


 真珠は慌てて言った。


「瑠璃様、蟹女様は何も」


「分かっています。怪物相手に嫉妬しているわけではありませんわ」


 言ってから、瑠璃は自分の言葉に苦しくなった。


 怪物相手ではない。


 本当は、真珠に嫉妬している。


 豊に選ばれる立場にいるのは自分のはずなのに、豊の心に近い場所にいるのは真珠のように見える。


 それが悔しかった。


     *


 海底王国カイサーン。


 クラーケンの玉座の間では、新たな怪人が召喚されていた。


 巨大な真珠貝をまとった女怪人。


 殻の内側は毒々しい虹色に光り、手には細い針のような貝殻の杖を持っている。


 真珠貝の怪人、アコヤネーラである。

挿絵(By みてみん)

「クラーケン様。わたくしアコヤネーラ、地上人類の心を濁らせてご覧に入れます」


 クラーケンは満足げに触手を揺らした。


「人間は欲深い。富を持つ者ほど、心の奥に濁った真珠を抱えている。そこを突け」


 アコヤネーラは笑った。


「嫉妬、羨望、劣等感。女の心に沈む泥を、わたくしの毒真珠で輝かせましょう」


 烏賊王子が静かに言った。


「狙いはダイフゴーか」


「はい、王子」


 アコヤネーラは恭しく頭を下げた。


「特に、黄色と桃色。あの二人の間には、濁りかけた真珠がございます」


 クラーケンは低く笑った。


「よい。心を乱せ。仲間同士を疑わせろ。ダイフゴーを内側から砕くのだ」


     *


 午後。


 瑠璃と真珠は、豊に頼まれて街の宝飾店へ向かっていた。


 婚約披露のための装飾品を確認するためである。


 豊は財前守と会議が入り、同行できなくなった。


 結果として、瑠璃と真珠が二人で出かけることになった。


 高級宝飾店のショーケースには、指輪、ネックレス、真珠の髪飾りが並んでいる。


 店員が恭しく箱を開けた。


「こちらが海宝家よりご指定いただいた真珠の髪飾りでございます」


 白く輝く真珠の飾り。


 瑠璃はそれを見つめた。


「綺麗ですわね」


「はい。瑠璃様にとてもお似合いになると思います」


 真珠が素直に言った。


 瑠璃はその言葉に、かすかな苛立ちを覚えた。


「真珠さんに言われると、不思議な気分ですわ」


「え?」


「あなたの名前も真珠でしょう」


 真珠は少し困ったように笑った。


「わたくしは、ただの名前でございます」


「そうかしら」


 瑠璃は髪飾りを手に取る。


「真珠は、殻の中で傷を包んで生まれるものだそうですわね」


「はい」


「あなたも、豊様の傷を包んできたのでしょうね」


 真珠は黙った。


 その沈黙が、瑠璃には答えに聞こえた。


「ずるいですわ」


「瑠璃様……」


「わたくしは婚約者です。家同士が決めた相手です。けれど、豊様の昔を知りません。事故のことも、幼い頃のことも、あなたの方がずっと知っている」


 真珠は目を伏せた。


「わたくしは、ただ坊ちゃまにお仕えしているだけです」


「本当に?」


 瑠璃の声が震えた。


「本当に、それだけですの?」


 その時だった。


 店の照明が一斉に消えた。


 ショーケースの真珠が、どす黒く光る。


 店内に、ぬめるような笑い声が響いた。


「美しい嫉妬ですこと」


 鏡の中から、アコヤネーラが現れた。


「誰ですの!」


 瑠璃が身構える。


 真珠はすぐに瑠璃の前に出た。


「瑠璃様、お下がりください!」


 アコヤネーラは二人を見て笑った。


「旧家の御令嬢と、身分違いのメイド。ひとりの男を挟んで、まあ美しい濁りですこと」


 瑠璃の顔が強ばる。


「何を言っているの」


「隠しても無駄ですわ。あなたの心の真珠、もう黒く染まりかけていますもの」


 アコヤネーラの杖から、黒い真珠が放たれた。


 真珠が瑠璃をかばう。


「危ない!」


 黒真珠は真珠の肩をかすめ、瑠璃の胸元で弾けた。


 どす黒い光が、瑠璃の心に入り込む。


「うっ……」


「瑠璃様!」


 瑠璃は胸を押さえた。


 頭の中に、声が響く。


 豊様はあなたを見ていない。


 豊様が本当に大切なのは、メイドの真珠。


 あなたは家が決めた飾りの花嫁。


「違う……」


 瑠璃は首を振った。


 アコヤネーラは笑う。


「違いませんわ。嫉妬は恥ではありません。女の心を輝かせる黒真珠ですもの」


 真珠は瑠璃の肩を支えた。


「瑠璃様、しっかりしてください!」


 瑠璃はその手を振り払った。


「触らないで!」


 真珠は息をのんだ。


 瑠璃自身も、自分の声に驚いていた。


 けれど黒い感情が止まらない。


「あなたはいつもそうですわ。控えめな顔をして、豊様の一番近くにいる」


「瑠璃様……」


「身分違いだから諦めている? それなら、どうしてそんな顔で豊様を見るの!」


 真珠の顔が青ざめた。


 そこへ、豊たち三人が駆けつけた。


「瑠璃!」


「真珠!」


 豊の声に、二人が同時に振り向いた。


 その一瞬、瑠璃の胸の黒真珠がさらに強く光った。


「ほら、来ましたわ。あなたたちの大切な豊様が」


 アコヤネーラは勝ち誇ったように笑う。


 財前守が端末を構える。


「カイサーンの怪人だ。精神干渉波を確認」


 京極怜音がギターケースを開いた。


「女の心をいじるとは、趣味が悪いぜ」


 豊は瑠璃に近づこうとした。


「瑠璃、大丈夫か」


 瑠璃は一歩下がった。


「来ないでください、豊様」


「瑠璃?」


「わたくしは、あなたの婚約者です。でも、あなたが本当に見ているのは……」


 瑠璃は真珠を見た。


 真珠は唇を噛みしめていた。


 アコヤネーラが杖を振る。


「さあ、もっと濁りなさい。仲間など、愛など、すべて黒真珠に変えてしまいなさい!」


 豊は叫んだ。


「ふざけるな!」


 豊は変身ブレスを掲げた。


「富轟チェンジ!」


 五人は一斉に叫んだ。


「ダイフゴー!」


 赤、青、黒、黄、桃の光が弾ける。


「巨万の勇気! フゴーレッド!」


「相場を制する知略! フゴーブルー!」


「漆黒の旋律! フゴーブラック!」


「気高き黄金の誇り! フゴーイエロー!」


「奉仕の真心! フゴーピンク!」


 五人が並び立つ。


「富轟戦隊!」


「ダイフゴー!」


     *


 アコヤネーラは店のガラスを破って外へ飛び出した。


 街の広場に、カイサーン戦闘員たちが現れる。


「ギョギョー!」


「海を汚す地上人を滅ぼせ!」


 ダイフゴーは広場へ飛び出した。


 フゴーレッドは二丁拳銃を構える。


「レッド・ミリオンショット!」


 光弾が戦闘員を吹き飛ばす。


 フゴーブルーは大砲銃を肩に担いだ。


「ブルー・マーケットキャノン!」


 敵の列が崩れる。


 フゴーブラックはギターアックスを振るった。


「ブラック・ロックアックス!」


 音波の斬撃が戦闘員たちを弾き飛ばす。


 だが、フゴーイエローの動きは鈍かった。


 黒真珠の力が、まだ彼女の心を乱している。


「イエロー!」


 フゴーピンクが駆け寄る。


「大丈夫ですか!」


「近づかないで!」


 フゴーイエローは反射的に弓を構えた。


 矢先がフゴーピンクへ向く。


 フゴーピンクは動けなくなった。


「瑠璃様……」


 アコヤネーラが笑う。


「撃ちなさい。あなたの愛を奪う女を、その手で射抜くのです」


「違う……真珠さんは……」


 イエローの手が震える。


 ピンクは剣を下ろした。


「瑠璃様。わたくしは、坊ちゃまをお慕いしています」


 イエローの動きが止まる。


 レッドも息をのんだ。


 ピンクは静かに続けた。


「けれど、それはわたくしの中だけのことです。わたくしはメイドです。坊ちゃまのお幸せを願うことが、わたくしの務めです」


「そんな言い方……」


 イエローの声が震える。


「そんなふうに諦めた顔をされたら、わたくしが悪者みたいではありませんか!」


「瑠璃様は悪くありません」


 ピンクは一歩近づいた。


「悪いのは、瑠璃様の不安につけ込む怪人です」


 アコヤネーラが杖を振った。


「黙りなさい、メイド!」


 黒真珠の弾がピンクへ飛ぶ。


 イエローが叫んだ。


「真珠さん!」


 イエローの矢が放たれ、黒真珠を撃ち落とした。


 その瞬間、イエローの胸元の黒い光にひびが入る。


 ピンクは走った。


 イエローの手を握る。


「瑠璃様。わたくしは、あなたを憎んでおりません」


「でも、あなたは豊様を……」


「はい」


 ピンクは小さくうなずいた。


「それでも、瑠璃様を傷つけたいとは思いません」


 イエローの黒真珠が砕け散った。


「真珠さん……」


 アコヤネーラが怒りに震える。


「なぜです! 嫉妬も劣等感も、確かにそこにあったはず!」


 イエローは弓を構え直した。


「ええ、ありましたわ」


 ピンクもピンクサーベルを構える。


「わたくしにも、ございます」


 イエローが叫んだ。


「だからこそ、人の心を勝手に濁らせるあなたを許しません!」


 ピンクが続けた。


「心の痛みを利用することは、奉仕ではありません。ただの踏みにじりです!」


 二人は同時に飛び出した。


「イエロー・ゴールドアロー!」


「ピンクサーベル!」


 金色の矢と桃色の剣閃が、アコヤネーラを切り裂いた。


「きゃああっ!」


 レッドが叫ぶ。


「みんな、決めるぞ!」


 五人の武器が合体する。


 二丁拳銃。


 大砲銃。


 ギターアックス。


 弓。


 ピンクサーベル。


 黄金の必殺砲、富轟バスターが完成した。


「富轟バスター!」


 五人が力を込める。


「ダイフゴー・ゴールドバースト!」


 黄金の光弾がアコヤネーラを直撃した。


「美しい黒真珠がぁぁぁ!」


 アコヤネーラは爆発した。


 だが、その直後、空に黒い渦が開く。


 クラーケンの声が響いた。


「海の悪魔よ、アコヤネーラの濁りし真珠を捧げ賜う」


 爆煙の中から、巨大な貝殻がせり上がった。


 アコヤネーラが巨大化して復活する。


「オホホホ! 今度は街ごと黒真珠にして差し上げますわ!」


 レッドが叫んだ。


「豪商軍だ!」


     *


 ダイフゴー基地の格納庫が開く。


 五体のメカが出撃する。


「ドゾウー、発進!」


「ギンカー、軌道安定!」


「コバンダー、行くぜ!」


「キンカー、参りますわ!」


「ドウカー、出ます!」


 五体のメカが空中へ舞い上がる。


豪商合体(ごうしょうがったい)!」


 赤い土蔵メカ、ドゾウーが胴体となる。


 黒い小判メカ、コバンダーが右腕へ。


 黄色い金貨メカ、キンカーが左腕へ。


 青い銀貨メカ、ギンカーが右足へ。


 桃色の銅貨メカ、ドウカーが左足へ。


 額に「富」の紋章が輝く。


「完成!」


豪商軍(ゴウショーグン)!」


 巨大ロボは街の広場に降り立った。


 巨大アコヤネーラは貝殻を開き、無数の黒真珠を放つ。


「黒真珠ミサイル!」


 豪商軍は剣で弾き返す。


 爆発が連続し、ビルの窓が震えた。


「真珠さん!」


 イエローがコクピットで叫ぶ。


「はい、瑠璃様!」


 ピンクが操縦補助を合わせる。


「左腕のキンカー出力を上げますわ!」


「左足ドウカー、姿勢を支えます!」


 キンカーとドウカーの回路が同期する。


 黄色と桃色の光が、豪商軍の左半身を包んだ。


 ブルーが驚く。


「二人の操縦補正が完全に一致している」


 ブラックが笑う。


「女同士のセッションってやつだな」


 レッドはうなずいた。


「行くぞ!」


 豪商軍は巨大アコヤネーラの攻撃をかわし、ハードカレンシーソードを構えた。


 アコヤネーラが叫ぶ。


「人の心は必ず濁るもの! 綺麗な真珠など存在しない!」


 イエローは言った。


「濁ることもありますわ」


 ピンクが続ける。


「けれど、磨くこともできます」


 二人の声が重なった。


「だから、あなたには負けません!」


 五人が叫ぶ。


「必殺!」


 豪商軍の剣が黄金に輝く。


「ハードカレンシー!」


 一閃。


 巨大アコヤネーラは真っ二つに切り裂かれた。


「わたくしの黒真珠がぁぁぁ!」


 大爆発。


 豪商軍は爆炎を背に、剣を空へ掲げた。


     *


 戦いが終わった夜。


 金城邸の庭園では、瑠璃と真珠が並んで立っていた。


 池には月が映っている。


 しばらく、二人は何も言わなかった。


 先に口を開いたのは瑠璃だった。


「真珠さん」


「はい」


「昼間は、ひどいことを言いました」


「お気になさらないでください」


「それが嫌なのです」


 真珠は驚いて瑠璃を見た。


 瑠璃は苦しそうに笑った。


「あなたはいつも、そうやって自分を下げます。怒ってもいいのに、傷ついたと言ってもいいのに」


「わたくしはメイドですから」


「その言葉で、全部隠してしまうのですね」


 真珠は黙った。


 瑠璃は続けた。


「わたくしは豊様の婚約者です。けれど、豊様の心を命令で手に入れることはできません」


「瑠璃様……」


「だから、怖かったのです。あなたが」


 真珠は目を伏せた。


「わたくしも、怖いのです」


「え?」


「瑠璃様は、坊ちゃまの隣に立てる方です。わたくしには、それができません」


 二人の間に、静かな風が吹いた。


 瑠璃は真珠の横顔を見つめた。


「では、わたくしたちは敵ですの?」


 真珠は首を振った。


「いいえ。少なくとも、今日の戦いでは仲間でした」


 瑠璃は少しだけ笑った。


「そうですわね。悔しいけれど、あなたの剣がなければ勝てませんでした」


「わたくしも、瑠璃様の矢に助けられました」


 少し離れた廊下から、豊が二人を見ていた。


 声はかけなかった。


 今は二人だけで話すべきだと思った。


 瑠璃も真珠も、それに気づいていた。


 だが、振り向かなかった。


 今はまだ、答えを出す時ではない。


 それでも、三人の関係は少しだけ変わり始めていた。


     *


 ダイフゴー基地。


 檻の中の蟹女は、真珠からもらった小さな真珠貝の飾りを見つめていた。


 もちろん本物の宝石ではない。


 戦いの後、壊れた店から回収された安物の飾りだった。


「カニ……」


 蟹女は、それを大事そうに抱えた。


 言葉は通じない。


 けれど、今日の真珠と瑠璃の声は、少しだけ分かった気がした。


 誰かを好きになること。


 誰かを羨むこと。


 誰かを守りたいと思うこと。


 それは、海の底でも地上でも、きっと同じなのだ。


「カニィ」


 蟹女は小さく鳴いた。



次回予告


 海底王国カイサーンより、新たなる幹部が地上へ現れる!


 クラーケンの息子、烏賊王子。


 そして、蟹大王の娘を名乗る謎の皇女、蟹皇女。


 檻の中の蟹女は、蟹皇女の姿を見た瞬間、激しく取り乱す。


「カニィ! カニ、カニィィ!」


 だが、その叫びの意味は誰にも分からない。


 烏賊王子は冷たく告げる。


「その蟹は、我らカイサーンを裏切った逃亡怪人にすぎぬ」


 ダイフゴーは、どちらを信じるのか。


 蟹女か。


 それとも、カイサーンの皇女を名乗る蟹皇女か。


 次回、富轟戦隊ダイフゴー。

 海底皇女あらわる


 その「カニィ」は、真実の叫びか。

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