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誕生 聖商龍

 小野寺翔太の秘密基地。

 住宅街の地下に隠された、小学生の部屋とは思えない研究施設。


 巨大なパワードスーツ、フゴードラゴンは整備台に固定されていた。

 その背後には、分解整備中のアトミック・ドラゴンの制御ユニットが並んでいる。


 翔太は、前回採取した戦闘データを解析していた。

 画面には、三つの力の波形が重ねられている。


 科学。


 魂。


 富轟エネルギー。


 そこに、リュビィから観察した「神秘の力」の記録が加えられていた。


 ココアを弾いた白い服。

 人間になってからも脱皮したという不可解な肉体。

 海の女神と大地の神の祝福。

 科学では説明できない。

 だが、翔太は諦めない。


「科学と神秘を分けて考えるから制御できないんだ。神秘を未知の法則として扱えば、回路に組み込める」


 彼は新しい合体プログラムを走らせた。


 画面に表示される文字。


『聖商龍 合体制御案』

『Purgatorium System』

『科学炉心・魂魄光・海陸神秘力 同期試験』


 翔太は小さく息を吸った。


「次の戦いで、完成させる」


     *


 海底の奥深く、カイサーン城

 クラーケンは玉座の上で、黒い泡を揺らしていた。


 その隣には、怪人ラピスラズリが立っている。

 彼女はもはや、ただの裏切り者ではない。

 大地の悪魔に選ばれた、カイサーンの新幹部。

 クラーケンが新たな強化怪人を生み出すために、必要不可欠な存在になっていた。


 烏賊王子も、もう彼女を侮れない。

「ラピスラズリよ」


 クラーケンが低く言った。

「ダイフゴーは新たな龍の力を得た。こちらも、それを砕く怪人を作る」


 ラピスラズリは優雅に一礼する。

「ええ。わたくしの怨念が必要なのでしょう」


「そうだ」


 クラーケンの触手から、海の悪魔の黒い泡があふれる。


「海の力だけでは足りぬ。地上を知るお前の大地の闇が必要だ」


 ラピスラズリの目が冷たく光る。


「地上を知る力、ですか」


 彼女は水晶の鏡を見た。


 映っているのは、海底に沈んだ廃車の山。

 人間が海洋投棄した車だった。


 油を漏らし、錆びつき、海を汚す地上の残骸。

 クラーケンが憎む、人間の汚れ。


 そして、元は地上の令嬢だったラピスラズリだけが、その意味を知っているもの。

「人間は、海に車まで捨てるのですね」ラピスラズリは冷たく笑った。


「ならば、それも怪人の力にして地上に返してさしあげますわ」


 クラーケンが黒泡を放つ。

「海の悪魔よ。海底に沈む海老の甲殻を呼べ」


 ラピスラズリが両手を広げる。

「大地の悪魔よ。地上の車輪、鉄、油、捨てられた文明の罪を怪人に与えなさい」


 黒泡と瑠璃色の闇が絡み合う。


 さらに、海底に沈んでいた車の残骸が引き寄せられ、ばらばらに砕けて渦へ飲み込まれた。


 牛の角を思わせる大地の力。

 海老の甲殻を思わせる海の力。

 虎のような黒い縞模様。

 そして海洋投棄された車の怨念。


 異様な怪人が生まれた。


 怪人ウシエビ男。


「ブモエビィィ……誕生したエビ」


 烏賊王子が顔をしかめる。


「牛なのか、海老なのか、虎なのか、車なのか、どれなのだ」


 ラピスラズリは冷たく答えた。


「全部ですわ」


 クラーケンは満足げにうなずく。


「ウシエビ男。ダイフゴーを砕け。特に、あの謎の龍を引きずり出せ」


「ブモエビ! 轢き潰し、挟み切り、踏み砕くエビ!」


     *


 湾岸の埋立地。


 そこは、かつて不法投棄された廃車が海底から引き揚げられ、処理されている場所だった。


 突然、地面が割れる。


 黒い海水と土色の泥が噴き上がる。


 怪人ウシエビ男が現れた。


 牛のような角。


 海老の硬い甲殻。


 黒い部分は虎のような縞模様。


 脚や背中には車輪のような部品が回転している。


「ブモエビィ! 人間が海に捨てた車の怨み、思い知るエビ!」


 車輪状の装甲が高速回転し、地面を削った。


 周囲の作業員たちが逃げ惑う。


「車輪で突進してくるぞ!」


「逃げろ!」


 ウシエビ男は牛のように突進し、海老の鋏で重機を挟み切った。


「ブモエビ! 車エビならぬ、車ごと海老エビ!」


     *


 金城邸の地下基地。


 警報が鳴る。


 守がモニターを見て叫んだ。


「湾岸埋立地にカイサーン反応。海の悪魔、大地の悪魔、さらに金属廃材反応」


 豊が立ち上がる。


「出るぞ!」


 リュビィは画面を見て眉をひそめた。


「海老……牛……車……虎?」


 怜音が言う。


「情報量が多い怪人だな」


 ソフィアが呟く。


「ウシエビか。車エビ科のブラックタイガーと、車を混ぜたのか?」


 守がすぐに検索する。


「ウシエビはクルマエビ科の一種で、別名ブラックタイガー。黒い縞模様はそれが由来と考えられる」


 豊が顔をしかめる。


「怪人のデザインに駄洒落が混ざり始めたな」


 真珠はふと顔を上げた。


「でも、ただの駄洒落ではないのではありませんか」


「どういうことだ?」


「第九話のウミウシ女を覚えていますか。あの方は、人間が作った剣を使っていました」


 守がうなずく。


「欧州式の長剣だった。カイサーン怪人が人間由来の武器を使用した例だ」


 真珠はモニターを見つめる。


「今回の怪人も、ただ車海老という駄洒落だけではなく、海洋投棄された車を取り込んでいるのでは」


 守が解析する。


「金属、燃料油、ゴム、塗料成分。確かに、海底廃車由来の成分が怪人反応に混ざっている」


 ソフィアが低く言う。


「その力を与えたのは、元は地上の人間だったラピスラズリか」


 豊は拳を握った。


「瑠璃……」


 リュビィは悲しそうに言った。


「海の悪魔と大地の悪魔だけじゃない。人間が捨てたものまで使ってる」


 豊はブレスを掲げた。


「止めるぞ!」


     *


 湾岸埋立地。


 ダイフゴーの五人が駆けつける。


「富轟チェンジ!」


「ダイフゴー!」


 五色の光が弾ける。


「巨万の勇気! フゴーレッド!」


「相場を制する知略! フゴーブルー!」


「漆黒の旋律! フゴーブラック!」


「荒波育ちの黄金魂! 新フゴーイエロー!」


「奉仕の真心! フゴーピンク!」


「富轟戦隊!」


「ダイフゴー!」


 リュビィも皇女の十字架を掲げる。


皇女の十字架クレースト・ツァレヴナ!」


「母なる海と父なる大地の命を持つ者!」


「愛の戦士リュビィ、参上!」


 ウシエビ男は黒い縞模様の甲殻を震わせた。


「ブモエビ! 来たな、富豪ども!」


 レッドが二丁拳銃を構える。


「お前がウシエビ男か!」


「そうエビ! 牛の突進、海老の甲殻、黒虎の縞、そして車輪の力を持つ最強怪人エビ!」


 ブラックが呟く。


「やっぱり盛りすぎだろ」


 ウシエビ男の車輪が高速回転する。


「ブラックタイガー・ホイール!」


 怪人は凄まじい速度で突進した。


 レッドが銃撃する。


「レッド・ミリオンショット!」


 弾丸は甲殻に弾かれる。


 ブルーが砲撃する。


「ブルー・マーケットキャノン!」


 ウシエビ男は横滑りでかわす。


 ソフィアが弓を引く。


「イエロー・ハードショット!」


 矢は黒い縞模様の装甲に突き刺さるが、すぐに弾き飛ばされた。


 ピンクがサーベルで斬りかかる。


「ピンク・サーベル!」


 だが、海老の鋏が刃を挟み込む。


「ブモエビ! 人間が捨てた車の鉄で強化された甲殻エビ!」


 リュビィがリュビィ・タクトを掲げる。


「リュビィ・タクト、ラブリー・スラッシュ!」


 白い光の剣が伸び、ウシエビ男の車輪を狙う。


 だが、怪人は牛のように頭を下げ、角で受け止めた。


「効かないエビ!」


 レッドが歯を食いしばる。


「硬すぎる!」


 ブルーが分析する。


「海の悪魔と大地の悪魔の力に加え、廃車由来の金属が外骨格を補強している。通常攻撃では突破困難!」


 ウシエビ男は高笑いした。


「ブモエビ! ラピスラズリ様から授かった地上の罪の力エビ!」


 ソフィアが低く言う。


「やっぱり瑠璃が……」


 真珠、フゴーピンクは胸を痛める。


「瑠璃様……どうして」


「答えは簡単エビ!」


 ウシエビ男が突進する。


「お前たちが裏切ったからエビ!」


 その言葉に、ピンクの動きが一瞬鈍った。


 ウシエビ男の車輪突進が迫る。


 その前に、赤い銃撃が入った。


 レッドがピンクを抱えて飛び退く。


「真珠!」


「申し訳ございません!」


「謝るな!」


 ウシエビ男はさらに暴れる。


「ブモエビ! まとめて轢き潰すエビ!」


 その時、空気が震えた。


 金属の足音。


 重い機械音。


 赤、黒、金の巨大パワードスーツが現れる。


 フゴードラゴン。


『そこまでだ』


 リュビィが顔を明るくする。


「ドラゴン!」


 レッドが振り向く。


「フゴードラゴン!」


 フゴードラゴンは静かに前へ出る。


『海を汚す力で戦う怪人は、許さない』


 ウシエビ男は鋏を鳴らした。


「出たエビ、謎の七人目!」


 フゴードラゴンの腕部装甲が開く。


『ドラゴン・ブラスター』


 青白い光弾が放たれる。


 しかし、ウシエビ男は車輪で地面を削りながら横滑りする。


「ブモエビ! 車輪装甲で回避エビ!」


 フゴードラゴンはドラゴン・クロウを展開し、近接戦へ移る。


 爪と鋏がぶつかり、火花が散る。


 内部の翔太は歯を食いしばっていた。


「硬い……ただの生体装甲じゃない。車のフレームを取り込んでる」


 外には、ボイスチェンジャーを通した低い声だけが響く。


『出力上昇』


 だが、ウシエビ男はさらに回転した。


「ブラックタイガー・クラッシュ!」


 牛の角、海老の鋏、車輪の勢いが一体となった攻撃。


 フゴードラゴンも、ダイフゴーも、リュビィもまとめて吹き飛ばされた。


     *


 カイサーン城。


 ラピスラズリは水晶の鏡を見て微笑んでいた。


「苦しんでいますわね」


 クラーケンも満足そうに触手を揺らす。


「海を汚した人間の車。その地上の罪を、お前の力で怪人に変える。見事だ、ラピスラズリ」


 烏賊王子は悔しげに唇を噛む。


 だが、認めざるを得ない。


 新型怪人には、ラピスラズリが必要だった。


 彼女の地上への恨み。


 人間だった記憶。


 それが、海の悪魔だけでは作れない怪人を生み出している。


「もっと苦しみなさい」


 ラピスラズリは鏡の中の豊と真珠を見つめる。


「あなたたちの力では、地上の罪は消せませんわ」


     *


 湾岸埋立地。


 ウシエビ男の身体が黒泡と瑠璃色の光に包まれる。


 クラーケンとラピスラズリの声が響く。


「海の悪魔よ!」


「大地の悪魔よ!」


「ウシエビ男を巨大なるブラックタイガーへ!」


 ウシエビ男が巨大化した。


 巨大な牛角。


 戦車のような海老甲殻。


 黒い虎縞。


 脚部の車輪が高速回転し、湾岸道路を砕く。


「巨大ブモエビィィ!」


 レッドが叫ぶ。


「豪商軍!」


 リュビィが続く。


「ソウルアーク!」


 フゴードラゴンは空を見上げる。


『アトミック・ドラゴン』


 天から巨大な機械龍が現れる。


 豪商軍。


 ソウルアーク。


 アトミック・ドラゴン。


 三体の巨大戦力が、巨大ウシエビ男に立ち向かう。


 だが、巨大ウシエビ男は強い。


 豪商軍の剣は甲殻に弾かれる。


 ソウルアークの光の錨は鋏で切られる。


 アトミック・ドラゴンの炎は黒い虎縞の装甲で受け流される。


 ブルーが叫ぶ。


「敵の装甲に海洋投棄車両の金属反応。さらに大地の悪魔の力で強化されている!」


 ブラックが舌打ちする。


「つまり、ただ硬いだけじゃなく、人間の捨てた罪までまとってるってか!」


 ピンクは苦しそうに言った。


「それを瑠璃様が……」


 巨大ウシエビ男が突進する。


「ブラックタイガー・ホイール!」


 豪商軍が吹き飛ばされる。


 ソウルアークも横から弾かれる。


 アトミック・ドラゴンも体勢を崩した。


 レッドが叫ぶ。


「このままじゃ勝てない!」


 その時、フゴードラゴンから通信が入る。


『三体合体を行う』


 レッドが驚く。


「またか!」


 ブルーが叫ぶ。


「前回の合体は安定率が低かった。負荷が大きすぎる!」


『改良済みだ』


「誰が改良した!」


『説明は後だ』


 ブラックが叫ぶ。


「毎回それだな!」


 フゴードラゴンの内部。


 翔太は小さな手で複数のレバーを操作していた。


 画面には、リュビィの神秘反応から組み上げた新しい同期制御が表示されている。


「科学炉心、魂魄光、海陸神秘力……同期開始」


 彼は息を吸った。


「神秘は敵のものだけじゃない。リュビィさんの中にも、ソウルアークの中にもある。なら、科学で橋をかけられる」


 外部通信では、低い声だけが響く。


『聖商龍、合体シーケンス開始』


 レッドは一瞬迷い、それから決断した。


「分かった。みんな、フゴードラゴンを信じるぞ!」


 リュビィが大きくうなずく。


「ドラゴン、信じる!」


 ピンクも言った。


「わたくしも信じます」


 ソフィアは少しだけ笑う。


「怪しいけどな」


     *


 アトミック・ドラゴンが天へ舞い上がる。


 ソウルアークが白い魂の光を放つ。


 豪商軍の胸部が開き、富轟エネルギーが金色に輝く。


 フゴードラゴンの声が響く。


『アトミック・コア、接続』


 リュビィが叫ぶ。


「ソウルアーク、母なる海と父なる大地の祝福を!」


 レッドが叫ぶ。


「豪商軍、全出力開放!」


 三つの光が一つになる。


 豪商軍の骨格に、ソウルアークの白い翼が重なる。


 アトミック・ドラゴンが龍の鎧となり、肩、胸、背中へ装着される。


 龍の頭部が胸部へ。


 龍の尾が巨大な槍剣へ。


 炉心と魂の宝玉が重なり、青白い炎と聖なる白光を放つ。


 科学。


 魂。


 海。


 大地。


 そして、富轟の力。


「三聖合体!」


「完成!」


聖商龍(セイショウリュウ)!」


 最強ロボ、聖商龍が降臨した。


 巨大ウシエビ男が後ずさる。


「ブモエビ……また合体したエビ!」


 レッドが操縦席で叫ぶ。


「これが俺たちの新しい力だ!」


 フゴードラゴンの低い声が重なる。


『聖商龍、戦闘開始』


 巨大ウシエビ男は車輪を回転させ、突進する。


「ブラックタイガー・ホイール!」


 聖商龍は両腕で角を受け止めた。


 衝撃が走る。


 だが、押し負けない。


 ソフィアが叫ぶ。


「押し返せ!」


 ピンクが続ける。


「瑠璃様の怨念ごと、止めます!」


 リュビィがリュビィ・タクトを掲げる。


「神秘の光よ!」


 聖商龍の胸の宝玉が輝く。


 アトミック・ドラゴンの科学炉心。


 ソウルアークの魂。


 豪商軍の富轟エネルギー。


 リュビィの海と大地の神秘。


 それらが一つになり、巨大ウシエビ男を押し返した。


「ブモエビィッ!」


 ブルーが叫ぶ。


「敵装甲、胸部中央にエネルギー集中点。海洋投棄車両由来の金属と悪魔反応が結合している。そこを浄化すれば倒せる!」


 フゴードラゴンが応答する。


『必殺モードへ移行』


 聖商龍の槍剣に、青白い炎が集まる。


 そこへ白い魂の光。


 金色の富轟力。


 海と大地の神秘が重なる。


 レッドが叫ぶ。


「全員、声を合わせろ!」


 フゴードラゴンの低い声が最初に響く。


『科学の炎よ』


 リュビィが続く。


「聖なる力よ!」


 ピンクとイエローが叫ぶ。


「大地と海の力が一つとなり!」


 ブルーとブラックが重ねる。


「煉獄の炎となりて!」


 レッドが最後に叫ぶ。


「罪を清めん!」


 全員の声が重なった。


「必殺!」


「プールガートーリウム!」


 聖商龍の槍剣から、青白く、白く、金色に輝く煉獄の炎が放たれた。


 それは破壊の炎ではない。


 海を汚した車の罪。


 大地の悪魔の怨念。


 海の悪魔の黒泡。


 ラピスラズリの悲しみ。


 それらを焼き、清める炎。


 巨大ウシエビ男のブラックタイガー甲殻が燃え上がる。


「ブモエビィィィ! 牛も、海老も、虎模様も、車輪も、清められるエビィィ!」


 炎の中で、廃車の金属片が光となって消えていく。


 黒い油のような悪魔の力が蒸発する。


 巨大ウシエビ男は断末魔を上げた。


「ラピスラズリ様ぁぁ! クラーケン様ぁぁ!」


 そして、光に包まれて大爆発した。


     *


 カイサーン城。


 水晶の鏡が砕けた。


 クラーケンが低く唸る。


「聖商龍……」


 烏賊王子は言葉を失っていた。


「三体合体で、我らの怪人を浄化した……」


 ラピスラズリは砕けた鏡を見つめていた。


 自分とクラーケンの力。


 海に捨てられた地上の罪。


 それらを組み合わせた怪人が、敗れた。


 しかも、清められた。


「罪を清める、ですって」


 ラピスラズリの声は震えていた。


「では、わたくしの罪も清めるおつもりですの?」


 誰も答えない。


 大地の悪魔だけが、彼女の心に囁く。


 憎め。


 救われるな。


 戻るな。


 壊せ。


 ラピスラズリは静かに笑った。


「いいでしょう。ならば、次はもっと深い罪を見せて差し上げますわ」


     *


 戦いの後。


 湾岸埋立地。


 聖商龍は合体を解除した。


 豪商軍。


 ソウルアーク。


 アトミック・ドラゴン。


 三体が元の姿へ戻る。


 フゴードラゴンは地上に降り立った。


 レッドたちは変身したまま、彼に向き合う。


「フゴードラゴン」


 レッドが声をかける。


「また助けられた。だが、そろそろ教えてくれ。お前は何者だ」


 フゴードラゴンは何も答えない。


 ブルーが続ける。


「三体合体の制御、神秘反応の同期、すべてこちらの技術を超えている。君は何者だ」


 ブラックが肩をすくめる。


「謎が多すぎるぜ、七人目」


 ピンクは丁寧に言った。


「せめて、お名前だけでも」


 リュビィは一歩近づいた。


「ドラゴン、また来てくれる?」


 フゴードラゴンは、リュビィを見た。


 その沈黙は、ほんの少しだけ優しかった。


『必要な時に』


 それだけ言うと、フゴードラゴンは背中の推進翼を展開した。


 レッドが叫ぶ。


「待て!」


 だが、フゴードラゴンは何も言わずに飛び上がった。


 青白い炎を残し、空へ消えていく。


 アトミック・ドラゴンも雲の向こうへ消えた。


 ソフィアは空を見上げ、目を細める。


「やっぱり怪しい」


 リュビィは首をかしげた。


「でも、いい子」


 豊は静かに言った。


「正体は誰なんだ……?」


     *


 夜。


 小野寺翔太の秘密基地。


 翔太はフゴードラゴンの操縦席から降り、床に座り込んだ。


 全身が汗で濡れている。


 聖商龍の合体制御は成功した。


 だが、操縦者への負荷は想定以上だった。


 画面には戦闘データが並ぶ。


『聖商龍 合体成功』

『Purgatorium System 実戦発動成功』

『神秘科学融合率 64%』

『操縦者負荷:危険域手前』

『改良必要』


 翔太は荒い息を整えながら、ノートに書き込む。


『科学と神秘の融合は可能』

『リュビィ由来の神秘反応が同期に有効』

『悪魔の力を浄化可能』

『聖商龍、今後の主力合体候補』


 そして、最後に小さく書いた。


『正体秘匿、継続』


 翔太はモニターに映るダイフゴーを見つめた。


「まだ名乗れない」


 少年は呟く。


「でも、いつか……ちゃんと仲間になれるかな」


 画面の中で、リュビィがフゴードラゴンに手を振っている。


 翔太は少しだけ笑った。


 七人目の戦士フゴードラゴン。

 聖商龍を誕生させた天才少年。

 その正体は、まだ誰にも分からない。



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