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新フゴーイエロー

 ダイフゴー基地は、重い沈黙に包まれていた。


 フゴーイエロー、海宝瑠璃はもういない。


 いや、姿はある。


 だが、彼女は人間をやめ、怪人ラピスラズリとなってカイサーンの新幹部になってしまった。


 五人そろわないダイフゴー。


 合体できない豪商軍(ゴウショーグン)


 金城豊は、モニターに映る青い宝石怪人の記録映像を見つめていた。


「瑠璃……」


 花園真珠(はなぞのましろ)は何も言えなかった。


 自分のせいだ。


 そう思うたび、胸が締めつけられる。


 その隣で、リュビィがリュビィ・タクトを抱えて立っていた。


「レッド。ピンク」


 豊が振り向く。


「どうした、リュビィ」


「ソウルアークが呼んでる」


 真珠が顔を上げた。


「ソウルアークが?」


「うん。海の底から、光が呼んでる。レッドとピンクに会いたい人たちがいる」


 財前守が端末を見る。


「ソウルアークの魂反応が高まっている。だが、機械的な通信ではないな」


 京極怜音は腕を組んだ。


「会いたい人たちって、まさか……」


 リュビィは静かにうなずいた。


「レッドとピンクのお父さんとお母さん」


 真珠の目が揺れた。


「お父様……お母様……?」


 豊は拳を握った。


「行こう」


     *


 海辺。


 夕暮れの海に、魂の箱船ソウルアークが浮かんでいた。


 かつて十年前に沈んだ豪華客船。


 今は魂の光を宿す巨大な箱船。


 リュビィが皇女の十字架を掲げると、青と金の光が豊と真珠を包んだ。


 次の瞬間、二人はソウルアークの中にいた。


 そこは、豪華客船の大広間に似ていた。


 だが、壁も床も淡い光でできている。


 シャンデリアのように魂の光が揺れ、静かな波の音が響いていた。


 豊の前に、二つの光が現れる。


 父。


 母。


 金城夫妻だった。


「豊」


 懐かしい声がした。


 豊は息をのんだ。


「父さん……母さん……」


 真珠の前にも、二つの光が現れた。


 花園夫妻。


 真珠の両親だった。


「真珠」


「お父様……お母様……!」


 真珠は涙をこぼした。


 ずっと会いたかった。


 もう二度と会えないと思っていた。


 それが今、魂の姿とはいえ、目の前にいる。


 豊は膝をつき、拳を震わせた。

挿絵(By みてみん)

「俺は……守れなかった。瑠璃も、真珠も、何もかも……」


 金城の父の魂は静かに言った。


「豊。お前はまだ生きている。生きている者には、やり直す時間がある」


 母の魂も微笑む。


「失ったものを数えるより、まだ守れるものを見なさい」


 真珠は両親の光を見つめた。


「お父様、お母様……わたくしは……」


 花園の母の魂が言った。


「真珠。あなたはもう、ただ仕えるだけの子ではありません。自分の心も大切にしなさい」


 父の魂も続けた。


「お前は強くなった。だが、自分を罰してばかりではいけない」


 真珠は泣きながらうなずいた。


 その時だった。


 ソウルアークの大広間に、淡い金色の波紋が広がった。


 光の波が、真珠の周囲をゆっくり巡る。


 それは乗客たちの魂だった。


 十年前、沈んだ豪華客船に残された無数の祈り。


 悲しみ。


 願い。


 そして、誰かを探すような、かすかなざわめき。


 リュビィが目を閉じた。


「……変」


 豊が振り向く。


「リュビィ?」


「魂たちが、何かを探してる」


 真珠は涙に濡れた目で、両親の光を見上げた。


「お父様……お母様……朱珠姉さんは……?」


 その名が出た瞬間、ソウルアークの光が大きく揺れた。


 大広間を満たす魂の光が、真珠の前に集まる。


 だが、そこにあるはずの一つの光だけが、どこにもなかった。


 リュビィが静かに言った。


「いない」


「え……?」


「真珠のお姉さんの魂が、ここにいない」


 真珠は息をのんだ。


「朱珠姉さんの魂が……ない……?」


 リュビィはうなずいた。


「この船で死んだ人の魂は、ソウルアークの中にいる。でも、朱珠の魂はここにいない。魂たちも、ずっと探してる」


 花園夫妻の魂が、淡く震えた。


 母の魂が言う。


「私たちにも、あの子の魂は見えません」


 父の魂が続ける。


「朱珠は、どこかで生きているのかもしれない」


 真珠は両手を胸に当てた。


「朱珠姉さんが……生きている……?」


 豊は立ち上がった。


「生きているなら、探す」


 守の通信が入る。


『豊、状況は?』


「守。金城財閥の全情報網を使え。花園朱珠を探す。十年前の海難事故後、海外で保護された身元不明の少女、漂流者、養子縁組、難民記録、全部だ」


『了解。海外の記録まで範囲を広げる』


 真珠は震える声で言った。


「朱珠姉さん……本当に生きているなら……」


 リュビィはそっと真珠の手を握った。


「探そう。家族」


     *


 十年前。


 嵐の夜。


 豪華客船は、黒い海の上で炎を上げていた。


 クラーケンの攻撃で船体は裂け、甲板は傾き、人々の悲鳴が波に消えていく。


 その甲板に、一人の少女がいた。


 花園朱珠。


 真珠の姉。


 本来の彼女は、上品で大人しく、妹思いの少女だった。


 白いドレスの裾を濡らしながら、彼女は妹の名を叫んでいた。


「真珠! 真珠!」


 だが、次の衝撃で甲板が大きく傾いた。


 朱珠の身体が投げ出される。


 手すりを掴もうとしたが、届かない。


 彼女は暗い海へ落ちた。


 冷たい水。


 波。


 沈んでいく船の光。


 朱珠は必死にもがいた。


 だが、やがて力尽きた。


 意識が遠のく。


 彼女が最後に見たのは、赤い炎と黒い海だった。


     *


 夜明け。


 ソビエトの漁船が、荒れた海を進んでいた。


 乗組員の一人が海面に浮かぶ少女を見つけた。


「人だ!」


 網とロープが投げられる。


 朱珠は漁船に引き上げられた。


 息はある。


 だが意識はない。


 船の上で、年配のロシア人漁師が彼女を抱き起こした。


 彼の名はアレクセイ。


 かつて娘を病で亡くした男だった。


 意識を取り戻した朱珠は、自分の名前を聞かれた。


 だが、答えられなかった。


 自分が誰なのか。


 どこから来たのか。


 家族は誰なのか。


 何も思い出せなかった。


 アレクセイは彼女の震える手を握った。


「思い出せないなら、今は名前が必要だ」


 彼は少しだけ悲しそうに笑った。


「ソフィア。私の娘の名前だ」


 朱珠はその名を受け取った。


 ソフィア。


 それが、彼女の新しい名前になった。


     *


 ソビエト極東の漁村。


 冬は厳しく、海は冷たい。


 暮らしは貧しかった。


 だが、アレクセイはソフィアを大切に育てた。


 最初、彼女は何もできなかった。


 魚のさばき方も、網の直し方も、凍った道の歩き方も知らなかった。


 だが、十年は人を変える。


 上品で大人しかった花園朱珠は、やがて荒っぽい漁師の娘になった。


 黒い革ズボン。


 黄色いパーカー。


 寒風の中でも大声で笑い、酔った漁師を肘でどかし、魚箱を担いで歩く。


 口調は乱暴。


 態度は姉御肌。


 だが、困っている人を見ると放っておけない。


 アレクセイはそんな彼女を見て、よく笑った。


「ソフィア、お前は強い娘だ」


 ソフィアは肩をすくめた。


「父さんがこき使うからだよ」


 ソビエトで作られた書類には、彼女の名はソフィア・アレクセーエヴナと記された。


 アレクセイの娘。


 そういう意味を持つ名だった。


 それは本当の血のつながりではない。


 だが、十年の暮らしの中で、彼女は確かにアレクセイの娘になっていた。


 貧しいが、温かい日々だった。


 やがて、ソビエトは崩壊した。


 国はロシアとなり、村の暮らしもさらに不安定になった。


 そして、アレクセイも年老いて亡くなった。


 その頃から、ソフィアは夢を見るようになった。


 炎上する船。


 泣いている小さな妹。


 真珠のような名前。


 日本。


 金城。


 花園。


 断片的な記憶が、少しずつ戻ってくる。


 ソフィアは、古い箱の中から自分が救助された時に身につけていた小さな髪飾りを見つけた。


 そこには、かすかに日本語の文字が刻まれていた。


『花園』


 彼女は旅立つことを決めた。


 本当の家族を探すために。


 もしかしたら、誰もいないかもしれない。


 それでも、日本へ行くしかなかった。


     *


 現代。


 新潟の港。


 ロシアからの船が到着した。


 乗客の中に、黒い革ズボンと黄色いパーカーを着た女性がいた。


 年齢は二十代半ば。


 鋭い目つき。


 漁村育ちらしいたくましい立ち姿。


 片手には古い鞄。


 パスポートには、ロシア名が記されていた。


 ソフィア・アレクセーエヴナ。


 彼女は港に立ち、日本の空気を吸い込んだ。


「ここが……日本か」


 言葉は少しぎこちない。


 だが、記憶の底で何かが震えた。


 懐かしい。


 知らないはずなのに、懐かしい。


 その時、港の向こうで悲鳴が上がった。


 カイサーン戦闘員たちが現れていた。


「ギョギョー!」


 人々が逃げ惑う。


 先頭に立つ怪人は、海の悪魔と大地の悪魔の力をまとった新型怪人だった。


 岩の殻と海藻の鞭を持つ怪人、イワガキ男。


「ガキガキ! 港を封鎖し、日本へ来る船をすべて沈めてやる!」


 ソフィアは眉をひそめた。


「なんだ、あの化け物は」


 戦闘員が逃げ遅れた子どもに襲いかかる。


 ソフィアは考えるより先に走っていた。


「おい、こっちだ!」


 彼女は魚箱を蹴り上げ、戦闘員の顔面にぶつけた。


「ギョッ!」


 別の戦闘員が迫る。


 ソフィアは港にあったロープを引っつかみ、相手の足に絡めて転ばせる。


「海で鍛えた足腰を舐めるな!」


 そこへ、ダイフゴーが到着した。


 豊、真珠、守、怜音、リュビィ。


 真珠は戦うソフィアの姿を見て、動けなくなった。


 顔立ちは変わっている。


 髪も、服も、雰囲気も、記憶の中の姉とは違う。


 上品で大人しかった朱珠姉さんではない。


 だが、目元。


 仕草。


 そして、髪飾り。


 真珠の口から震える声が漏れた。


「朱珠……姉さん……?」


 ソフィアが振り向いた。


 その呼び名に、胸の奥が強く痛んだ。


「しゅ……じゅ……?」


 真珠は駆け寄った。


「朱珠姉さん!」


 ソフィアは戸惑いながら後ずさる。


「待て。私はソフィアだ。パスポートもそうなってる。ソフィア・アレクセーエヴナ。少しは思い出してるけど、まだ全部じゃない」


 真珠は涙をこらえ、足を止めた。


 抱きつきたい。


 姉の名を呼びたい。


 でも、目の前の姉は、自分をソフィアと名乗っている。


 その十年を否定してはいけない。


 真珠は震えながら、深く息を吸った。


「……ソフィア」


 ソフィアの目が少し柔らかくなった。


「お前が、真珠か?」


「はい。花園真珠(はなぞのましろ)です」


「大きくなったな」


 真珠は泣き笑いの顔になった。


「ソフィアも、ずいぶん変わりました」


 ソフィアは照れくさそうに鼻を鳴らした。


「泣くな。まだ再会の途中だ。化け物を片付けてからだろ」


 真珠は涙をぬぐった。


「はい」


     *


 イワガキ男が怒鳴る。


「感動の再会などさせるか、ガキ!」


 戦闘員たちが襲いかかる。


 豊がブレスを掲げた。


「変身だ!」


「富轟チェンジ!」


「ダイフゴー!」


 赤、青、黒、桃の光が弾ける。


「巨万の勇気! フゴーレッド!」


「相場を制する知略! フゴーブルー!」


「漆黒の旋律! フゴーブラック!」


「奉仕の真心! フゴーピンク!」


 四人が並ぶ。


 しかし、やはり黄色はいない。


 イワガキ男が笑う。


「ガキガキ! 黄色なしの欠けた戦隊か!」


 その時、海の向こうから金色の光が走った。


 ソウルアークが静かに輝き、その光がソフィアへ降り注ぐ。


 金城夫妻。


 花園夫妻。


 そして船に眠る魂たち。


 その祈りが、一つの形を作っていく。


 光の中に、一つのブレスが現れた。


 かつて瑠璃が使っていたものとは形が少し違う。


 金色の縁取り。


 新たな紋章。


 そして、荒波を思わせる鋭いライン。


 ソフィアはそれを受け取った。


「これは何だ」


 真珠が言った。


「フゴーブレス……」


 リュビィが微笑む。


「魂が選んだ。ソフィアが新しいイエロー」


 ソフィアは眉を上げた。


「私が? いきなりか?」


 怜音が笑う。


「この番組、そういうことよくあるんだよ」


 守が冷静に言う。


「戦力的には非常に助かる」


 真珠はソフィアを見つめた。


「ソフィア。一緒に戦ってください」


 ソフィアは少しだけ黙った。


 そして、にやりと笑った。


「妹を守るためなら、やってやる」


 真珠は涙を浮かべながらうなずく。


「はい!」


 ソフィアはフゴーブレスを掲げた。


「やり方は?」


 豊が叫ぶ。


「富轟チェンジだ!」


「分かった」


 ソフィアは力強く叫んだ。


「富轟チェンジ!」


 金色の光が彼女を包む。


 黒い革ズボンと黄色いパーカーが光へ変わり、黄色の戦闘スーツが形作られる。


 これまでのイエローよりも少し鋭く、肩には荒波のような金色のライン。


 胸には新しい富の紋章。


 手には黄金の弓。


 新たなフゴーイエローが立っていた。


「荒波育ちの黄金魂! 新フゴーイエロー!」


 ブラックが感心したように言う。


「おお、荒っぽいイエローだな」


 ソフィアは弓を構えた。


「細かい名乗りは後だ。来るぞ!」


 ピンクが隣に立つ。


「ソフィア」


「真珠、下がるなよ」


「はい、ソフィア」


 二人は並んだ。


 ピンクと新イエロー。


 生き別れの姉妹が、十年の時を越えて変身した。


     *


 戦いは一気に変わった。


 イワガキ男の岩殻は硬く、海藻の鞭は速い。


 だが、新イエローの戦い方は荒々しかった。


 黄金の弓を近接武器のように振るい、殴り、蹴り、港のロープまで使って敵を引き倒す。


「こっちは漁船で嵐を相手にしてきたんだ。貝殻野郎に負けるか!」


 ピンクがその動きを支える。


 以前の瑠璃との連携とは違う。


 優雅ではない。


 だが、姉妹の呼吸があった。


 ピンクが敵の攻撃を受け流す。


 新イエローが隙を撃ち抜く。


「ソフィア、右です!」


「分かってる!」


 新イエローの矢が、イワガキ男の殻の隙間に突き刺さる。


「ガキィッ!」


 レッドが叫ぶ。


「五人そろった。いけるぞ!」


 五人の武器が集まる。


 二丁拳銃。


 大砲銃。


 ギターアックス。


 新イエローの弓。


 ピンクサーベル。


 黄金の必殺砲、富轟バスターが完成する。


「富轟バスター!」


 新イエローが叫ぶ。


「撃て、豊!」


 レッドが一瞬驚く。


「呼び捨てかよ!」


「あとで直す!」


 レッドは苦笑しながら引き金を引いた。


「ダイフゴー・ゴールドバースト!」


 黄金の光弾がイワガキ男を直撃した。


「ガキィィィ!」


 イワガキ男は爆発した。


     *


 だが、黒い泡と土の闇が混ざり合う。


 クラーケンの声が響く。


「海の悪魔よ、大地の悪魔よ、岩牡蠣の魂をさらに強き殻へ変えよ」


 爆煙の中から、巨大イワガキ男が現れた。


 以前の巨大化怪人とは違う。


 海の悪魔の黒い泡と、大地の悪魔の岩の力をまとい、殻が二重に強化されていた。


「ガキガキ! 今度は砕けん!」


 レッドが叫ぶ。


「豪商軍だ!」


 新イエローが操縦席へ転送される。


 その瞬間、キンカーが再び起動した。


「キンカー、出るぞ!」


 ソフィアの声が響く。


 五体の富豪メカが出撃する。


「ドゾウー、発進!」


「コバンダー、行くぜ!」


「キンカー、任せな!」


「ギンカー、軌道安定!」


「ドウカー、出ます!」


 五体が空で合体する。


豪商合体(ごうしょうがったい)!」


 赤い土蔵メカ、ドゾウーが胴体へ。


 黒い小判メカ、コバンダーが右腕へ。


 黄色い金貨メカ、キンカーが左腕へ。


 青い銀貨メカ、ギンカーが右足へ。


 桃色の銅貨メカ、ドウカーが左足へ。


「完成!」


豪商軍(ゴウショーグン)!」


 久しぶりに完全な豪商軍が立ち上がった。


 だが、巨大イワガキ男の殻は硬かった。


 ハードカレンシーソードが弾かれる。


 火花が散り、豪商軍が後退する。


 ブルーが叫ぶ。


「敵の装甲、強化されている。従来の必殺出力では突破困難!」


 リュビィもソウルアークで出撃していた。


「ソウルアークも行く!」


 魂の箱船ロボ、ソウルアークが海から立ち上がる。


 豪商軍とソウルアークが並び立つ。


 だが、巨大イワガキ男は両方の攻撃を受けても倒れない。


「ガキガキ! 海と大地の二重殻は無敵だ!」


 その時、ソウルアークの中で、魂の光が強く輝いた。


 金城夫妻。


 花園夫妻。


 蟹大王。


 そして、船に眠る多くの魂。


 さらに、ソフィアを育てたアレクセイの記憶の光までもが、淡く重なる。


 リュビィが目を見開いた。


「みんなが願ってる」


 真珠が操縦席で涙を浮かべる。


「お父様、お母様……」


 ソフィアも胸を押さえた。


「父さん……アレクセイ父さん……?」


 魂の声が重なる。


「子どもたちを守りたい」


「海と大地をつなぎたい」


「失った命を、未来の力に」


 豪商軍とソウルアークが光に包まれた。


 レッドが叫ぶ。


「何が起きている!」


 リュビィは答えた。


「みんなの願いが、二つのロボをつないでる!」


 豪商軍の胸部が開く。


 ソウルアークの船体が光の翼のように展開する。


 富の力と魂の力。


 地上の財と、海底に眠る命。


 二つが一つになる。


「聖なる商いは、命を守るために!」


 リュビィの声が響く。


「聖魂合体!」


 豪商軍とソウルアークが合体する。


 豪商軍の背にソウルアークの船体が翼となり、胸には魂の宝玉が輝く。


 両肩には豪華客船の煙突を思わせる砲塔。


 脚部には金銀銅貨の装甲。


 額には「富」と「魂」が重なる紋章。


 新たな巨大ロボが完成した。


「完成!」


聖商軍(セイショーグン)!」


 聖商軍は光の翼を広げ、巨大イワガキ男の前に立った。


 ブラックが叫ぶ。


「豪商軍とソウルアークが合体した!」


 ブルーが震える声で言う。


「出力、計測限界を超過」


 新イエロー、ソフィアは操縦桿を握りしめた。


「これなら殻ごと叩き割れる!」


 ピンクが隣でうなずく。


「はい、ソフィア!」


 聖商軍は巨大イワガキ男へ向かって歩き出す。


 敵は二重殻で身を固めた。


「ガキガキ! 砕けるものなら砕いてみろ!」


 聖商軍の右手に、ハードカレンシーソードが現れる。


 左手には、ソウルアークの光の錨。


 胸には魂の光。


 リュビィが叫ぶ。


「命の光を、未来へ!」


 レッドが続く。


「金で買えない命を守る!」


 ピンクと新イエローが同時に叫ぶ。


「姉妹の絆を!」


「海を越えてつないだ家族を!」


 全員の声が重なる。


「必殺!」


 聖商軍の剣に、金、銀、青、緑、白の光が集まる。


「セイント・ハードカレンシー!」


 一閃。


 聖商軍の剣が、巨大イワガキ男の二重殻を切り裂いた。


「ガキィィィ! 海と大地の闇の殻がぁぁ!」


 巨大イワガキ男は光に包まれ、大爆発した。


 爆炎の中、聖商軍は光の翼を広げて立っていた。


     *


 戦いが終わった港。


 夕日が海を赤く染めていた。


 変身を解いたソフィアは、少し照れくさそうに真珠の前に立っていた。


 真珠は涙をこぼしている。


「ソフィア……」


「泣くなって言っただろ」


「はい。でも……」


 真珠は一歩近づいた。


「生きていてくれて、ありがとうございます」


 ソフィアは困ったように頭をかいた。


「礼を言われることじゃない。私も、帰ってきたかったんだと思う。まだ全部は思い出せないけどな」


「それでも構いません」


 真珠は姉を見つめた。


「あなたが、ソフィアとして生きてきた十年も大切です。だから、わたくしもソフィアと呼びます」


 ソフィアは少し目を細めた。


「……ありがとう、真珠」


 真珠はついにこらえきれず、ソフィアに抱きついた。


 ソフィアは一瞬固まったが、すぐに妹の背を強く抱いた。


「大きくなったな」


「ソフィアこそ、ずいぶんたくましくなりました」


「漁村じゃ大人しくしてたら魚箱も運べないんだよ」


 真珠は泣きながら笑った。


 豊はその様子を静かに見ていた。


 ソフィアは豊へ視線を向ける。


「お前が金城豊か」


「ああ」


「真珠を泣かせたら、海に放り込む」


 豊は一瞬言葉に詰まった。


 怜音が吹き出す。


「新イエロー、強いな」


 守が冷静に言う。


「真珠の姉として非常に妥当な警告だ」


 リュビィは嬉しそうに跳ねた。


「ソフィア、イエロー! ダイフゴー、また五人!」


 ソフィアはリュビィを見る。


「お前は……蟹なのか人間なのか、どっちだ?」


 リュビィは胸を張った。


「日本一の美少女!」


 ソフィアは真珠に尋ねる。


「説明が必要そうだな」


 真珠は苦笑した。


「とても長い話になります」


 港に笑い声が広がった。


 フゴーイエローを失ったダイフゴーに、新たな黄金の戦士が加わった。


 花園朱珠。


 しかし今は、ソフィア・アレクセーエヴナ。


 ロシアの海で育った、荒っぽくも温かな姉。


 彼女は妹を守るため、新フゴーイエローとして戦う。


 そして、豪商軍とソウルアークが一つとなった聖商軍。


 ダイフゴーは再び立ち上がった。


 瑠璃を取り戻すため。


 クラーケンを止めるため。


 海と大地の平和を守るために。


---


## 次回予告


 新フゴーイエロー、ソフィアが金城邸にやって来た!


 だが、ロシアの漁村で育った姉は、礼儀作法も金城家のしきたりもまるで無視。


 真珠は姉を立派な令嬢に戻そうと奮闘するが、ソフィアは魚箱を担ぎ、台所を占拠し、金城邸は大騒ぎ!


 一方、カイサーンでは怪人ラピスラズリが、新イエローの存在に静かな怒りを燃やしていた。


 次回、富轟戦隊ダイフゴー。


##姉さんは漁師の娘


 上品だった姉は、荒波に鍛えられて帰ってきた!


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