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あなたは何のために生きていますか?〜飛ばし読みしてしまうあなたに贈る会話だけの物語〜  作者: 今際の刹那


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8.罪と罰




「そういえばまだ聞いてなかったですけど、貴女の目的は何ですか?」


「・・・・・・その前に、自分が自分であると思えるのは記憶がそう示しているからだと思うけど・・・・・・仮に、ある人間Aの記憶をBの人間の脳に植えつけた場合、その人間は自分をAとBどちらだと認識すると思う?」


「・・・・・・Aですか?」


「そう。記憶を植えつけられたBは自分をAだと認識する。と、私達も考えた」


「・・・・・・」


「そして、別の人間の記憶を脳に植えつけられる技術の開発に我々は成功した」


「・・・・・・まさか」


「・・・・・・ただ、こんな実験は人道的に許されるものではない。そこで我々は国にある提案をした。死刑囚などの極悪人に対して、社畜の記憶を脳に植えつけることで、クズをリサイクルしませんか、と」


「・・・・・・」


「そして貴方は我々の実験体第2号です」


「・・・・・・第1号はどうなったんですか?」


「死にました」


「え?」


「実験は成功し、社畜という名の地獄を存分に味わってから死にましたよ」


「・・・・・・」


「・・・・・・まあ、嘘だけどね」


「・・・・・・ん? あの、どこからが嘘ですか?」


「最初から」


「・・・・・・」


「びびった?」


「いや、趣味悪いですよ。・・・・・・なんか、確かに私の社畜人生は極悪人に相応しい日々だったもんなって少し納得しかけてましたし」


「・・・・・・そんな極悪人に相応しき社畜人生を歩まなくてはいけない殆どの人間は、何の罪を犯したんだろうね」


「・・・・・・この世界が、天国と地獄を両立した施設のようなものであると仮定すれば、社畜人間は前世で何かの罪を犯したんでしょうね。記憶も身体も遺伝も別物の全くの別人である前世の同一人物とやらが」


「面白い仮定だね」


「まあ、本音を言えば、天国や地獄なんてものは存在しないと思ってますけどね。・・・・・・ただ、良いことをすれば天国に行ける、悪いことをすれば地獄に行く、そんな風に思わないと真面目に生きているのが馬鹿馬鹿しくなりますから、そうやってみんな何かに酔っ払って自分を騙して生きているのではないでしょうか」


「そうかもね」


「・・・・・・結局、本当の目的は教えてくれないんですか?」


「まだ教えない」


「そうですか。・・・・・・さっきの作り話、即興で考えたんですか?」


「そうだよ。即興にしては良くできてたでしょ」


「作家とか向いてるかもしれませんね」


「今度何か書いてみようかな。・・・・・・飛び散った8つの玉を探す作品とか」


「いや、それはアウトですよ」


「あ、そっか。南総里◯八犬伝のパクリになるか」


「ん? なんそう? 何ですかそれ」


「かなり前の作品」


「そういう作品があったんですね」


「・・・・・・少年探偵と怪盗が知恵で勝負する作品はどう?」


「いや、それもアウトですよ」


「あ、そっか。江戸◯乱歩のパクリか」


「・・・・・・なんか、さっきから発言に恣意的なものを感じますね」


「しいてき?」


「含みのある発言に感じます。そもそも江戸◯乱歩は著作権切れてるんじゃないですか? 詳しくは知らないですけど」


「著作権切れててもパクるのはアウトじゃない?」


「・・・・・・どうなんでしょう。著作権って親告罪ですから被害者が訴えないと罪にはならないと思いますが、著作権が切れてる場合はその被害者が存在しない事になりそうですし。・・・・・・それと、残念ながら、丸々写したくらいにそっくりでないと著作権の侵害にはあたらない、みたいな話を聞いたことがありますので、どれだけ似てても合法になるのではないですか」


「・・・・・・別に、実際に著作権の侵害になるかどうかじゃなくてさ、人としての価値観としてセーフかアウトかって所を話したかったんだけどね」


「あ〜、それは申し訳ないです。男がやりがちな直ぐに結論を話したがる所が出てしまいました」


「別に大丈夫だよ」


「今後気をつけますね。・・・・・・それで、さっき言ってた含みのありそうな作品に関してですが、別にパクリじゃなくて元ネタにしてるだけだと私は思いますよ」


「・・・・・・けど、さっきはアウトって言ってたよね」


「言い、ましたね・・・・・・」


「私も別にパクリじゃなくて元ネタにしてるだけだとは思うけどさ、パクリって言いたくなる気持ちも分かるんだよね。時々、これアウトじゃない? みたいな作品が平気で売られたりしてるのを見るとモヤっとした気分になるし」


「まあ、分かりますよ。けど逆に、私の価値観では、これは別にパクリではないだろうと感じる作品がパクリと言われていることもありますので、明確な線引きが難しいように感じます。価値観の違いはもうどうしようもないですし」


「完全なオリジナルなんて存在しないことは分かってるけどさ、既視感のある作品が多すぎるよね」


「既視感のある作品は確かに多いですね。・・・・・・パロディやオマージュについてはどう思いますか?」


「物語の根幹に至る部分とかじゃなければ別に構わないと思うよ」


「なるほど・・・・・・学生の頃の友達はパロディやオマージュ、モチーフの事を、ネットにあるレポートとかを少し変えただけの大学生のレポート、って表現してました。問題はないけど簡易的だよね、みたいな感じで」


「それは面白い表現だね。まあ、0から1を作るよりも明らかに楽そうには見えるよね」


「あとは作者へのリスペクトにも関係しそうですよね。ある作品の作者を尊敬していたんですけど、その作品の前に似たような作品がある事を知って尊敬出来なくなったということは実際にありましたし。まあ、完全なオリジナルだと思っていたからこそのリスペクトでしたので」


「似たようなので言うと、好きな歌手が不倫とかしてたら一気に曲の歌詞が薄っぺらく感じちゃうとかあるかも」


「分かりますよ。この歌詞、めちゃくちゃ良いこと言ってるけど、こいつ不倫してんだよな、みたいに思うと冷めますよね」


「まあ、名言や良い言葉なんてのは、誰にでも思いつくし言うことも出来るからね」


「そう、ですかね? いや、そうかもしれないですね」



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